味の見聞録
水餃子
あふれ出る肉汁皮と餡のコンビネーション
小麦粉のおいしさを噛み締める、粉料理の王者ともいえる「水餃子」。
その小さき体に秘めた四つの楽しみとは。
皮と餡にこだわる水餃子のうまい店をご紹介。

哈爾濱餃子 
七センチの餃子に込められた
四つのおいしさ 

カウンター五席の小さな店をハルピン出身のご夫婦が切り盛りする。水餃子を頼めば「少々時間がかかりますのでお待ちください」と、たどたどしい日本語で女主人が応え、餃子を取り出して茹で始める。その間に渡されるつけ小皿には、タレに漬け込んだニンニクの微塵切りが。ハルピンでは、ここに酢醤油を加えて食べるのだという。五個の水餃子はふっくらと膨らんで艶やか。箸でつかめばスープを含んで重い。まずは、一、滑らかな皮がつるりんと唇を抜け、二、噛めばむっちり厚い皮が歯を包み込むようにからみ、三、餃子からは熱々のスープが流れ出し、やけどせぬように吸い込み、ゆっくりと噛めば、四、練りに練られた肉餡の旨味がこぼれる。この四つのおいしさがたった七センチの餃子に込められている。これぞ水餃子の魅力なり。五個三百五十円。

哈爾濱餃子(Harupin-Gyoza)
葛飾区堀切3-7-17
tel.=03-3692-9369
営業時間=11:00〜22:00
定休日=月曜日


大連 
ご飯も酒もいらない
質朴な美味 

二十年前に故郷大連の味を伝える店として、開店以来おいしい餃子の店として有名。湯気を立てながら運ばれる十個の水餃子は、つやつやと光り、食欲をそそる。白い皮はほんのり透けて、茶色の餡が見える。まずはなにもつけずに一口。具が透けて見える薄さながらもっちりとして歯を包み込む弾力のある皮。皮が弾けると熱々の甘いスープが飛び出し、噛み込めば練り肉の旨味に加えて大根の優しい甘みがこぼれる。この店では餡に、春から秋は白菜と豚挽き肉、冬は牡蠣と大根と豚挽き肉が混ぜられるのだ。ゆえに冬がベストであるが、春秋の優しい水餃子も美味。
ご飯も酒もいらない餃子だけで満足できる質朴な美味である。まさに「好吃不如餃子」、餃子ほどおいしいものはないという中国の言葉を地で行く店。餃子を待つ間厨房から漏れてくる中国語や、トントンとリズミカルに餡をたたく包丁の音も風情あり。水餃子十個五百円。蒸し餃子二十個千円、焼き餃子七個三百五十円。田町に支店あり。

大連(Dairen) 
大田区山王1-25-14
tel.=03-3776-7944
営業時間=11:30〜14:00、17:00〜22:00
定休日=火曜日


遊牧民 
羊肉特有の豊かな香り
「チャナサンバンシ」 

パオ内部を模したような小体なモンゴル料理店。羊肉による小餃子「チャナサンバンシ」五百円がいただける。長さ四センチほどの小さな餃子で、手作り皮は厚く、噛むとむっちりとしていて粉の風味がある。餡は少なめだが、羊肉特有の豊かな香りが生きていて、皮との相性がとても良い。ポン酢ダレがかけられて出てくるが、できれば添えてくれるようにお願いして、まずはなにもつけずに食べることをおすすめしたい。そのほうが素朴にこの餃子の味わいを噛み締められるはず。食べ進めば羊肉の効能で次第に体が火照って、寒いモンゴル地方の知恵を感じる。焼き餃子、蒸し餃子、乳茶餃子、羊骨スープ餃子もぜひ。

遊牧民(Yubokumin)
世田谷区北沢2-12-10
tel.=03-3410-8204
営業時間=17:00〜23:00
定休日=月曜日(祝日の場合は営業)


楊 
「つるん」と「もちもち」二つの喜び
優しい甘みとごま油の香り 

十条の商店街に位置する小体な店を、女主人一人で切り盛りする。「なにもつけないで食べてね」とすすめられる水餃子の皮には、「つるん」と「もちもち」という二つの喜びが込められていて、口に運び噛んだ瞬間から幸せな気分となる。そんな皮が弾けると熱い汁がほとばしり、優しい甘みとごま油の香りが広がる。餡は韮の香りと餡の旨味が調和した味わい。中国と日本の小麦粉の違いに苦心したという女主人は働き者で、池袋に支店も出している。水餃子六個三百五十円。

楊(Yan)
北区中十条2-22-4
tel.=080-1151-6456
営業時間=17:30〜22:30
年中無休


東順永 
餃子発祥の地
遼寧省・瀋陽一番の名物 

中国東北部、朝鮮半島に接した遼寧省にある瀋陽の料理を出す店。餃子発祥の地であるだけに、ご主人も「瀋陽一番の名物の水餃子がうちの自慢」という。
艶やかな白い肌にうっすらと汗をかいた熱々の水餃子。皮はかなり厚く、歯がずぶりとめり込んでいくかのよう。噛めば小麦粉の香りが伝わる個性豊かな皮である。一方の餡は、よく練られた豚赤身挽き肉ながら、蝦餃(海老蒸し餃子)のようにプリッとした食感がある。これは挽き肉に卵と海老を混ぜているとのこと。さらには熱々のスープが小龍包のように飛び出し、皮、餡、スープのコンビネーションで飽きることなく、軽く三皿は食べてしまうのは必至。水餃子六個四百八十円。裏メニューながら、韮とニンニクを合わせて醗酵させたなべ用のタレがあり、これを餃子につければ病み付きとなるは間違いなし。

東順永(Tojunei)
新宿区新宿5-10-10
tel.=03-3353-3532
営業時間=11:00〜15:00、17:00〜22:00
年中無休


潮州 
つるりとした食感と
歯を押し返すようなコシ 

路地にたたずむカウンターとテーブル席合わせて十八席の小さき店を、広州出身の厨師馬鴻権氏が切り盛りする。
潮州水餃子は五個三百五十円。可愛らしく肌が綺麗な餃子をかじると、つるりとした食感と歯を押し返すようなコシがある。豚挽き肉の旨味に、韮の香り、野菜の甘みが滲み出た優しい味わいで、滲み出るほの甘いスープと共に楽しめば心和む。その他海老や竹の子が入ったスープ餃子六百円や鉄板でカリッと焼き上げる焼餃子三百五十円などもおすすめ。

潮州(Chosyu)
杉並区成田東5-42-10-104
tel.=03-3393-7775
営業時間=18:00〜23:00
(日曜・祝日17:30〜22:30)
定休日=水曜日


悠好 
餃子を引き立てる
沙茶醤と酢醤油による深い旨味があるタレ 

餃子の名店として有名。餃子の命は皮にあると、食べるたびに痛感させられる餃子。七個のこぶりな餃子は、注文のたびに寝かせていた生地を取り出して引きちぎり、手早くのばして餡を包む。茹で立ての餃子をやけどせぬように口に放り込むと、厚手の皮は歯を包むようにからみつき、さらに噛むと小麦粉の味わいがふわりと立ち上がる。まさに水餃子の皮を噛み締める喜びをしみじみと感じる瞬間。餡は皮と対抗するかのように、コリッとした背脂の歯ごたえとよく練られた赤身挽き肉の旨味、野菜のみずみずしさが広がって、思わずニヤリ。そんな餃子を、沙茶醤と酢醤油による深い旨味があるタレが引き立てる。一皿などあっという間に食べてしまい、お代りするは必至。水餃子七百円。

悠好(Nihao)
渋谷区西原2-27-4 升本ビル2F
tel.=03-3465-0747
営業時間=17:00〜24:00
定休日=日曜日


パオ 
皮が弾けた途端あふれ出る
小龍包のようなスープ 

四谷より移転。台湾家庭料理の店。四谷時代より人気のあった水餃子は健在。この店の餃子の魅力は何より、小龍包のようなスープ。つるりとした皮が弾けた途端、滋味に富むスープがあふれ出る。そして豚赤身挽き肉やキャベツと渾然一体となって、「うまいっ」と叫けばさせるという次第。スープを寒天にして閉じ込めているゆえの技。ビールの伴侶として食べ進めば、何個でもいけてしまう危ない餃子である。六百円。

パオ(Pao)
港区西新橋2-15-12 日立愛宕別館B1F
tel.=03-3506-8100
営業時間=11:30〜14:30、17:00〜22:00
定休日=日曜日・祝日


岩茶房 
コシが強い
無農薬地粉を使用した黄色い皮 

中国茶の専門店。以前中国で食べた餃子に近づけるよう、試行錯誤を繰り返したという餃子は、五個で四百円。うっすらと皮が黄ばんでいるのは、無農薬地粉を使用しているため。そのためコシが強く、噛んでいると粉の風味がふわりと広がる。餡も皮に負けじと豚練り肉の旨味があり、さらに醤油や塩で味をつけてあるため、なにもつけずに食べるがよし。昼過ぎにゆったりと中国茶を楽しみながら、上等の餃子を楽しむは、実に至福なり。肉まんも同様に皮がおいしく、都内随一。

岩茶房(Gancha-Bou)
目黒区下目黒3-5-3 猿谷ビル2F
tel.=03-3714-7425
営業時間=11:00〜19:00
定休日=日曜日・月曜日・祝日



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