フライの名店
肉、魚介、野菜など 素材の持ち味を生かした多彩なメニュー
洋食の華「フライ」。魚介類、肉類の持ち味を引き出し、フライならではのおいしさを追求した名店の数々をご紹介。
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新ばし 久
素材の持ち味が最大限引き出されるよう考え
揚げられる見事な技と感性
飲食店がひしめく烏森神社の一角、清潔感漂う細長い店内は、割烹風で、白木のカウンターが伸びる。
まずは、日替わりのおきまり(五品:四千五百円)で一杯。ある日のそれは、お造り、焼き魚、レンコン饅頭、ローストビーフなど。
これらで小腹を落ち着かせたらフライの出番。細長い縦書きの品書き左端に記されたフライは、六〜八種類。季節に応じた魚介類や野菜、茸類などが出番を待っている。後は天ぷら屋よろしく、好きなように頼み、揚げたてにかじりつけばよい。
中心をレアに仕上げた天草産の車エビは、色気を増してほの甘く、食べた瞬間に顔が崩れる。同様に中心をレアに仕上げたスミイカは、衣による香りの調味料をまといながら、ねっとりと歯に絡みつくように甘い。かき揚げのように、まとめて揚げられた小柱は、一つ一つがレアをほんのり残した見事な揚げ上がりで、香りと甘みを口の中で爆発させる。
上品な脂がのったアジは、粋な香りが広がって、思わず唸る。さらには、ミルキーな滋味を滲ませるハマグリ、焦げるギリギリのタイミングまで一歩突っこんで揚げられたアナゴは、口に含んだ瞬間、腰が抜けそうになるほどの凝縮したうまみがあふれ出す。
そのほかアワビや茸類、アスパラガスなど、フライによって昇華した魚介や野菜たちが、果敢に持ち味を発揮する。菜種油によって揚げられたフライはいずれも油切れがよく、まったくしつこさを感じさせないゆえ、全種類頼んでしまうことも。おいしいタルタルソースが添えられるが、塩とスダチ、もしくは何もつけずそのままで食べるのもいい。揚げる種により、衣の細かさ、つけ加減を変え、素材を見切った、持ち味が最大限引き出されるように考え揚げられる技と感性は、天ぷら屋の名店とも匹敵する。
酒は白ワインやビールも合うが、一つ一つにコクがあるので、「神亀」も合う。最後はぜひ、赤だしと漬物つきの土鍋炊きご飯(一合千円)で締めたい。
新ばし 久
港区新橋2-15-13
tel.=03-3500-5772
営業時間=17:00〜24:00(日・祝 16:00〜22:00)
定休日=月曜
フリッツ
洗練された前菜類と
季節毎に登場する豊富なフライ
赤坂「旬香亭」が出した、フライを中心とした洋食屋さん。陽光差し込む軽快な店内は、さまざまなフライを楽しむ人で、連日にぎわう。
お昼なら、まず「ミンチ&メンチ」千二百六十円を頼んでみてはいかがか。ブイヨンを少しずつ足しながら種を練っていく、昔ながらの手法で作られたミンチコロッケは、ジャガイモの甘みと肉のうまみにブイヨンのコクが調和した、品のある味わい。一方メンチカツは、切ったとたんに肉汁が飛び出て、口にすればジューシーさの中から、練り肉ならではのうまさが滲み出る。
さらに魅力は、本日の魚のフライ(千五十円〜)。かじったとたんに立ち上る甘い湯気に目を細めるタラのフライや、香りのいいアジのフライなど、数名で出かけて、季節季節に登場するフライを楽しむのもいいだろう。
衣は中粗で、ごま油の香りがほんのり漂う。そのほか、エビ、ホタテ、カニが射込まれた「シーフードクリームコロッケ」一個八百八十円がお奨め。また、とんかつも名物だが、なかでも「超厚切ロースカツ特撰豚」二千八百円で、口いっぱいにあふれる豚の滋味を堪能されたい。洗練された前菜類も揃うので、夜は、軽くつまんでからフライを楽しむという手もある。
フリッツ
千代田区永田町2-13-10 プルデンシャルタワー1F
tel.=03-3500-3755
営業時間=11:15〜15:00、17:15〜22:30
定休日=日曜
ぽん多本家
明治三十八年創業
とんかつと江戸前の魚介を使ったフライの名店
「上野とんかつ御三家」の一つとして知られる店だが、明治創業時から、江戸前の魚介を使ったフライの名店としても知られる。
その抜きん出た仕事を堪能するなら、まず「キスフライ」三千六百七十五円を頼んでみてはいかがか。薄い狐色に揚がった、中粗の衣に包まれた姿のなんとも立派なこと。その見事な分厚い身を誇るかのように、尾を天に向けてピンと上げている。口に運べばラードの香ばしさが鼻を突き、サクッと噛みこめば湯気が上がって、熱々のキスがはらりと崩れていく。厚く、甘い花びらが、衣と絡みながら口の中を舞い落ちていくような食感は、官能的ですらある。
また見事なのが、「柱フライ」四千二百円と「アナゴのフライ」三千六百七十五円。前者は、大星と呼ばれる大振りな小柱を、十数個まとめて小さな円盤状に形作り、一つ一つの中心がレアになるよう、短時間で揚げている。衣を突き破れば甘い香りが立ち上って目を細め、食べれば貝特有の甘いエキスがこぼれ出る。後者は、一匹がじっくりと揚げられ、余分な水分を抜き、こっくりと甘い持ち味を引き出している。
そのほか、エビがごろごろと入った、香り高い「エビコロッケ」二千六百二十五円、ミルキーなやさしい海の滋味をたっぷりと味わえる、見事な大きさのカキを使った「カキフライ」二千六百二十五円、中心をほんのりレアに揚げた、ねっとりとした食感が魅力的な「イカフライ」三千六百七十五円など。
付け合わせは種によって異なり、千切りキャベツと、自家製ドレッシングで和えたレタス。いずれも高価だが、吟味された素材を使った「フライ」という料理の一つの頂がある。
ぽん多本家
台東区上野3-23-3
tel.=03-3831-2351
営業時間=11:00〜14:00、16:30〜20:00
定休日=月曜
きく
人気の「小アジフライ」と
丁寧な仕事が光る料理の数々
銀座の通人たちに愛される、人気の和食店。人気の秘訣は、陽気で美人、気の届いた女将と、どれを頼んでもぴたりと腰が据わった、おいしい料理。
食事は、カツオやマグロなど質の良いお造り類に始まり、キンキ一塩、アユ風干し、柳カレイ一夜干し、アワビバター焼きといった高級割烹風料理から、肉じゃが、コロッケ、メンチカツ、芋サラダ、サンマ塩焼き、イカ大根煮といった惣菜料理まで、すべて丁寧な仕事が光り、はずれがない。
なかでも常連客の間で人気なのが、「小アジフライ」一匹三百円。小さなアジを揚げたものだが、カリッと音が響くように揚げ切りよく、かじれば口の中でホクホクと崩れ、笑顔を呼ぶ。出されたら、すかさず尻尾を手でつまんで、何もかけずにかぶりつくべし。塩をして小一時間干し、余分な水分を抜いたアジのフライは、うまみが凝縮して、小さいながらもアジの尊厳に満ちている。何匹も頼んでしまう危険あり。
そのほか、人気の芋サラダを種にして揚げた「コロッケ」八百円、肉汁に富む「メンチカツ」千円、夏には「ハモフライ」三千円もあり。
きく
中央区銀座8-4-3 山田ビル2F
tel.=03-3574-7237
営業時間=17:00〜翌2:00
定休日=土曜、日曜、祝日
和楽惣
幅広い品書きが魅力
軽くほどよい香りの衣で揚げられた魚介の滋味
幅広い品書きを持つ「和楽惣」は、フライ類も充実している。なんでもご主人関根雅史さんがフライ好きのためとか。フライは、特注しているというバターの少ない生パン粉によって揚げられており、衣は軽く、ほどよい香りで魚たちを持ち上げている。
定番は江戸前「アナゴのフライ」千五百円で、一匹を丸々揚げる。山椒塩をつけて、カリッと揚がった粗めの衣に歯を立てれば、アナゴのコクの深いうまみにふんわりと包まれる。
特有の香りが生きた、珍しい「メバルのフライ」三千円も、ほの甘く上品で、煮つけとは違うこの魚の魅力を見直す。
そのほか、黄身醤油の甘みとカキのミルキーな甘みが溶け合う「岩ガキ」千五百円、ふわりと甘い湯気が立ち上る、繊細な肉質がフライに合う「タチウオ」二千五百円もいい。ゴマ塩で食べる「白エビ」四個千八百円の香りや、アスパラ、モロッコインゲン、行者ニンニクなどの野菜類、とんかつやビーフカツもお奨め。生ビールを片手に、豊富なフライ類を次々とやっつける。
和楽惣
港区南麻布5-1-1 プラザケイ1F
tel.=03-3445-0550
営業時間=18:00〜翌1:00(土 17:00〜23:00)
定休日=日曜
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