味の見聞録
すっぽん
美容に、疲労回復に効果絶大!日本の冬の味覚を代表する鍋料理

部位によって異なる
味わい深さ、繊細な味の違いに感嘆

三坪の厨房から奇跡を生み出す、長谷川新氏によるカウンターのみの割烹。すっぽんコースは年中一万五千円。青森の天然ひらめのお造り(季節によって変わる)、丸鍋、雑炊、デザートといたってシンプルながら、その魅力を存分に味わいつくすことができる。鍋は二人前からで、理由は、一・二キロ相当のすっぽんを二人で平等に食べ分けるため。その魅力の一つは、スープ。長年かかって完成したスープは、雑味が一切なく、透明なうまみがひた寄せてきて、陶然となる。もう一つの魅力は肉の多様性が味わえること。女将さんが対になっている部分を平等に、「ここは前足の部分です」。「ここは肩のところです」。と伝えながら、一部位食べ終わるごとに、よそう。順番も考え抜かれたもので、歯を押し返すような弾力で、野趣に富んだ味わいの黄色い脂のついた後ろ足や、にかわ質の食感に喜ぶエンペラ部分、味が濃密に詰まった首、穏やかな味わいの前足、お腹の骨、尻肉など、すっぽんの味わい深さ、繊細な味の違いに感嘆するは必至。中でも推するのは、噛み応えがあり、脂がのった濃厚な滋味が舌に流れる肩甲骨部分。
最後は鍋の前を一時も離れず、丹精込めて作られる雑炊。できた雑炊の上側をそっとよそった一膳目は、スープの滋味が口いっぱいに広がり、後からするするとご飯の甘みが追う。ぼってりと盛られる二膳目は、すっぽんの滋味と米の甘みがなじんだ優しい味わい。三膳目、四膳目と、さらにその甘みと滋味は融合して深みを増し、最後は味が凝縮した目もくらむおコゲで締めくくる。
また、懐石コース時のすっぽんの肝と嶺岡豆腐、すっぽんの茶わん蒸しも完成度の高い傑作である。

四つ葉
杉並区上荻2-20-7
tel.=03-3398-7093
営業時間=18:30〜22:00
定休日=日曜祭日


島原産の三〜四年ものを使用
若いゆえの淡い滋味が身上

ビルの地階、すっぽんの絵を染め抜いたのれんを出す割烹。カウンター席、テーブル席、個室座敷あり。 
初めて訪れるなら、頭以外を食べつくす、すっぽん一匹コース(二〜三人前)がおすすめ。初めにリンゴジュースで割って飲みやすくした生き血、滋養強壮に効く胆嚢(一つのみ)、焼酎に漬けてから苺ワインに漬けた小さき卵(春〜秋)で気分を盛り上げていると、この店ならではの刺身の大皿が登場する。
赤い肩肉と薄黄色の脂身が盛られ、内臓類が添えられる。低温でさっとゆがき氷で締めることによって、肉は引き締まった歯応えを得、内臓を包んでいた筋膜は、脂の嫌味が消えてほの甘い上品な脂となる。上品な味わいの肝や心臓、コリコリとした食感の腸の刺身なども楽しい。肝は筋膜で巻いてポン酢につけると美味。また刺身は品がありながらも、おろしにんにく醤油も合う。刺身の後は、ゼラチン質のうまみに笑い出したくなる、肉汁に富むモモ肉の唐揚げ、鍋と続く。
鍋は、飲むたびにうまみが増していく上品なスープが心を安らげ、エンペラ、首や足の部分の肉質食感を堪能した後、野菜を入れて、すっぽん野菜スープとして食べる。すっぽんは、島原産の三〜四年もの。若いゆえの淡い滋味が身上で、その持ち味を生かした鍋はうまい。
最後は、気さくで温かみのある年配の仲居さんが丁寧に作ってくれる雑炊で締める。

唐井筒
中央区銀座7-6-19 ソワレド銀座弥生ビルB1
tel.=03-3571-0755
営業時間=11:30〜13:30、17:30〜22:00
定休日=日曜祭日


すっぽん専門三十九年
浜松舞阪の五〜六年ものを独自の技でさばく

赤坂の閑静な裏路地に佇む、堂々たる日本家屋。風格が漂う門を潜り、女将に出迎えられ、赤い絨毯の上を通り、時が染みた座敷へと案内される。
すっぽん専門で三十九年。座敷に落ち着き、突き出しを肴に酒を飲み、鉄分あふれる生き血をすすっていると、猛然たる湯気を上げ、ぐつぐつと音を立てた、煮えたぎる黒い鍋が運ばれる。鍋は二千度という高温に耐え抜く特製の信楽焼き。鍋の中は、浜松舞阪の五〜六年もののすっぽんを独自の技でさばき、水と酒、三種混ぜ合わせた醤油で炊き、一昼夜寝かして再び沸かしたもの。スープが沸き立ち、すっぽんの肉塊が揺れている。各部位をバランスよく小鉢に取り分けていただいたものを食べれば、音が立つかのような逞しい歯応え、一切れ食べただけで唇に粘りつくゼラチン質とその甘み、ねっとりとうまい肝、かみ締めるほどに滲み出る深い滋味。鼈甲色のスープも、すっぽんの野趣や豊富な脂分と競うよう、生姜、酒、醤油など強く、こってりと濃厚な味わいで圧倒する。野菜類も入れず、ただただすっぽんの濃密と豊潤を味わいつくす鍋。締めも卵を入れず、濃厚スープを堪能する餅入り雑炊。政財界のお歴々が利用する高級店だが、親子三代にわたる女将の温かみのある接客が、なんとも和ませる。すっぽんコースのみ二万円。席料千円。酒類千円〜。

さくま
港区赤坂4-5-20 
tel.=03-3584-6891
営業時間=18:00〜22:00
定休日=土・日・祭日


陶然となる香りを立ちのぼらせる
ほら貝と天然すっぽんのスープ

メニューにはないが、人数を集め、事前に頼めば、天然すっぽんのスープを用意してくれる。
その最高級がほら貝と天然すっぽんのスープ。ほら貝のワタとすっぽんで丹念に取ったスープは、目前に運ばれてきただけで、陶然となる香りを立ちのぼらせる。どこまでも透明な黄金色のスープは、臭みや雑味が一切なく、塩もまったく舌に当たらず、抽出された純粋なすっぽんとワタの滋味が口腔を満たし、だれもが言葉を失う。うまみの黄金律というものがあるなら、まさしくこのスープで、飲んだ後もうまみが、喉や胃袋にとどまっている感覚で、うっとりとなるは必至。単体の注文はなし。コース一万五千円〜。

福臨門
中央区銀座6-13-16 銀座ウォールビル1・2F 
tel.=03-3543-1989
営業時間=11:30〜15:00(日・祭〜16:00)、17:00〜22:00(日・祭17:30〜21:00)
年中無休(年末年始除く)


香り高く品のあるスープと
きめ細やかできれいな味わいの肉

凛とした清い空気が漂う板前割烹。カウンターとテーブル個室。
コースは一万円〜一万四千円。どのコースにも、先付けのすっぽん時雨煮と丸鍋が組み込まれる。時雨煮は足や首を醤油と生姜、すっぽんスープで煮たものでしみじみとうまく、その先にいただく料理の期待を否応でも高める。
楽焼きの鍋で供される、奥深い滋味とゼラチン質が溶け込んだ鍋は、実に香り高く、品があって、スープをすするたびにため息が出る。服部産だというすっぽんは、肉質もきめ細やかできれいな味わい。残ったスープを燗酒で割ってもらい、スープ酒と洒落るのもよかろう。ふんだんにすっぽんを食べたいむきには、生き血や肝の刺身がつき、上等な雑炊へと続くすっぽんコース一万円(前日まで予約)がおすすめ。

喰切り 江ぐち
渋谷区神宮前3-42-5 スピナッチヒルB1 
tel.=03-3796-4445
営業時間=18:00〜21:00
定休日=日曜祭日


味はしっかりと舌に乗ってきながらも品がある
すっぽんの品格を見直す美味

都内随一のふぐ料理を出す割烹として有名だが、もう一つの魅力がすっぽん料理。鍋のコースは一万三千円、刺身を組み込んだコースは一万八千円。カウンター席、小上がり、個室座敷。
白子豆腐などの突き出しに続いて刺身の大皿が。中央に肝、脾臓と心臓、胆嚢がそれぞれ入った小鉢、周囲にぐるりと肩肉の刺身が美しく配される。生姜醤油につけて食べる赤い肩肉刺身は、上質の鳥刺身のように筋肉質で歯を押し返すような弾力、馬肉に通じるうまみを持ち、一口でその上品ながらダイナミズムのある味にうなるは必至。そして肝。実にきめ細やかな舌触りの中から、脂がのった肝ならではの濃厚なうまみが顔を出す。続いてエンペラの酢の物でそのゼラチン質の食感を楽しんでいると、ぐつぐつと音を立てながらすっぽんの鍋が運ばれる。鍋には、創業以来三十年間継ぎ足してきたというすっぽん煮汁の煮こごりが投入され、まず注がれたスープを飲む。濃厚深遠、目を丸くするほど奥深き滋味。そして肉の各部位。味はしっかりと舌に乗ってきながらも品がある、すっぽんの品格を見直す美味なり。白子もまた絶好の酒肴。食べ進むと野菜(椎茸、白菜、えのき)を投入。再び注がれるスープは、野菜の甘みがでて優しい味わいに変化。野菜自体もスープを吸ってまたうまし。その間に出されるカラリと香ばしい唐揚げも上等。最後は焼き餅を入れて食べ雑炊へ。一膳目二膳目と変わる味に顔を崩しながら、最後のおコゲで悶絶す。味の品格を生み出すは、白身魚だけを食べさせながら四年間育てたという、特殊に仕入れた一キロ強のすっぽん。

さくら田
港区麻布十番1-3-13
tel.=03-3585-4402
営業時間=17:00〜23:00
定休日=日曜日



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