味の見聞録
和食新形態
店の個性いろいろ目が離せない東京の和食

Ryo-ri genten
秋田角館の割烹「一行樹」が進出食べ手の五感を刺激する料理

日本の食材を使いながら、最先端のフランス、イタリア、スペイン料理の技をも取り入れ、またそれを見事に消化し、素材の持ち味を生かした料理として昇華させ、数多くの食通に驚きを与えていた、秋田角館の割烹「一行樹」が、店を閉めて進出。経営は人と環境に配慮した自然素材のバッグで知られるgenten。一階がブティックで二階が店となっている。
例えば冬の献立は、桜えびの天ぷらに、口の中ではかなく消える天つゆのヌーベ(スペイン語で雲:液体を泡状にしたもの)添え。ごぼうや比内鶏、茸類、味が染みたきりたんぽ、水菜など、きりたんぽ鍋のエッセンスを閉じ込めた、穏やかな味わいの「きりたんぽのテリーヌ」。フカヒレをカラメリゼにして食感の妙を生み出した「茶わん蒸し」。ダシのジュレをはった皿に、精妙に味つけた蕪、蕪の葉、チシャ、白菜、黄ピーマン、豆腐の各ムースなどを小さい固まりにして周囲に配し、中央に長芋とポン酢のヌーベを置き、皿の周囲に振り柚子をした、「旬の野菜のおひたし」。「きんきと茄子の酒蒸し」「たらば蟹の湯葉巻き揚げ」「芹を添えた真鴨ロースト」。いぶりがっこ(沢庵燻製)を薄切りにしてレモンバターや刻んだイタリアンパセリとパンに挟んだ、チーズのような「いぶりがっこのミルフィーユ」。アラを使った焼きおむすびのダシ茶漬け。マイナス三十度で凍らして、口の中に入れると一瞬で気化するような「しそと柑橘のシャーベット」。いずれも刺激的で五感を揺り動かされるは必至。
または、本まぐろとアボガドのタルタルポン酢ヌーベ添え。西京味噌仕立ての汁を薄くはったボールに、裏漉しして丸めた百合根を浮かべた皿。岩手短角牛をタルタルにしてカツにした料理など、食材に忠実な敬意を払いつつ、食べ手の五感を刺激する料理が現れる。
今後は秋田時代の名作、鮎の唐揚げウルカとたで酢のソース、比内鶏のアーリオオーリオ、鮎茶漬け、まぐろと醤油のヌーベ、鴨と鴨ダシのタリアッテレ、白湯鶏などの登場に期待したい。昼コースは五皿にデザートで五千円。夜は九皿にデザートで一万二千円。

Ryo-ri genten
中央区銀座4-6-1
tel.=03-3564-1511
営業時間=11:30〜15:00、18:00〜23:00
(土・日・祭〜22:00)
定休日=水曜日


龍吟
おなじみの日本料理の皿から、
しなやかで挑戦的なアイデアが組み込まれた皿まで

「青柳」出身の才気あふれる山本征治氏による意欲的な割烹。重厚な六席のカウンター席とフレンチレストランを思わせるテーブル席が、シックな内装の中に配されている。
品書きには、すっぽん、フォアグラ、あわび、明石鯛、トリュフ、伊勢えびなど高級食材が並ぶが、いたずらに使うことなく、繊細な計算によって着地させている。コースは一万七百五十円より。最初はコースで試されるのがおすすめだが、気に入られたら、ぜひ二十時半以降(この時間からアラカルトに対応)に数人で出かけ、アラカルトを楽しむのをおすすめする。
鳴門わかめとたらば蟹、蒸しあわびを重ねた皿に、りんご酢のジュレをとろりとかけた皿。柚子おろしを添えた「平目の昆布ジメ」。蟹味噌と白子が濃密に出合う「たらば蟹と雲子の白味噌椀」。オカキ粉を使ってカリリと仕上げた「カキフライ」。「蛤とトリュフのお椀」。「すっぽんの卵とじ」。精妙に火を入れた野鴨の照り焼きや鳩のたたき。冬のジビエの数々。秋の「松茸すき焼き丼」やトリュフを使った丼。大根と金時人参を入れてダシで炊いたご飯に、くるみ油で炒めた大根とその葉を混ぜ込んだ、名物「大根めし」。黒蜜と味噌といちじく、マカデミアンナッツを練り込んで、ケシの実をあしらった龍吟流「松風」。マンゴーの綿菓子かけ。焼きりんごアイス、マイナス百六十度で瞬間冷凍したチョコレートのシャーベットなどなど、おなじみの日本料理の皿から、しなやかで挑戦的なアイデアが組み込まれた皿まで豊富なメニューを供する。
夜遅くまで営業しており、丼一杯での注文も可能。予算は二人で四万円ほど。個室あり。

龍吟
港区六本木7-17-24 サイド六本木ビル1F 
tel.=03-3423-8006
営業時間=18:00〜翌2:00
定休日=日曜祭日


七草
野菜を中心とした穏やかな滋味と土の温かみが伝わる料理

下北沢の喧噪から離れた閑静な一軒家で、サービスの女性と女主人前沢リカ氏の二人で切り盛りする質素な和食店。昔の人が食べていた当たり前の惣菜をコンセプトに、野菜を中心とした穏やかな滋味と土の温かみが伝わる料理がいただける。
塩もダシも出過ぎず、素朴な豆の風味に心安らぐくらかけ豆。修業先である大塚「なべ家」譲りの甘く、濃厚ながらやさしい味わいの卵焼き。ダシが十分浸った冬瓜とつる菜の煮びたし。こっくりと煮込んでクセと煮汁が見事に調和した茄子と三つ葉の炊きもの。野菜の甘みが体に染み渡る、人参やカリフラワー、とうもろこしのすり流し。味噌風味で肉はとろりと豆はふっくら煮込んだ、豚バラと大豆のみそ炊き。そばの実と同寸に切った青菜や利久麩を辛みを利かせて和えた皿。甘みがほどよい利久麸と胡瓜、芋づるの辛子和え。冬の水菜、壬生菜、車麸、粟麸による麸なべ。シメは豆腐粥か炊き立てご飯に上質の味噌汁と自家製芝漬け。デザートは、これも「なべ家」譲りの、丸めた豆腐を寒天にいこみ、黒糖ソースを添えた、玲龍豆腐。
健やかな気分を呼ぶ料理の数々は、七皿からなるコースもあり、四千七百二十五円。

七草
世田谷区代田5-1-20  
tel.=03-3410-2993
営業時間=17:30〜23:00
定休日=月曜日


石かわ
夜の営業が遅く、使い勝手のいい料理店
素材の味をしっかり立てた味わい

正統派の割烹ながら夜の営業が遅く、電話を入れれば二十四時からのコースも可能。また二十一時以降なら豊富な品書きから数皿頼むのも可能と、実に使い勝手のいい料理店である。
軽く焼いた牡蠣の風味と黄身の甘み、トマトの酸味が見事に出合う「牡蠣の黄身焼きトマトのせ」。カリッと揚げた衣とねっとりとした芋の対比的な食感がよい「えび芋の揚げあんかけ」。骨の回りがたまらない、九州から取り寄せたという「アラの水炊き」。柔らかく炊いた蕪のうえに裏漉ししてダシで溶き伸ばした白子ソースをかけた「蕪の白子ソースかけ」。ぐつぐつと煮立てた状態で運ばれる「鴨と茸の田舎煮」。滋味が染み渡った「野菜のすっぽんスープ煮」。皮目をパリパリに、身はしっとりと焼いた「甘鯛の焼き物」。小さいサイコロ状に切った鴨肉と芹、人参、ごぼうを炊き込んだ「鴨の炊き込みご飯」などなど。いずれも素材の味をしっかり立てた味わいで、充足感が残る。一万円からのコースでも存分に楽しめるが、好きな料理を頼み、酒をどっぷりと楽しむのもよい。

石かわ
新宿区神楽坂3-4 
tel.=03-5225-0173
営業時間=18:00〜24:00
定休日=日曜祭日


六雁
すべてを野菜だけで作る
新精進とでも呼びたい和食店

メインコース一万二千六百円の十四皿、すべてを野菜だけで作る新精進とでも呼びたい和食店。店名は料理の祖神、磐鹿六雁命より命名。
まず神様に供える折敷に、小さな土器がのって登場する。ある日は「人参菜の胡麻和え」「菊菜と茸の白和え」、葡萄風味をつけたおろしにベリー類と芽芋をのせた「ベリーなます」の三皿。次が根三つ葉、うるい、芹、大豆もやし、白アスパラの「おひたし」。吸い物は、香り高く優しい滋味が広がる、胡麻豆腐とアスパラを椀種にした「青大豆の呉汁」。次に、細く切り揃えた、ごぼう、黄ピーマン、さつま芋、ズッキーニ、紅殻蒟蒻、甘く長いとうがらし、キンカンの皮、白緑のアスパラ、いんげん粟麸、それに蓮根、かぼちゃ、百合根を各々炒め、合わせた「野菜の吹き寄せ」。湯葉と海苔と山芋で実物に似せて作った「鰻もどき」。クリームチーズを添えた、甘く香り高い「トマトのすり流し」。筍、わかめ、天上昆布(昆布を重ね合わせて炊き、プレスした昆布のミルフィーユ)の「炊き合わせ」。山葵漬と豆腐味噌漬を湯葉チップにつけて食べる「酒肴」。意外な相性に驚く、苺に玉味噌と黒胡椒をかけて串に刺したものと、焼き胡麻豆腐の木の芽味噌による「遺鉢」。たらの芽、ふわりと崩れる蓬豆腐、五香粉でアクセントをつけた蒟蒻、椎茸らの「串揚げ」。熊本料理人文字のぐるぐるをまねて、京揚げや枝豆蒟蒻を黄にらとわけぎで巻き、乾燥オレンジ皮を散らした味噌ソースを添えた皿と続く。締めはシンプルに白米に赤だし、香の物。デザートは、桜えびアイスと芋きんとんのパフェといった具合。
厨房と垣根のない完全オープンキッチンは、日本料理には珍しい。黒御影石と白木の二つのカウンターにテーブル席。個室あり。

六雁
中央区銀座5-5-19 銀座ポニービル6・7F 
tel.=03-5568-6266
営業時間=17:30〜23:00
定休日=日曜祭日



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