味の見聞録
ビストロ パート2
新旧の魅力が混在する最新東京ビストロシーン第2弾

ビストロ・モンペリエ 
古きよき仕事を忠実に守り続けた真に力強いビストロ料理 

蔵前の路地にさりげなく看板を掲げる小体なビストロ。明るく、清潔感に富む店内を、シェフ荒山浩行氏とサービス兼パティシエ兼コックの若き女性の二人で切り盛りする。シェフは、「レンガ屋」を皮切りに、「アピシウス」などを経て独立された方。日々点検を重ねながら、古きよき仕事を忠実に守り続けた、真に力強いビストロ料理がいただける。
前菜では、「豚レバーのテリーヌ」千百円と、「牛スジのテリーヌ」千円が光る。両皿とも珍しい皿で、ねっとりと舌に広がる前者は、豚レバーの香りを生かしつつも、豚レバーの品のある甘みを干し葡萄の甘みと調和させることによって、際立たせた皿。一方の牛スジは、ゼラチン質の旨味に富んだ持ち味を、その食感を生かす大きさで閉じ込めた一皿。
魚料理では、「氷見ブリの赤ワインソース」二千四百円がいい。ポワレで適妙に火を通したブリの厚い切り身に、たっぷりと身に付けた脂の甘さを引き立てるよう、仕上げにアラ塩を振り、ソースを流してある。切れのいい赤ワインソースの酸味と香りが、微かに残る臭みを消し、その旨味だけを盛り立てる。
肉料理では、「仔羊のバラ肉のトマト煮込み」と「鴨のコンフィシュークルート添え」が素晴らしい。前者ナヴァラン・ダニョは、二十数年前にはフランス料理店のメニューには必ず載っていた定番で、現在はほとんど見られない。本来は肩肉で作るところ、バラ肉で作られる。その狙い通り、仔羊特有の脂の香りとトマトのやさしい酸味が渾然と一体化し、フォン・ド・ヴォーが穏やかに旨味を底支えしている。手間をかけて丁寧に作られた、フランス惣菜料理の美しさに満ちた皿。一方、酢を加えず自然発酵させたキャベツの練れた酸味に、爽やかな杜松の実の香りが漂う魅力的なシュークルートに、ほろりと崩れる味わい深いコンフィが合わされた後者も、楽しい皿である。
三日間煮含めたインゲン豆によるカッスーレ、三日間砂糖を少量ずつ加えながら仕上げたオレンジの皮砂糖煮など、いずれもかけるべき手間隙をふまえたものだけにしかありえない、骨太のおいしさに満ちた料理である。ランチ千二百円もとてもお値打ち。

ビストロ・モンペリエ 
台東区蔵前3-16-7
tel.=03-3864-1611
営業時間=11:30〜14:00、18:00〜22:30
定休日=日曜日・祝日


ブラッスリー・イブローニュ 
ワイン片手に楽しむ料理は郷土料理を中心とした構成 

赤坂の名店「コムアラメゾン」でサービス係兼スーシェフを担当していた有馬裕孝氏が、昨年三月に開店。十五坪ほどの店内に配された長いカウンター、赤と白のギンガムチェックのクロスがかけられた四つのテーブル席は連夜満席。厨房の有馬氏と二人のサービスで切り盛りする。「酔っ払い」という名の店内は文字通り、ワイン片手にさまざまに楽しむ人たちで賑わっている。
その名に込めた通り、たとえ一皿でも、あるいは何皿も並べながらお酒を楽しんでほしいと語る有馬氏の料理は、郷土料理を中心とした構成。前菜は、しっとりとした肉質で八角が香る「自家製ロースハム」八百円、ジャガイモと玉ネギとともにとろとろに甘く煮込まれた「ランド風白インゲン豆の煮込み」千円など。
主菜は、中がロゼ色に適妙な火入れで肉汁が豊かな「蝦夷鹿のポワレカシスソース」千九百円、上ミノ、牛スジ、豚足による、食感が楽しい「トリップの煮込み」二千円、ほろりとして旨味が詰まった「鴨のコンフィ」千七百円など。
食後にはぜひ、コーヒー豆を射込んだオレンジをカルバドスに四十四日間漬け込んだ食後酒「キャロンド・キャトル」を。十一時を過ぎると、ゆっくりと一皿を楽しみながら、シェフと雑談し酒を飲みに来る常連が集まり深夜まで賑わう。それもまた楽し。

ブラッスリー・イブローニュ
世田谷区池尻2-27-7
tel.=03-3419-6033
営業時間=17:30〜翌1:00
定休日=火曜日


ル・キャバレ 
パリの小食堂の趣料理はいずれもフランスサイズのボリューム 

通りに面した赤いひさしが目印。小体な店をサービスの女性一人と厨房の二人が切り盛りする。タイル床に白壁、壁に配された鏡、赤いベンチシート、紙ナプキンが置かれた小さい木製テーブルと、パリの小食堂の趣。ワインやお茶だけで過ごす客からフルコースを食べる人まで様々な客で賑わっている。食の細い人は前菜か主菜一皿で充分な、料理はいずれもフランスサイズのボリューム。
前菜の「ペリゴール風サラダ」は、砂肝のコンフィがどっさりと盛られ、葉類のサラダとともに頬張る喜び。また「パテ・ド・カンパーニュ」も堂々たる厚さ。主菜の皿に溢れんばかりに盛られた「豚肉のシュークルート」千八百円は、豚のバラ肉の煮込みやソーセージ類などの味わいを一つずつ確かめていくおいしさがある。ベアルヌ地方の郷土料理「ガルビュール」二千円は、優しい味わいのスープ煮込みで、レンズ豆、人参、玉ネギといった甘みに鶏のコンフィと豚肩ロース肉の塩漬けが盛り合わされた皿。
ワインも手頃なものから、飲み頃の名醸まで揃えている。

ル・キャバレ
渋谷区元代々木町8-8
tel.=03-3469-7466
営業時間=18:00〜翌2:00(日曜・祝日〜24:00)
※土曜・日曜・祝日12:00〜15:00 ランチ
定休日=水曜日


ラ・ピッチョリー・ドゥ・ルル 
かの地の力強い惣菜が待ち構えている昨年四月開店の深夜ビストロ 

「シェ・トモ」の市川知志シェフが昨年四月に開いた深夜ビストロ。今まで東京にはなかった、ラストオーダー三時でビストロ料理が気軽にいただける店として、連夜盛況。
ピッチョリーとは、バスク語で一杯飲み屋のこと。その精神にのっとって、客は居酒屋感覚でワインに合わせて数皿頼みながら楽しんでいる。突き出しの自家製チョリソから始まり、肉の味わいが迫る「短角牛シンタマのタルタル」二千百円、シャキッとみずみずしい「セロリアックのサラダ」七百円、辛いスクランブルエッグに豚バラ肉を載せた「ピペラード」九百九十円、自家製ソーセージの香りがいい「カスレ」二千八百三十円、酸味の利いた定番グリビッシュソースを添えた「テッド・ド・フロマージュ(豚足と豚耳のゼリー寄せ)」九百九十円、鉄分の香り溢れる、マッシュポテトをたっぷり添えた、太い「ブーダン・ノワール」千百五十円など、かの地の力強い惣菜が待ち構えている。

ラ・ピッチョリー・ドゥ・ルル
渋谷区恵比寿2-23-3
tel.=03-3440-5858
営業時間=19:00〜翌3:00
定休日=月曜日


メリ・メロ 
野菜の質の高さとアラカルトの充実ぶりが魅力 

カウンターとテーブル約五席の小体な店は、ランチ千円〜、ディナー二千九百円〜という設定も手伝って、昼夜とも満席。特筆すべきは野菜の質の高さ。突き出しで出される根菜を中心とした白いスープからして、力強さと温かみが漲っている。次に商品のアラカルトの充実。ディナーコースのほかに、「栗とズワイガニのグラタン」、「メルゲース(羊肉のピリ辛ソーセージ)」といった品が居酒屋感覚で頼めるのが嬉しい。またビオワインが手頃な価格から充実しているので、気さくなスタッフと相談しながら楽しむのがいいだろう。主菜では、「牛頬肉の赤ワイン煮込み」、「伊勢エビのブイヤベース」など、確かな味わい。

メリ・メロ
千代田区飯田橋4-5-4 山和ビル101
tel.=03-3263-3239
営業時間=11:30〜14:00(土曜・祝日12:00〜15:00)、18:00〜22:30
定休日=日曜日


ブラッスリー・ドゥ・クワン 
ずらり十数種の小さな前菜が並ぶ小皿系ビストロ 

厨房の二人とサービス一人で切り盛りする小体なこの店もまた、小皿系ビストロである。メニューには「ジャガイモのフリットハーブ風味」三百二十円、「三種豆(レンズ、ガルバンゾ、インゲン)サザエのブルゴーニュ風」三百二十円、「無菌豚のリエット」四百二十円、「ひと口フォワグラと根菜(蕪)のブレゼ」三百八十円、「自家製ハム赤キャベツマリネ」、「砂肝と豚舌の燻製ピンチョス風」、「ラタトゥイユ」四百二十円、「地鶏手羽のコンフィと白インゲンのサラダ」二百五十円など、ずらり十数種の小さな前菜が並ぶ。お得な三品、五品、八品盛りを前菜に選び、肉汁を含んで仕上がった「仔鴨のハーブローストトリュフ風味」や、切れのいい赤ワインソースを絡めて食べる「仔牛のアーモンドフリット」千五百八十円といった主菜を頼んでも楽しい。

ブラッスリー・ドゥ・クワン
世田谷区池尻3-30-10 三旺ビル4F
tel.=03-5481-5218
営業時間=11:30〜13:30、18:00〜23:00
定休日=水曜日


クレッソニエール 
安価で豊富に用意されたアラカルトメニューがお奨め 

渋谷の気さくなフレンチ食堂「コンコンブル」の支店。昼の定食千円は、銀の盆に盛られたワンプレートランチで、滋味に富む野菜スープ、「オマールエビとサワラの赤ワインソース」や「丸ごとトマトの肉詰めロースト」といった主菜から一品、パン、バターライス、デザート、サラダ、食後の飲み物が付くお値打ちデジュネ。夜はコース三千八百円〜だが、三百円から揃う前菜を始めとして、「サバのタルタル」九百五十円、「トリッパの煮込み」千三百円、「蜂の巣パン粉焼」千四百円など、安価で豊富に用意されたアラカルトメニューから選ぶほうをお奨めしたい。

クレッソニエール
新宿区新宿3-4-8 セゾンプラザB1F
tel.=03-3350-4053
営業時間=11:00〜22:00(11:00〜16:00はランチ)
年中無休



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