東京ラーメン
醤油味がきいた 懐かしい心温まる味わい
ここ二十年で、ラーメンほど多様化し、注目され、人気過熱した外食はない。その中で明治末期に登場し、昭和初期に広がったといわれる、醤油味がきいた「東京ラーメン」。マスコミへの登場は少ないが、控えめでさりげないうまさが身上の、この東京文化を食べさせてくれる店をご紹介。
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満来
ラーメン一杯二百円
六十年間不変の味
昭和二十三年創業。三和土にパイプ椅子、手書きされた額入り品書き、六十年の歳月を感じさせる時間が流れている。ご主人津田三郎氏は九十七歳。息子さん夫婦とともに切り盛りされている。
昔から不変という「ラーメン」はなんと二百円。澄んだ茶色のスープは、優しいうまみが染み渡る。それに絡む麺は柔らかめの中細麺。具は味が染みた細いしなちく、昔ながらの固めの小ぶりなチャーシュー、なるとに海苔と葱。素朴ながら、うまさ控えめで毎日食べても飽きない、学校帰りに百円玉を握り締めて食べた、ささやかな贅沢がここに残り、息づいている。
満来
世田谷区豪徳寺1-45-1
tel.=03-3429-5377
営業時間=11:30〜21:00
定休日=水曜
はつね
繊細な計算と丁寧な仕事を盛り込んだ
東京の職人の誇り
昭和三十六年創業。西荻窪駅南口にひっそりと佇む、カウンター六席だけの小体な店。先代から引き継いだ二代目ご主人と奥さんの夫婦二人で切り盛りする。店内は隅々まで清潔感に富み、その中でご主人が一部のスキもない流れでラーメンを作る。一流割烹の如く、その丁寧で無駄なき仕事は、見ていて清々しくなる。
ラーメン六百円。熱々のスープをすすれば、醤油の香りとともに、丸みのあるうまみが舌に広がって、思わず微笑む。そのスープにもちもちとコシを弾ます中太縮れ麺が絡む。注文の都度切られるチャーシュー(二枚)は、厚切りでしっとりと肉汁が滲む。他の具は、焼き蒲鉾、海苔、さやいんげん、葱。スープ、麺、具、どれが突出することなく、見事なバランスでまとまった、これぞ東京ラーメンの醍醐味。さりげなさの中に、繊細な計算と丁寧な仕事を盛り込んだ東京の職人の誇り。食べた後、春の陽だまりを身体に浴びたような、穏やかな気分にさせてくれる。
はつね
杉並区西荻南3-11-9
tel.=03-3333-8501
営業時間=11:00〜15:00
定休日=日曜・祝日
光江
さりげなく、雑味なく、ほの甘く、
じんわりとおいしさがつのる
昭和二十二年創業。以前は言問通りと昭和通りの交差点近くにあったが、下町風情漂う住宅街に移転。ご夫婦で切り盛りする。
「中華そば」五百五十円。青い雷紋で縁取られた丼に入れられたスープは、醤油色が濃い色合い。うまみと醤油のバランスがよく、互いが突出することなく、さりげなく、雑味なく、ほの甘く、じんわりとおいしさがつのる。丹念に取り去っているのだろう、脂分も感じさせず、主張しない品、庶民側で居続ける格がある。麺は中細のやや縮れ麺。コシはしっかりとしてしこしこと弾む。具はチャーシューにほうれん草、しなちくに葱。味が染みたチャーシューを噛み締める喜びを持つ。
光江
台東区下谷2-22-6
tel.=03-3873-0142
営業時間=11:00〜20:00
定休日=木曜
萬福
ふんわり心を温める
まろやかな優しいうまみ
大正末期に屋台からスタートし、昭和四年にこの地に開店した、東京ラーメンの老舗。改築はされたが、昭和初期の風情を残す。店内には、白衣を着て淡々とラーメンを作っていた先々代の写真が飾られ、郷愁を呼ぶ。
赤い雷紋で縁取られた丼に入る「中華そば」は六百五十円。透明度が高い醤油色のスープをすすれば、ほんのりと甘さが広がり、醤油の香りとまろやかなうまみが広がる。うますぎない優しさがあって、ふんわり心を温める。麺は中細ストレート麺。つるつるとした口触りで、柔らかめの茹で加減。スープとの相性がいい。具は、中心をほんのりピンクに染めた、程よく味が染みた厚切りのチャーシュー、濃い茶色のスープに映える黄色の薄焼き玉子、なると、しなちくにほうれん草。海苔の香りが合うので、別皿でトッピングをもらい(百円)、散らしてみるのも一興。
萬福
中央区銀座2-13-13
tel.=03-3541-7210
営業時間=11:00〜22:30(L.O.)
定休日=日曜・祝日
あづま
醤油の風味が溶け込んだ
穏やかで後味の切れがいいスープ
浅草・寿司屋通りで三十五年、地元客に愛される中華料理店。カウンターが奥へ伸びる細長い店内は、常連客中心に賑わっている。レバーを甘辛く味付けた「純レバ丼」八百五十円が人気だが、ラーメンもうまい。
「ラーメン」は六百五十円。透明感のある茶色のスープは、穏やかで後味の切れがいい。さりげないうまみを持つダシの中に、醤油の風味が優しく溶け込んでいる。滑らかなコラーゲンも感じる。麺はつるりと唇に滑り込む、コシのある中細ストレート麺。具は、程よく味が染みたしなやかなチャーシュー、シャキッとした食感を残したもやしに葱。
見た目はしなちくラーメンのようでありながら、食べ進むと、丼の底に沈めた刻んだチャーシューがスープの味わいを次第に深めていく、「DXラーメン」八百円もおすすめ。
あづま
台東区浅草1-13-4
tel.=03-3841-2566
営業時間=16:30〜24:00(日・祝 15:00〜23:00)
定休日=水曜・木曜(祝日の場合は営業)
一力
脂を感じさせない
うまみが丸く透明感がある味わい
日暮里駅西口そばの路地で夫婦お二人で切り盛りされる店。下町風情漂う町並みに溶け込んだ小体な佇まい。
赤い雷紋模様で縁取ったオーソドックスな丼に入れられた「ラーメン」は六百円。醤油の香りが漂うが、出すぎることなく、うまみが丸い。脂も感じさせず、味に透明感がある。麺は、滑らかでもちもちとした中細ストレート麺。具は、肉の味が伝わるチャーシュー、よく味の染みた細切りのしなちく、ほうれん草に葱という、東京ラーメンのオーソドックス。
一力
台東区谷中7-18-13
tel.=03-3821-2344
営業時間=12:00〜14:00、17:00〜20:00
(変更の場合あり。要確認)
定休日=月曜
春木家本店
ほんのりと漂う煮干の香り
食べ進むと穏やかなうまみが積み重なってゆく
昭和六年創業、三代にわたって地元住民に愛されてきた店。荻窪駅前の有名店「春木屋」と同名だが系列店ではなく、こちらの本業はそば屋。ただし七十余年にわたりラーメンも供している。店は閑静な住宅街に佇む。
「中華そば」は六百八十円。醤油色が淡い透明なスープが、白い丼に美しい。脂を浮かべたスープは、ほんのりと煮干の香りが漂い、食べ進むと穏やかなうまみが積み重なってゆく。そこにしなやかな中細の縮れ麺が絡む。アルカリイオン水を使った自家製麺とスープのバランスがよく、後を引く東京ラーメンの定番がある。具はよく味の染み込んだ大判のチャーシュー、細切りのしなちく、三角形の大判の海苔に葱。シンプルなスープと縮れ麺に海苔の香りが花を添える。
春木家本店
杉並区天沼2-5-24
tel.=0120-050-708
営業時間=11:00〜21:00
定休日=木曜
福寿
誠実が詰まった
「しみ滋味」とした味わい
昭和二十九年創業。住宅街に佇む木造の一軒家。白地に赤の雷紋で縁取った白暖簾に「中華そば」の一文字。ガラス戸、パイプ椅子、三和土、傾いたカウンター、いまだ漂う昭和初期の香り。
「ラーメン」五百円を頼むと、ご主人が大鍋で麺を茹で始め、こまめに指先で加減を確かめながら一分、麺とスープが合わされ、青い雷紋で縁取られた丼で登場する。かけそばのような醤油色の濃いスープは、こっくりと醤油味がききながら甘みを感じさせる優しい味わい。そこに絡むは、しこしこと弾むコシの強い縮れ中細麺。具はチャーシュー、しなちくに葱。「しみ滋味」とでも呼びたいような味わいは、半世紀にわたり平凡を守り、点検を怠らなかった誠実が詰まっている。
福寿
渋谷区笹塚3-19-1
tel.=03-3377-2615
営業時間=14:30〜21:00
定休日=火曜
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