汁かけご飯
手軽ながらも奥深い
各地の特性を盛り込んだ日本の伝統食
日本全国の郷土料理に根付き、手軽でいて日本人を魅了し続けてきた、「汁かけご飯」が食べられる店をご紹介。
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皆美
松平不昧公考案の典雅なご飯
「鯛めし御膳」
松江の老舗旅館の東京店。「鯛めし御膳」二千六百二十五円は、かの松平不昧公考案の名物料理を、手軽に楽しめる昼の御膳。彩りよく配された具は、蒸した鯛をすり、鍋で乾煎りした鯛おぼろ、卵の黄身と白身のおぼろ、海苔、ネギ、わさびに大根おろし。これらを熱々のご飯に載せ、昆布と鰹節、焼き鯛骨でとった出汁をかけて食べる。ザザッと掻き込めば、骨の滋味が出た出汁のうまさに引き込まれて、一膳目は瞬く間。二膳目は、ほの甘い鯛の身や卵の甘みといった具の持ち味を、ゆっくり噛み締める。再び熱い出汁が運ばれる三膳目は、残った具をすべて載せ、渾然一体となるうまみに顔をほころばす。
食後もしばらく、うららかな陽気に包まれたような余韻が残る、典雅なご飯である。付け合わせに、前菜三種、季節の焼き魚、茶碗蒸し、デザートなどが付く。
皆美
中央区日本橋1-4-1コレド日本橋4F
tel.=03-3274-0373
営業時間=11:00〜15:00、17:00〜23:00(日・祝 11:00〜15:30、17:00〜22:00)
年中無休
丸子亭
静岡の自然薯を使う「麦とろ専門店」でいただく
芭蕉も好んだ丸子の宿の名物
『東海道中膝栗毛』に書かれ、『東海道五十三次』にも描かれ、芭蕉に詠まれた、静岡丸子の宿の名物「とろろ飯」。この店はそのおいしさを広めようと出店。丸子を名乗り、静岡の自然薯を使う、「麦とろ専門店」。
注文が入ると、特製の大きなすり鉢とホオノキの特大すりこぎで自然薯をすり、昆布と鰹節の出汁、卵、白味噌の味噌汁、自家製のたれを加える。丼ものは、丼にまずとろろを入れ、熱々の麦二割五分のご飯をよそい、再びとろろをかける。
粘りのあるとろろは、ご飯の上でふわりと団結し、染み込んでいかない。掻き込むご飯としっかり絡みながら、ずるるんと口の中に吸い込まれていく。ざらつきがなく、つるりと喉元に落ちていくきめ細やかな肌合いに、唇や舌、上顎が反応してにやり。後に残る出汁の温かい香りと穏やかな甘み。一気に食べ終えても、そこは消化のいい山芋、胃もたれ感はまったくなし。
「麦とろ定食」(昼:九百九十円、夜:千二百五十円)の次はぜひ「まぐろ納豆・たまごのまぜこぜとろろ丼」(平日昼:千五十円、平日夜・土・日・祝:千二百円)を。納豆が加わってよりネバネバ、マグロと卵が加わってより味わい深く、さらに紫蘇と海苔、ネギの香りが添加された渾然一体のおいしさが楽しめる。
丸子亭
中野区中野5-52-15 中野ブロードウェイ2F
tel.=03-3388-3067
営業時間=11:30〜15:00、17:00〜21:00(土・日 11:30〜21:00)
定休日=火曜・第3水曜
宇和
鯛の自然な甘みと味噌のうまみが広がる
宇和島の「佐妻汁」
宇和島料理の店。宇和島名物「佐妻汁」がいただける(昼は要予約)。「佐妻」とは妻を助けるの意で、酒宴を重ねる旦那たちが、それを支える妻たちのねぎらいのため、宴の最後で食べられるようにと事前に自ら作っておいたことが始まりとされる。
魚は、家によってアジやエボ鯛など決まりがあるそうだが、この店は、愛媛から送られた天然鯛を使う。鯛を焼き、すり鉢で丹念にすり下ろし、焼き麦味噌と鯛の骨でとった出汁を合わせ、刻みこんにゃくと薬味(みかんの皮、ゴマ、ネギ、刻み海苔)を加え完成。これをご飯にかけて掻き込む。
鯛の自然な甘みと味噌のうまみが口いっぱいに広がり、ご飯の甘みと抱き合って、思わず顔が崩れる。みかんやゴマの複雑な香りのアクセントが利いていて、それまで料理を散々食べていても、ご飯をおかわりするは必至。醤油だれにつけておいた鯛の刺身をご飯に載せて食べる、鯛めしもお奨め。いずれも千五百七十五円。
宇和
千代田区内幸町2-2-3 日比谷国際ビルB2F
tel.=03-3595-0590
営業時間=11:30〜14:30、17:30〜22:00
定休日=土曜・日曜・祝日
八百徳
浜松市肴町の老舗
鼈甲色の色艶を見せる鰻の蒲焼
鰻料理で有名な浜松市肴町の老舗。オープンキッチン、モダン内装の中、蒲焼の香ばしい匂いが漂う。「名物 お櫃うなぎ茶漬け」は、二千八百円。「肝焼」七百円でもつまみながら、目前で割かれ、蒸し、焼かれる鰻を待つこと十数分、塗りの盆に入れられたお茶漬けが運ばれる。お櫃にはたっぷりのご飯の上にふっくらと焼きあがって、鼈甲色の色艶を見せる蒲焼。まずは茶碗にご飯と鰻をよそって、小鰻丼。柔らかく程よい脂の乗った鰻のうまみとご飯を楽しむ。二膳目はネギとわさびを載せて、新たに加わった香りで楽しむ小鰻丼。そして三膳目は、急須に入れられた熱々の昆布出汁をかけ、お茶漬けとする。そこには、たれのこっくりとした甘辛み、鰻の滋味、わさびやネギの香り、昆布出汁のうまみすべてを、一気呵成にザブザブッと掻き込む幸せがある。肝吸いと香の物付き。さらに特上鰻を一匹半使った「特上」四千円、「うな重」も二千五百円からあり。
八百徳
港区西麻布4-17-33
tel.=03-5464-1808
営業時間=11:30〜14:00、17:30〜21:30(日 〜21:00)
定休日=月曜
魚山亭
あっさりとした味わいながらも栄養価の高い
宮崎名物「冷や汁」
宮崎料理店。「冷や汁」は、鎌倉時代に僧の簡易食が、盛夏に早朝から働く農家の人々のうってつけの朝食として、根付いた郷土料理。夏場にするりといただける、あっさりとした味わいながらも栄養価の高い、賢い料理である。
お奨めは昼の「冷や汁定食」千二百円(夜は単品で七百五十円)。真鯛を焼いて身をほぐし、麦味噌、白ゴマを合わせ、さらに焼いて焼き味噌にし、鰹の出汁で溶いて、つぶした豆腐を入れて冷やす。出す間際に薄切りの胡瓜と紫蘇を入れて完成。熱々ご飯に冷や汁をかけ、サラサラと掻き込みだすと箸が止まらない。冷たさと熱さが入り混じる食感に加え、味噌の香りとコク、魚のうまみ、胡瓜のみずみずしさ、紫蘇の爽やかさが混じり合って、一心不乱に食べ終えてしまう。チキン南蛮と季節の焼き魚付きでボリュームあり。ちぎった焼き魚を冷や汁に混ぜてもよし。
魚山亭
渋谷区道玄坂2-23-12 フォンティスビル2F-A
tel.=03-5489-6350
営業時間=11:30〜14:00、17:30〜24:00(土 〜23:30)
定休日=日曜・祝日
黒うさぎ
奄美地方の郷土料理
暑く食欲減退の頃にも最適な「鶏飯」
人気の奄美・沖縄郷土料理店。この店の汁かけご飯「鶏飯」(昼:自家製味噌漬け付き・九百五十円、夜:九百二十四円)は、奄美地方の郷土料理である。
ご飯に添えられるのは、細かく割いた鶏のささ身、錦糸卵、クコの実、微塵切りにした生姜と椎茸の甘辛煮、タンカン(柑橘)の皮、パパイヤの醤油漬けに、ネギと刻み海苔。これらをご飯の上に載せ、鶏がらスープをたっぷりかけていただく。コクのある薄味のスープに様々な食感が入り混じる。うまみのある鶏飯を食べ進めば、タンカンの皮の香りや生姜の辛味が時折顔を出して、飽くことなく、箸持つ手が加速する。暑く食欲減退の頃にも最適。
黒うさぎ
千代田区麹町4-8 麹町クリスタルシティ東館B1F
tel.=03-3263-2188
営業時間=11:00〜14:30(土 11:30〜)、17:00〜23:00
定休日=日曜・祝日
大漁
魚を知り尽くしたご主人ならではの
傑作鯛茶漬け
全国から取り寄せた極上の魚介類を、ご主人の手による独創性豊かな料理で楽しませる名酒亭。こぢんまりとした店内を、ご夫婦で切り盛りしている。
連夜魚通をうならせている締めの名物が「鯛茶漬け」。一般的には、鯛の刺身をゴマ醤油だれにつけ、熱々ご飯に載せてお茶をかけるお茶漬けをいうが、この店は、注文が入ってからご飯を炊き、天然鯛を焼いて、炊き立てご飯に載せ、三つ葉、塩漬け穂紫蘇を散らし、熱い玄米茶をかける。厚い鯛の身をほぐしながらご飯とともに掻き込めば、焼き鯛の塩気が程よく回って、ご飯、お茶、鯛の三者の上品な甘みが際立ち、なんとも幸せな気分を運んでくれる。
魚を知り尽くしたご主人ならではの、傑作鯛茶漬けである。
大漁
渋谷区渋谷2-4-4
tel.=03-3400-1280
営業時間=17:00〜23:30
定休日=日曜・祝日
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