二〇〇九年開店の話題店(2)
伊・米・仏と、世界各国の味が楽しめるニューオープンの店をご紹介
前号に続いて、東京の外食シーンを深化させる、 今年開店した魅力的な店をご紹介。
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HOSTARIA er Campidojo(ホスタリア・エル・カンピドイオ)
金曜から月曜まで週四日のみ営業の
「ローマ居酒屋」
昨年十二月、惜しまれつつ閉店した、老舗格のイタリア料理店、西麻布「カピトリーノ」の吉川敏明シェフが、「ローマ居酒屋(ホスタリア)のような店を」との思いで新たに開いた店。閑静な住宅街の中に佇むロッジ風の一軒家で、席数はわずか八席。営業は金曜から月曜の週四日の夜のみ。前菜・パスタ、セコンドという順にこだわることなく、廉価に抑えられたワインのお相手として、料理を仲間とシェアしながら、自由闊達に楽しみたい。
黒板に書き出される六〜七皿の本日のメニューは、ローマの伝統料理を中心に据えた魅力的な料理が並ぶ。「アリッチャ風焼き豚サラダ添え」千四百円は、噛んだ瞬間、肉の香りと甘みが広がるよう計算された絶妙な厚みと、脂のうまさを堪能する。「イイダコとカンネッリーニ豆(イタリアの白インゲン豆)のトマト煮」千四百円は、柔らく煮込まれたイイダコの香りが豊かで、たくましさが引き出されている。そのタコの強さと豆の優しさのバランス、仲介するトマトソースの味わいが見事で、微笑みを呼ぶ、郷土料理の温かみと凛々しさを感じさせる一皿。「茹でタコのサルサヴェルデ風味」は、ピクルスケイパーが入ったサルサの懐かしいような温かみに心和み、ワインが進むこと。 ミントの香りが華やかさを添え、人参やセロリの優しい甘みに包まれた「トリッパの煮込み トラステヴェレ風」二千円、カルチョフィ(アーティチョーク)のほのかな甘み、酸味が実直にソースに馴染んで魚を盛り立てる「カジキの黄金焼きヴィーニャローラ風」千六百円、ワインビネガーとアンチョビで調味した、仔羊の魅力がシンプルに出た「仔羊のカチャトーラ風」千六百円、赤ワインとトマトが同化したソースがどこまでも優しく深い、思わず喜びのため息が出る「牛肉とインゲン豆のローマ風煮込み」二千円など、本質を踏まえた料理だけが持つ、風格と優しさに飛んだ料理に出会える。
そしてパスタ料理。「スパゲッティ・カルボナーラ」千二百円は、いつまでも噛み締めていたくなる、グアンチャーレの練れたうまみと、獣的香りのたくましさが、本能に訴えかける。ペコリーノチーズも卵も出すぎず、全体の均整が見事に整った、食べれば食べるほど食欲が募る、不思議なパスタ。お馴染みの「ブカティーニ・アマトリーチェ風」千二百円は、太い乾麺が生麺のようなしなやかさで歯をもっちりと押し返し、小麦の甘みが広がる。グアンチャーレの香りが滲むトマトソースのシンプルなうまさもたまらない。「ペンネ サルシッチャ(生ソーセージ)のソース風味」千四百円は、塩が全く舌に当たらないソースの優しさの中より、対照的なサルシッチャの凛々しい香りが響き、心を弾ませる。同じくペンネを使った「仔羊のラグー」千五百円は、トマトの素直なうまみと仔羊の香りが調和して、もうやめてくれといいたくなるほどのおいしさで迫る。
その他、魚の甘みが穏やかに出たソースを、ケイパーの酸味が引き締める「リングイネ カジキとケイパーのトマト風味」千四百円、アサリの滋味の凝縮感に思わずのけぞる「ボンゴレロッソ」千二百円といった、真のパスタ料理に出会える。 「ティラミス」、「プリン」、「焼きリンゴ」など、ドルチェも揺るぎなきおいしさ。
HOSTARIA er Campidojo
世田谷区桜丘1-17-11
tel.=03-3420-7432
営業時間=18:00〜21:00(L.O.)
※ 金・土・日・月の4日間の営業
GOTHAM GRILL(ゴッサム・グリル)
ニューヨークスタイルのハンバーガーとステーキ、
ロブスター料理を供すレストラン
今年三月開店。ニューヨークのニックネームを冠する当店は、ニューヨークスタイルのハンバーガーとステーキ、ロブスター料理を供すレストラン。 店内に入ってすぐ右手、カウンターに面して厨房があり、グリルから漂う胃袋をそそる匂いに期待を膨らませながら席に着く。
素材の持ち味を素直に伸ばし、隙がない皿に唸っていると、プリモピアットが運ばれる。ある日のそれは、「イカのラグーのペンネ」。イカの内臓を炒め、身と足、エンペラを入れて白ワインで蒸し、カーボロネーロ(黒キャベツ)を混ぜたラグー。イカの肝としっとりと火が通された身のしみじみとした深い味わい。イカの塩分とペンネの甘みとの調和に、フォークが止まらない。 まずは「ハンバーガー」千二百六十円はいかがか。つなぎなしのパティは、なにより肉の香りに富み、最初はなにもつけずに、溢れ出す肉汁とともに噛りつきたい。そのパティを迎え撃つバンズは、柔らかすぎず硬すぎず、ほどよい弾力で具をしっかりと抱きしめて、最後まで崩れず、ほの甘い。都内の高級系ハンバーガーショップの中では、間違いなく群を抜いている。他の具の、玉葱、トマト、レタスも新鮮でみずみずしい。太い胡瓜のピクルス添え。 そしてもう一つの目玉、ステーキ。この店のために、美瑛に農場と牧場を作り、ジャージー牛の提供を始めるという。国産ジャージー牛を中心とした、厳選牛肉は十分に熟成され、提供される。赤身に富んだ肉質は、脂の刺しが入った牛肉と違い、鉄分に溢れ、噛み締める喜びがある。同時に飽くことなく、いくらでも食べることができる。野性味を感じる「リブロース」三百十グラム四千二百円〜、しなやかで優しいうまみが滲み出る「テンダーロイン」二百グラム三千百五十円〜、たっぷりの肉汁を含んだ「サーロイン」三百十グラム四千二百円〜。いずれの部位も魅力だが、フィレとサーロイン両者が味わえる「ポーターハウス(Tボーン)」はいかがか。六百グラムで八千四百円だが、一人でも難なく平らげることができる。またステーキを頼むと添えられる、シリアルグレインブレッド(ライ麦と焙煎胚芽入り穀物パン)も、噛み締めがいのあるおいしさ。フライド、マッシュ、ベイクド、グラタン(五百二十五円〜)といったジャガイモ料理や、野菜料理も合わせて頼みたい。 その他、ロメインレタスがみずみずしく、正統に、量たっぷりと出される「シーザーサラダ」大:千二百六十円、小:八百四十円、これまたボリューム満点の「チョコレートブラウニー」や「ニューヨークチーズケーキ」など、デザートも魅力。 サービスもよく気付き、気さくで心地よい。
GOTHAM GRILL
渋谷区東3-16-10 J-Park恵比寿3 ALTIMA1F
tel.=03-5447-0536
営業時間=11:30〜17:00、18:00〜22:30(L.O.)
※土・日・祝 11:30〜22:30(L.O.)の通し営業
不定休
Brasserie Gentil(ブラッスリー・ジョンティ)
温かく胸を包む郷土料理が豊富に揃う
アルザス料理専門店
都内では珍しい、アルザス地方(フランス北東部)の料理の専門店。浅草橋駅から徒歩四分。通りに面した小体な二階建ての店を、シェフとサービスのお二人で切り盛りしておられる。アルザスの風景画やアルザスワインのボトルなどが飾られたカジュアルな店内は、お二人のアルザスへの敬意が満ち溢れている。 料理の種類は実に豊富。前菜に迷ったら、「おまかせ前菜」(三点:千三百円、五点:千八百円)はいかがか。ある日の五点は、食べた瞬間、玉葱の濃縮した深い甘みに思わず目を細める「玉葱のタルト」、フォアグラの香りがいい「フォアグラと内臓のテリーヌ」、様々な食感が口の中で弾んで楽しい「豚足と耳のテリーヌ」、しなやかな食感から流れ出る鉄分に喜ぶ「牛ハツのコンフィ」、ほのぼのとしたうまみが広がるタラのすり身とジャガイモのピュレを、蛙のクグロフ(アルザス地方に古くから伝わるイースト菓子)に載せた料理など、変化に富んだ前菜で、アルザスの扉を開けてくれる。
その他アルザスでは、タルトやキッシュが有名。珍しいところでは「スッポンのタルト」千五百円はいかがか。スッポンを煮汁とともにタルトにしたもので、エンペラや様々な部位の楽しい食感、豊富なコラーゲン質の甘みが、口の中で広がっていく。また、おそらくここだけでしか食べられないであろう、各種「タルトフランべ」(薄いパン生地の上に、フロマージュブランと生クリーム、具を散りばめたピザのような料理)もぜひ。
「豚モツの煮込み」千円は、豚の食道と小腸を、玉葱やシメジとともに、豚足と豚骨でとったスープで煮込み、グラタン皿に入れてパン粉をふり、グラチネ(色をつけて焼く)した料理。二人前はあるほどたっぷりと盛られているが、味が穏やかで、コリッと弾む食道としなやかな小腸の食感の違いが楽しく、するりと胃に入ってしまうは必至。
主菜では、なんといっても名物料理「シュークルート」二千円(ハーフ:千二百円)を頼みたい。まずなによりも一カ月熟成させたというシュークルート酢キャベツが素晴らしい。酸味が深く、複雑な味わいがあってしみじみうまい。そして塩漬け豚肉。脂ははかなくすっと溶け、肉汁が口の中に溢れ出す。そのほか燻の香りがしっかり利いた、自家製ベーコンや牛スネ肉の味わいの深いこと。そうした肉類を、フレッシュな辛味と酸味が弾ける自家製粒マスタードが持ち上げる。 その他、「鯉のクリーム煮」や、アルザス名物「ベックオフ(肉と野菜を煮込み、オーブンで焼く料理)」二千二百円、「本日の豚足料理」千五百円など、食いしん坊には選ぶに困る料理が並ぶ。デザートも「焼きプリン」、「クグロフ」など、素朴なおいしさが光る。アルザスワインも豊富で値付けも安い。 いずれも決して都会の料理に背伸びしようとすることなく、かの地の郷土料理に忠実に作ろうとする実直さ、邪気のなさが清々しく、温かく胸を包む。サービスもよく気付き、スマートで快適。
Brasserie Gentil
台東区浅草橋2-5-3
tel.=03-5829-9971
営業時間=11:30〜14:00(L.O.)、18:00〜23:00(L.O.)
※土・日・祝 12:00〜15:00(L.O.)、18:00〜22:00(L.O.)
定休日=水曜日
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