味の見聞録
タンシチュー
口に入れれば溶けていく
柔らかく深いタンの味わい

吟味された柔らかな和牛のタンに、職人の矜持が光る輝かしいデミグラスソースが絡んだ、これぞ洋食の華。そんな逸品に出会える東京の名店を探る。

ぽん多本家
一点の曇りもない
「キング・オブ・タンシチュー」 
 

「キング・オブ・タンシチュー」と呼びたい、堂々たる姿。運ばれてきた瞬間、誰もがその雄大さに目を奪われる。
皿に鎮座した、脂の乗ったタンモトのみを使用した肉にナイフを入れれば、力を入れることもなく入っていく。口に運ぶと、舌にくにゃりと吸い付くようで、タン自体のほの甘い味わいを滲ませながらソースと共に溶けていき、陶然となる。
皿に並々と敷かれたソースは、やや赤身がかった艶やかな茶色で、濃度が少ないさらりとした状態。深いうまみの中から柔らかな酸味が広がり、うまみを舌の両端に残しながら、喉元にゆっくりと落ちていく。消えかかる刹那、ほのかに香るキャラメル香もいい。品を感じさせながら、ご飯と抜群の相性を見せる味わいでもある。
付け合わせは、肉厚の椎茸、人参、ジャガイモ。甘く香るご飯、お新香、ナメコの赤だしとも、申し分なし。まさに一点の曇りなきタンシチューである。長さ約十五センチ、幅約七センチ、厚さ約三センチ。「タンシチュー」四千二百円。「ご飯、赤だし、お新香」五百二十五円。

ぽん多本家 
台東区上野3-23-3
tel.=03-3831-2351
営業時間=11:00〜14:00、16:30〜20:00
定休日=月曜


レストラン香味屋
人気メニューが復活
老舗の風格を感じさせる逸品 

しばらくメニューから消えていたが、二〇〇七年十月に復活。老舗の風格を感じさせる逸品である。
白皿に盛られた、マッシュルーム入りの艶やかな鳶色のソースがかけられたタンが置かれるや、馥郁とした香りが立ち上り、顔を包んで、思わず目を細めるは必至。ナイフを入れるときめきが生まれる。
よほど吟味されたタンなのであろう、口に入れるとほろりと崩れ、噛む必要もないほどで、溶けるようになくなって、うっとりとなる。ソースは、酸味・甘みが突出することなく、厚みのあるうまみの中にきれいに溶け込んだ、惚れ惚れとする味わい。後口も切れも実に見事。
付け合わせの人参グラッセ、茹でブロッコリー、ポテトグラタンも申し分なし。長さ約十・五センチ、幅約五・五センチ、厚さ約二・五センチ。「タンシチュー」三千五百円。

レストラン香味屋 
台東区根岸3-18-18
tel.=03-3873-2116
営業時間=11:30〜21:30
年中無休


グリル佐久良
ほろほろと柔らかく舌の上で崩れていく
質のよいタン

夫婦で切り盛りする小体な洋食屋。「タンシチュー」は、湯気を上げながら鉄の小鍋皿で運ばれる。こげ茶のとろりとしたソースに絡まるのは、二口大の大きさ(約三・五センチ四方、厚さ約一・五センチ)十一個ほどに切られたタン。タンの質よく、ほろほろと柔らかく舌の上で崩れていく。滑らかな口当たりの艶やかなソースは、うまみの中で甘酸っぱい味わいが広がっていく。ご飯が猛烈に恋しくなる強い味だが、決して濃すぎず、しっとりと深い情に満ちている。添えられるのが、箸とスプーンというのも下町の情。付け合わせはおいしく量もたっぷり、人参グラッセ、ブロッコリー、フライドポテト。「タンシチュー」二千三百円。

グリル佐久良
台東区浅草3-32-4
tel.=03-3873-8520
営業時間=11:30〜14:00、16:30〜21:00
不定休


レストラン吾妻
おいしさの記憶だけを残し、消える
見事な切れ味 

この店を訪れるなら、厨房に面したカウンター席を望みたい。快活な声でしゃべられるご主人にサービスされながら、思う存分、好きなように洋食が楽しめるからである。
赤みがかった茶のソースは、最初に甘み、次に酸味を感じ、それが深いコクと手を結んで上質の味わいを生んでいる。さらに見事なのは切れ味で、舌に残らず跡形もなく、おいしさの記憶だけを残し、消える。肉は柔らかく、噛めば特選黒毛和牛のほの甘い肉汁が滲み出る。
付け合わせは、タンの上に散らしたグリンピース、品のいいマヨネーズで和えられたポテトサラダ、白スパゲッティ。スパゲッティをソースに絡めてもおいしい。
ご飯は、「このたれを絡めて食べるとうまいですよ」と、ご主人がソースの中に置いてくれる。ご飯の甘みと合わさってさらにうまさを増す。長さ約十・五センチ、幅約六センチ、厚さ約二・五センチ。「タンシチュー」四千円。

レストラン吾妻
墨田区吾妻橋2-7-8
tel.=03-3622-7857
営業時間=11:30〜14:00、17:30〜21:00
(日・祝は16:30〜)
定休日=水曜、第2・3木曜


たいめいけん
ふわりと顔を包む芳香が
胃袋をくすぐる 

本店二階でのみ食べられる「舌シチュー」は、浅い両手鍋に入れられて供される。
なによりも、目前に置かれた瞬間に、ふわりと顔を包む芳香が、たまらなく胃袋をくすぐる。黒に近いこげ茶の艶やかなソースをまとった肉を切り、口に運べば、ほろりと柔らかくほどけ、うまみ、甘み、やや強い酸味が渾然となって広がり、肉のほのかな甘みと共に消えていく。
切れ味がよく、濃厚な味わいながら、うまみの余韻だけ残し、すっと切れていく味わいや実に見事。人参グラッセ、茹でアスパラガス、フライドポテトの付け合わせも上等。ご飯も甘くおいしい。長さ約十一センチ、幅約六センチ、厚さ約二・五センチ。「舌シチュー」三千二百円。

たいめいけん
中央区日本橋1-12-10
tel.=03-3271-2465
営業時間=11:00〜14:00、17:00〜20:00
定休日=日曜・祝日


南蛮銀圓亭
肉自体の甘いブイヨンとソースが入り混じり
うっとりとする時間を呼ぶ 

まず突き出しにアンチョビバターを塗ってカリカリに焼き上げたメルバトーストと、富士のミネラルウォーターが運ばれる。
タンシチューは、長い八角形に整形された、長さ約十センチ、幅約八・五センチ、厚さ約二センチのタンが二枚。赤身がかった茶色い、艶に深みのあるソースが並々と注がれた皿の中央に、整然と鎮座する。
引っかかりを一切感じさせない滑らかなソースは、甘みを含んだうまみの後から、軽やかな、切れのいい酸味が香りと共に開く。タンを噛めば、肉自体のほの甘いブイヨンが滲み出て、ソースと入り混じり、うっとりとする時間を呼ぶ。
付け合わせは別皿で供され、香り高い椎茸をはじめとして、インゲン、人参グラッセ、フライドポテト。いずれも丁寧な仕事が光る。ご飯も上等。「タンシチュー」四千二百円。
現在上質な和牛タンの入手が困難なため、数に限りあり。事前にご確認を。

南蛮銀圓亭
中央区銀座5-4-8 カリオカビル7F
tel.=03-3573-1991
営業時間=11:30〜14:00、17:00〜20:00
定休日=日曜・祝日


洋食MIYASHITA
和の知恵と洋食の技を融合した
MIYASHITAならではの味わい 

和食店「暗闇坂 宮下」の洋食店。
「タンシチュー」は、小土鍋に入れられ、湯気をくゆらせながら、熱々の状態で運ばれる。厚みのあるタンは柔らかいながら、噛む喜びがあり、噛めば口の中に肉の甘みがゆっくりと広がっていく。やや酸味がたったまろやかなデミグラスソースは、うまみが深い。小鍋にたっぷりと注がれているので、ご飯に存分にかけてどうぞ。
付け合わせは、舞茸、人参グラッセ、甘い茹でジャガイモ、ロングマカロニ、ホウレン草。長さ約八センチ、幅約六・五センチ、厚さ約三センチ。「タンシチュー」三千二百円。
メニューにないときもあるそうなので、電話でご確認を。

洋食MIYASHITA
渋谷区神宮前4-12-10 表参道ヒルズ本館3F
tel.=03-5785-0707
営業時間=11:00〜24:00
年中無休(表参道ヒルズに準ずる)


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