味の見聞録
肉割烹
あらためて知る
肉のたくましき深い味わい

肉や内臓料理を中心にすえながら、焼肉店でもない、ステーキ屋でもない、新たな肉料理の世界を、板前割烹スタイルで展開する「肉割烹」の店をご紹介。

京洛肉料理 いっしん
食欲と感性を刺激する
見事なコース構成
 

白川の近くにて、ひっそりと佇む。凛とした趣が漂う店内は、カウンター九席、奥に座敷が二つ。まさに板前割烹そのままの雰囲気である。板場に真摯な目つきで立たれるご主人は、長年フレンチに携わり、滋賀で肉料理の店を立ち上げ、平成十四年にこの地に進出した。料理は昼夜ともお任せのみ(昼:六千円、夜:一万千五百円)。
ある日の夜の一皿目は「肉そうめん」からスタート。和風のダシに浸かって、包丁技が冴え渡る細く細く糸状に切り揃えられた肉は、きめが細かく、赤身と脂が均質に入った部位である、近江牛の内ヒラ肉(内モモ肉)。噛むと、歯はふわりと肉にめり込み、脂の甘い香りが流れて、すぐ消えていく。脂の切れがいい上質な肉と、ダシの味わい、添えられた山芋と肉に共通する滑らかさが共鳴して、陶然となる。食欲と感性を刺激する、肉割烹のスタートだ。山葵、葱、海苔添え。
二皿目は、丁寧に作られたことを感じさせる三種の前菜。「タンの味噌漬け」、歯ざわりが軽快な「ミノの湯引き梅肉ジャム仕立て」、深い滋味を秘めた、幽庵地に漬け込んだ「イチボ肉のローストビーフ」。
続いてお椀。「鱧しんじょうとテールの淡雪まんじゅう」。最初の一口目では淡いと思われたダシつゆに、椀種のテールと鱧しんじょうから滋味が溶け出して、味わいがドラスティックに変化していく。最後は、テールの甘みとダシが出会って、深い、充足のため息がもれるは必至。
次が塩漬けし、赤ワイン漬けにされた「内ヒラ肉のカルパッチョ」。薄く薄く切られた一枚を噛み締めれば、笑い出してしまうほどのうまみ。赤身肉ならではの味わいが凝縮されて舌に迫る。肉を熟知し、力を信じて計算された薄さ。薄さは、凡百のカルパッチョとは一線を画す、肉割烹の矜持。
五皿目が「タン刺し、九条葱と生姜の塩ダレ」。思わず喉が鳴る、気高い色艶のタンに映える若緑色のソース。九条葱の甘みと香り、生姜のアクセント、二種類の油のコクが、タンの淡い甘みを引き立てる。独創的だが、いじりすぎてはいない。本質を踏まえた創意工夫は見事。
六皿目は「テール焼き」。たくましく柔らかな繊維質の肉とゼラチン質の甘み、脂の濃さが舌に広がる。木の芽のアクセントも心にくい。
七皿目は「牛トロ寿司」。ミスジを使った、脂のキレが光る牛トロのにぎり、組み合わせの妙が見事なアボカドと蟹と肉の巻き寿司、うまみが深いトロ肉のづけの三種盛り合わせ。
八皿目は「豆乳と湯葉、タンの親子蒸し」。豆乳と湯葉の優しい甘みとタンの滋味との出会いに、心が和む味わい。
九皿目は「近江牛ステーキ」。塩加減適妙。泡状にした醤油と山葵を載せて食べる。
最後の締めは「肉茶漬け」。幽庵漬けのイチボ肉を焼きおにぎりに射込み、ダシと海苔、山葵で茶漬けにした逸品。
その他、内モモ肉の塩漬けのゴマ風味、ミスジ肉の味噌漬け、ミノと車エビの浸し物、牛タンと冬瓜の煮物など、季節によって多彩な料理が楽しめる。いずれも繊細な味わいながら、奥底に肉本来のたくましさや深みがあるのは、肉という恵みを十分に理解しているからだろう。デザートも秀逸。奥様のサービスもしなやかで心地よい。

京洛肉料理 いっしん 
京都市東山区縄手通新橋東入ル祇園新橋元吉町51
tel.=075-531-5311
営業時間=12:00〜14:30(L.O. 13:15)、17:30〜22:30(L.O. 20:30)
定休日=日曜または月曜


和牛料理 さんだ 赤坂店
内臓類の持ち味を見事に生かした
酒が進む料理

清潔感に富む店内、清められた白木のカウンター、和服姿に割烹着を着た美人の女将と、肉や内臓の野生とは無縁な、板前割烹の趣が漂う。一階がカウンター席、テーブル席、小上がり、二階は個室が二部屋(一室:十名迄、一室:十四名迄)。料理はお任せのみで、肉や内臓の各部位を適妙な味付けを施した小鉢にて、次々と供される。
まずはアキレス腱のコリッとした食感を生かした、静かな驚きを呼ぶ、ふぐ皮風二杯酢。次は、プリッとした食感のハツモト(大動脈)を湯引きし、胡麻油と醤油で和え、甘い香りが漂う韓国一味を振りかけた中華風小鉢。ハツモトの食感とごま油の香りで、食欲が掻きたてられる算段。
その名の通り噛むとふわりと歯を包むフワ(肺)は、ほのかなエグミを辛子醤油で引き締める。鮮紅色が美しいハツ刺しは、豊かな鉄分をワケギと辛子酢味噌が受け止める、ぬた風小鉢。優しい甘みが広がる中で、カリッと砕いた軟骨が歯に当たる、タンと喉軟骨のつくねのスープ。
蛤の皿に盛った、膣、子宮の子宝盛りでは、食感の違いを楽しむ。続く「ハラミの刺身」は、刻んだハラミと葱を和えたもので、山葵醤油で食べる。ハラミの質の良さ、うまみの濃さに思わず顔が崩れる。
次はつけダレが馴染みやすいよう、軽く湯通しをした「レバ刺しの湯引き」。ごま油とフランス産の塩につけて。甘みがある上質なレバー。小鉢の最後は、脂の甘みが口いっぱいに広がる、「牛スジの煮込み」。上質なシチューのような、深い味わいの「牛ツラミ肉のシチュー」。
食感や食味の違う内臓類を、なじみの料理に仕立てながら、見事に持ち味を生かしている。もう少し食べたいと思わせる、ほどよい量もよく、なくなる頃合に出される、よどみない間合い、味わいの流れもいい。また、酒飲みのツボを突く、酒が進んで困る肉料理でもある。
小鉢の後はミノ、シビレ、タンシタ、ギアラ、ハラミ、ホホ肉などの中から四種類が二切れずつ目前にて焼かれる。各々のうまみ、食感を存分に楽しんだ後は、タンのしゃぶしゃぶが用意される。タンの薄切りに水菜を巻いてダシに潜らせ、ポン酢でいただく。その後は、しゃぶしゃぶのスープを使ったラーメンで締める。黒胡麻アイスでお終い。お任せコース六千五百円のみ。酒は日本酒、焼酎のほか、珍しいモルドバのワインも揃う。

和牛料理 さんだ 赤坂店
港区赤坂3-19-3
tel.=03-5570-1129
営業時間=17:30〜23:30(L.O. 21:30)
定休日=日曜・祝日


てら參
刺身、煮込み、焼き物、締めの茶漬けまで
様々な肉料理が揃う

肉割烹の老舗格、祇園「安参」出身のご主人が、様々な肉料理を繰り出す。カウンター席に小上がり。
まずはお奨めは刺身から。柔らかい滋味を持つ、白と淡い桃色が交互に混ざった見るからに美しい「ツンゲ(タン)」。鉄分のうまみを豊富にたたえた「ヘルツ(ハツ)」。肉自体の濃いうまみを堪能する「ロース」。ほの甘い「レバー」。コリッとした食感を楽しむ「マーゲン(ミノ)の湯引き」。マーゲンはポン酢か梅肉で。それ以外は、九条葱とともに、甘めの特製醤油ダレと溶き辛子でいただく。真ん中の一番いい部分しか使わない、ツンゲやヘルツは、切れのいい、上品な滋味が味わえる。品書きがドイツ語なのは、「安参」ゆずり。
次に頼まねばならぬのが、名物「煮込み」である。バラ肉、スネ肉、筋肉を毎日七〜八時間煮込み、十八年間煮込み汁を継ぎ足してきたというもので、コラーゲンや脂の甘み、味噌のうまみが丸くまとまって、実に味わい深し。肉の食感を噛み締めながら、添えられた葱と辛子とともに楽しむ、酒が進むことこのうえなし。
焼きは、ロースの葱巻き、ツンゲ、サーロイン、ミスジ、上バラ、ハラミ、レバー、上ミノの八種類。ご主人が焼き、切り分け、皿に盛って供される。お奨めはミスジにハラミ。香ばしく焼かれたそれを噛みこめば、豊富な肉汁が溢れ、肉の優しい滋味と香りが堪能できる。
締めは、「肉茶漬け」がお奨め。肉のつけものの薄切りを熱々ご飯に載せ、あられと海苔を散らし、天に山葵を載せて、味付けをしたダシを注いだもの。新たな茶漬けの魅力を発見するは必至。
コースは二種類で各五千二百五十円。「お造りコース」は、漬物、刺身四点、煮込み、白ご飯、滋味豊かで、心が穏やかになるテールスープ、デザート。「焼き物コース」は、刺身の代わりにロースとハラミの焼き物がつく。要予約で、しゃぶしゃぶもあり。葱をロース肉で巻いて、さっと焼き上げた「ロース葱巻き」や、コラーゲンのうまみが詰まった、味わい深い「テール煮込み」もぜひ。

てら參
京都市下京区木屋町仏光寺角市之町260-1
tel.=075-344-6667
営業時間=17:00〜22:00(L.O. 21:15)
定休日=日曜


2008年8月 銀座でビール
2008年7月 汁かけご飯・アジア編
2008年6月 汁かけご飯
2008年5月 フレンチトースト
2008年4月 新井薬師
2008年3月 ナポリタン
2008年2月 東京の手土産 クッキー編
2008年1月 タンシチュー
2007年12月 もつ鍋
2007年11月 モンブラン
2007年10月 東京の手土産 マカロン編
2007年9月 冷たいそばとうどん
2007年8月 冷やしラーメン
2007年7月 ドライカレー
2007年6月 カツカレー
2007年5月 バゲット
2007年4月 カウンターフレンチ
2007年3月 カウンターイタリアン(2)
2007年2月 カウンターイタリアン
2007年1月 プリン
2006年12月 パンケーキ
2006年11月 美人女将の和食店
2006年10月 ホテルの和朝食
2006年9月 ホテルの朝食
2006年8月 中国小食堂
2006年7月 築地
2006年6月 ドイツ料理
2006年5月 馬肉料理
2006年4月 焼餃子
2006年3月 水餃子
2006年2月 ビストロ パート2
2006年1月 ビストロ パート1
2005年12月 焼き魚定食
2005年11月 マティーニ
2005年10月 かつ丼
2005年09月 新世代中華
2005年08月 羊肉料理店
2005年07月 野菜がおいしいレストラン2
2005年06月 野菜がおいしいレストラン
2005年05月 和食新形態
2005年04月 ぶた鍋
2005年03月 お米が主役の料理屋さん
2005年02月 味噌ラーメン
2005年01月 鉄火丼
2004年12月 すっぽん
2004年11月 チャーハン
2004年10月 焼きそば

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