ビストロ パート1
新旧の魅力が混在する最新東京ビストロシーン
モダン化と科学化、クロスオーバー化が進む外食料理界の揺り戻しとして、郷土料理的温かさに富んだ、シンプルで素直においしい料理と、大衆的な雰囲気で親しみやすいサービスが得られるビストロが見直されている。また新しいスタイルも登場。そんな東京ビストロシーンを二カ月に渡ってご紹介。 |
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ビストロ・ド・ラ・シテ 西麻布
価格帯は手ごろに
料理はグレードアップ
東京、いや日本においてこれほどビストロという名がふさわしい店はない。カツカツと音を立てるフローリングの床、壁に多数飾られたパリの古い写真やロートレックのポスター、深紅のベンチシート、長い年月に晒されて味が出た壁や柱。開店以来三十二年、パリの下町にあるビストロのように、そこには成熟した店だけが持つ安らぎが流れている。
多くの名シェフを輩出した名店だが、それゆえにビストロといっても値段も一流であった。だが昨年、古屋壮一シェフを迎えて営業方針を一新、前菜は千円代、主菜は二千円代を中心とした手ごろな価格帯へ変更した。しかし料理は以前に増してすばらしい。前菜では、今の時期なら「蝦夷鹿のテリーヌ」。まな板のような木板に、赤キャベツのマリネ、トーストしたパンドカンパーニュと盛られた分厚いテリーヌは、ねっとりと香りよく、練り肉のうまみに溢れている。「エスカルゴと温泉卵、赤ワインソース」は、濃厚なソースの酸味の切れがよく、とろりと甘い卵と交わって美味。名物シテサラダは、銘々が好きなだけ取り分けるという以前のスタイルから、「フランス風お惣菜サラダ」として、白レバーのムースや、野菜のエスカベッシュなど数種類を盛り合わせた前菜に変更。また「テッド・ド・コション、ラヴィゴットソース」や「ヤギのチーズのグリエのサラダ」といったビストロ定番前菜の数々もすべて一流。
主菜では、これまた定番「カッスーレ」は東京隋一。塩豚のうまみと仔羊のうまみが染み込んだ、甘い白インゲン豆とレンズ豆の上には、仔羊の背肉三本分のコンフィとメルゲーズソーセージ、仔羊の脳みそ。脳みそは舌の上でとろりと濃厚に溶け、ソーセージの香りが胸を弾ませる。「白金豚スネ肉のシュークルート」は、圧倒されるようなボリュームで、食いしん坊なら思わず笑ってしまうところ。その他見事な焼き具合の「和牛リブ・ステーキ二百五十グラムとフライドポテト」、「白金豚バラ肉の自家製塩漬けとソーセージ」、「熊本産馬肉のタルタルステーキ」などがお奨め。
昼は、前菜、主菜、飲み物で千五百円〜。限定十二食の「シテ丼」は、クスクスのご飯版。ビオワインなど上代に五百円乗せただけのワインは三千九百円〜。もちろん昔よりのグランヴァンも健在。夜の予算七千円ほど〜。
ビストロ・ド・ラ・シテ
港区西麻布4-2-10
tel.=03-3406-5475
営業時間=12:00〜14:00、18:00〜22:00
定休日=月曜日
コム・ア・ラ・メゾン 赤坂
フランス美食地帯の太陽の力強さと
住み働く人々の包容力を感じさせる
赤坂の路地にたたずむ小さな店。「フランス南西地方の郷土料理店」。入り口にこう記されているように、ボルドー、フォアグラ、トリュフで有名な美食地帯の料理を出す。暖かい空気が流れる店内では、名物アルマニャックが多数並べられ、大ぶりな干し赤唐辛子が吊るされている。
湧井勇二シェフの作る料理は、いずれもかの地の太陽の力強さと住み働く人々の包容力を感じさせる。イベリコ豚の生ハムの骨でダシをとった「スープ・ド・ガルビュ」千四百七十円は、穏やかな滋味に白インゲン豆や野菜の甘みが溶け込んで、一口飲むたびに、幸福のため息をつきたくなる。口に入れたとたん、うっとりとなる脂の香りとアルマニャックの芳しさ調和する「フォアグラのテリーヌ」二千百円、独特のやさしい滋味がにじみ出る「鴨の心臓の串焼き」千五百七十五円、肉厚で甘いスペイン産赤ピーマンの干しタラを詰め、スパイシーなソースをかけた「特級赤ピーマンのファルシ『ピキオ』」千五百七十五円、水を使わずアルマニャックと野菜の水分だけで煮込み、野菜の柔らかな甘みが染み込んだ、なんとも心温まる「ガスコーニュ風トリップ」などをお奨めしたい。
シェフとサービス二人で切り盛りする店は、常連客中心に深夜まで賑わい、フルコースを食べる人、一皿でじっくりワインを飲む人など、銘々が好きなようにくつろぎ楽しんでいる。
コム・ア・ラ・メゾン
港区赤坂6-4-15
tel.=03-3505-3345
営業時間=18:00〜翌1:00(土曜日・祝日〜24:00)
定休日=日曜日
レスプリ・ミタニ 恵比寿
素材の良さをストレートに出した料理
新しい形のビストロ
昨年九月開店。常に多彩な料理を用意する。本来のビストロとは異なるが、素材の良さをストレートに出した料理によって、食べなれた人が心からくつろぎ、食を楽しむことができるという意味では、新しい形のビストロの一つ。
厨房は、元「オーバカナル」出身の三谷青吾氏一人、サービス一人という体制。メニューはなく、その日のメニューが口頭で伝えられる。ある日は、分厚く切ってソテーし、塩を振った、最もシンプルにおいしく食べられる方法で調理した「セップ茸のサラダ」。いずれも柔らかく、舌の上ですっと溶けるような感触が味わえる、大腸、ガツ、ハツ、舌、のど肉などによる、「豚の内臓のスープ」。主菜は、鶏肉のような、柔らかい繊維を持つ幼い滋味に陶然となる、肩ロース、バラ肉、モモを盛り合わせた、「寿豚の仔豚の丸焼き」といった三品。主菜と前菜一品、または前菜二品との組み合わせを選ぶ。
その他四人前はありそうな巨大な体ながら、繊細な味わいの「ドーバーソールのムニエル」。ホタテとホタテの汁がクレープとしっくりなじむ、「クレープ・ド・サンジャック」、圧巻、火の通しがやさしい、切り口にブイヨンがにじむ「ホロホロ鶏のロースト」など、日替わりでさまざまなメニューがある。
レスプリ・ミタニ
目黒区三田1-12-26-B1F
tel.=03-3712-0369
営業時間=18:00〜終了時間未定
定休日=不定休
ビストロ・ブルゴーニュ 赤坂
くつろいでワインや料理を楽しんでほしい
店主の気持ちがにじみ出る
昨年九月開店。でき立てながら、漆喰風の壁にアフリカの古木を多用した店内では、おいしい賑わいが響き、はやくもビストロならではの空気が漂い始めている。それも、くつろいでワインや料理を楽しんでほしいという店主の気持ちがにじみ出ていて、食い気盛んな客たちが集まり始めているからであろう。
前菜の「豚のテリーヌパセリ風味、温製」千六百円は、豚の頭のさまざまな部位を集めてパネし、フライにしたもの。ゼラチン質に富む肉の滋養が唇にまとわりつき、パセリが軽やかに香って美味。スペシャリテ「ムール貝のファルシ、スープ・ド・ポワソン」千四百円は、海の養分に溢れた魚のスープに、鶏肉のファルシを詰めたムール貝を入れ込んだ、ボリュームのある一皿。主菜の「トリップの煮込み」二千円は、玉ネギ他野菜類の甘みをまとったしなやかな食感のトリップがおいしい。肉汁に富む「シャラン産鴨のロティ」二千百円、その他「鴨コンフィのカッスーレ、トゥールゥーズ風」三千円などがお奨め。ワインもお値打ちのブルゴーニュが数多く用意されている。
昼のサラダとデザート付きの千二百円のデジュネも魅力で、今の時期ならバターライスと白菜や白インゲン豆の煮込みを添えた、蝦夷鹿の赤ワイン煮が用意されている。
ビストロ・ブルゴーニュ
港区赤坂3-10-4 赤坂月世界ビル2F
tel.=03-3505-2399
営業時間=11:30〜14:00、18:30〜21:30
定休日=日曜日・祝日
VIRON 渋谷
パリのビストロを髣髴とさせる店内で食す
堂々たるビストロ料理
パリ郊外の製粉会社VIRONのレトロドールという粉を使った魅力的なバケットやカンパーニュ、ヴィエノワズリーや菓子類を売る一階のブーランジェリーとパティスリー、二階がブラッスリー。
深紅のベンチシート、客席間の木の衝立、金の手すり、タイルとフローリングを合わせた床と、パリのビストロを髣髴とさせる店内。カウンターで軽食と酒を飲む人、テーブル席でフルコースを楽しむ人などフランス料理を食べ込んだ客を中心に、夜遅くまで賑わっている。
毎日黒板に手書きされる料理は、堂々たるビストロ料理。例えば「ブーダン・バスケーズ」千八百九十円は、長さ二十センチ、太さ直径四センチもある立派なもので、クミンの香りが鉄分の味わいと調和し、ワインをあおる。ガルニは、たっぷりのジャガイモのピュレとキャラメリゼしたリンゴの薄切り。主菜の「蝦夷鹿のポワレ」四千二百円も、皿に溢れんばかりに盛られた分厚い骨付きロース肉が二切れというフランスサイズの量。噛むほどに肉汁が溢れ出、肉を食べる喜びに富んだ一皿。ネズの実とジン、赤ワインで作った、艶やかなチョコレート色で香り高いジュニエーブルソース。付け合わせは、トランペット茸とジロール茸のソテーに、栗のペースト。どの皿もたっぷりと盛られ、フランス料理を食べる醍醐味に溢れている。デジュネやブランチもぜひ。
VIRON
渋谷区宇田川町33-8 塚田ビル1F・2F
tel.=03-5458-1770・6
営業時間=9:00〜24:00
(1Fブーランジェリー パティスリー〜22:00)
年中無休
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