味の見聞録
ハヤシライス(2)
懐かしいけど新しい
洋食の定番人気メニュー

前号に続き、ハヤシライスの新旧美味しい店をご紹介。

上野精養軒 日本橋店
ご飯とよくなじむ
品と複雑さがある上等なソース
 

 本店上野店は、明治九年開業。ここでハヤシライスが生まれたという説もあり。日本橋店はビルの上階。ゆったりととられた客席で、落ち着いたしとやかな時間を過ごすことができる。
 「ハヤシライス」は、千七百八十五円。ソースポットに入れられて登場するソースは、やや赤みを帯びたこげ茶色で、明るい輝きを放っている。
 食べれば、ドミグラスソースにトマトピューレの酸味と野菜のうまみを加え、たっぷり使った赤ワインのうまみ、酸味、苦味、香りが感じられ、品と複雑さがあって、上等。甘味とのバランスもいい。「とろり」より、ややゆるいソースはご飯とよくなじむ。肉は牛バラ肉を使用し、コラーゲンに富んでやわらかく、煮込まれても肉に味がしっかり戻っている。他の具はしなりと火を通した玉葱。薬味はラッキョウと福神漬。

上野精養軒 
中央区日本橋室町1-5-3 福島ビル9F
tel.=03-3241-2741
営業時間=11:00〜21:00(20:00 L.O.)
※土 〜16:00(15:00 L.O.)
定休日=日曜日・祝日
 


厳選洋食さくらい
食欲をそそる艶やかな色合いと
やさしく舌を包み込む甘さ

 洋食の激戦区で、工夫を凝らした洋食の品々で人気の店。
 「ハヤシライス」は、千七百円(ハーフは八百五十円)。ソースポットに入れられて登場するそれは、艶やかなこげ茶色の色合いで食欲そそる。一口食べて感じるのは甘さ。しかしその甘さは玉葱から来ているのだろう、やさしく、しつこくなく舌を包み、ご飯と合う。カラメル香はほとんどなく、ほのかな酸味とともにまろやかに口に滑り込む。ごろりと入った肉片は、煮込まれてしっとりとし、噛めば肉本来の味がする。ご飯も美味しい。他の具は四分の一大にカットされたマッシュルーム。 香り高い、よくできたカレーと両方味わえる「半分カレーと半分ハヤシのセット」千八百円(ミニサラダ付き)もおすすめ。薬味はラッキョウと福神漬。

厳選洋食さくらい
文京区湯島3-40-7
tel.=03-3836-9357
営業時間=[月〜金]11:30〜15:00(14:30 L.O.)、17:30〜22:45(22:00 L.O.) [土]11:30〜22:45(22:00 L.O.)[日・祝]11:30〜21:45(21:00 L.O.)
年中無休(大晦日・元日除く)


レストラン香味屋
その美しさにうっとりとなる
ソースの素晴らしさを堪能できる逸品

 創業大正十四年。丁寧な仕事が光る、上質な洋食がいただける老舗。
 どの品を食べても格を感じるが、「ハヤシライス」二千三百円もソースの素晴らしさを堪能できる逸品。
 ソースポットに入れられたこげ茶色のソースは、艶が深く、ぴかりと光り、粒が際立った素晴らしく美味しいご飯にかければ、ソースとご飯の艶が合わさり、その美しさにうっとりとなる。
 食べれば、まず甘味が広がり、うまみが来て、ほのかな酸味と苦味を感じ、ワイン香も含んだ深みのある香りが立ち上る。昔ながらにやや甘めながら、味に切れがあって、ご飯となじみ、スプーン持つ手を加速させる。
 肉はヒレ肉だろうか。たっぷりと十切れ以上入った肉は、やわらかく、やさしい味が広がる。他の具は、とろりとなった玉葱にマッシュルーム。

レストラン香味屋
台東区根岸3-18-18
tel.=03-3873-2116
営業時間=11:30〜21:30(L.O.)
年中無休(年末年始除く)


東京ハヤシライス倶楽部
バランスよく後を引き
ご飯がより食べたくなる味わい

 東京ミッドタウンの地下一階、カウンターだけの小さな店。
 「黒ハヤシライス」は、「甘味」と「辛味」の二種類(各九百八十円。「両味」千百五十円もあり)。昔ながらのハヤシを再現したというそれは、色合いが黒に近いこげ茶色。食べれば、甘味が先行するが、やさしく深いうまみが追随して、ご飯が恋しくなる。小麦粉を丹念に炒めたのであろう、ほのかなカラメル香と隠れたほろ苦味もいい。バランスよく後を引き、ご飯がより食べたくなる味わい。肉はやわらかく煮込まれた豚肩ロース。それに玉葱。
 甘味のあとから辛味がヒリリと刺激する「辛味」もいいが、やはりおすすめは王道の「甘味」。

東京ハヤシライス倶楽部
港区赤坂9-7-3 EB117-2 東京ミッドタウン ガレリアB1F
tel.=03-5413-3277
営業時間=11:00〜21:00(20:45 L.O.)
年中無休(元日除く)


丸善・日本橋店 MARUZEN Cafe
老舗書店のカフェでいただく
「早矢仕ライス」

 多くの文人たちも訪れたという老舗書店「丸善」。創業者である早矢仕有的が、ありあわせの肉や野菜類をごった煮にしてご飯にかけ、友人に饗応していたという話から、考案者とされている。前ビル時代、屋上のゴルフ練習場脇の「ゴルファーズスナック」で供していたが、全館改築後、三階のカフェでいただけるようになった。 お客の八割がこれを目当てに訪れるという、「早矢仕ライス」千円。以前のそれより甘味が減り、酸味とのバランスがいい。紡錘形に盛られたご飯の手前に、なみなみと艶のある黒茶のソースがかかるさまは、食欲がそそられる。具は、挽き肉とマッシュルーム。
 具材のバリエーションを変えた、日替わりメニューもある。

丸善・日本橋店 MARUZEN Cafe
中央区日本橋2-3-10 日本橋丸善東急ビル3F
tel.=03-6202-0013
営業時間=9:30〜20:30(20:10 L.O.)
年中無休(年始除く)


御茶ノ水 小川軒
酸味、苦味、甘味、うまみ
すべてにおいてバランスよく丸い味わい

 ランチタイムに、一階のカフェで「ハヤシライス」千五百七十五円(スモールサラダ付き)、地階のレストランで「特製ハヤシライス」(単品:千六百八十円、スープ・サラダ・飲み物付き:千八百九十円)がいただける。
 艶やかなこげ茶色のソースがかかったハヤシライスが運ばれると、胃袋そそる芳香が辺りに立ち籠める。とろりとしたソースは、酸味、苦味、甘味、うまみすべてにおいてバランスよく丸い味わい。まず甘味を感じ、酸味とうまみを感じ、あとに少し苦味を感じる、ご飯が進むソースでもある。具はほろりと煮込まれた肉と玉葱にマッシュルーム。

御茶ノ水 小川軒
文京区湯島1-9-3
tel.=03-5802-5420
営業時間=[レストラン]11:30〜14:00(L.O.)、17:30〜20:30(L.O.)[カフェ]11:30〜17:00
定休日=日曜日・祝日


煉瓦亭
古きよき贅沢と
庶民の香りが同時に漂うハヤシライス

 ソースポットに入れられた、ほんのり赤みを帯びた茶色のソースは、一瞬カレーのようでもある。
 食べると、フルーツから抽出されたような甘味と酸味を感じ、思わず微笑む。ソースはたくさん入った牛ヒレ肉の薄切りとよくなじみ、ご飯を呼ぶ。また、シャキッと炒められた玉葱のアクセントがいい。古きよき贅沢と庶民の香りが同時に漂う「ハヤシライス」は千五百円。付け合わせは、ラッキョウと福神漬。

煉瓦亭
中央区銀座3-5-16
tel.=03-3561-3882・7258
営業時間=11:15〜15:00(14:15 L.O.)、16:40〜21:00(20:30 L.O.)※土・祝 〜20:45(20:00 L.O.)
定休日=日曜


資生堂パーラー
甘さと酸味が入り交じった
上品な味に懐かしさを感じるソース

 代々愛されてきた「ハヤシライス」三千百五十円。
 まず運ばれるは、段違いの小鉢に薬味が入れられた銀器。ミカン、ラッキョウ、醤油漬玉葱、福神漬がそれぞれの小器に入る。次に運ばれる白い大皿に、給仕人が蓋付きの銀器を開け、うやうやしくご飯を手前に盛り合わせる。そして銀の丸いソースポットに入れられたハヤシソースが置かれる。
 ほんのり赤みを帯びた茶色のソースは、甘さと酸味が先に舌に感じ、上品な中に懐かしさを漂わせている。トマトピューレの酸味、ほのかな苦味がご飯を恋しくさせる。光り輝く上質のご飯に少しずつかけて食べると美味しい。具は、牛ヒレ肉とマッシュルーム。みずみずしいミニサラダが付く。

資生堂パーラー
中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル4F・5F
tel.=03-5537-6241
営業時間=11:30〜21:30
定休日=月曜日(祝日は営業)


2010年03月 ハヤシライス(1)
2010年02月 郷土鍋(2)
2010年01月 郷土鍋(1)
2009年12月 二〇〇九年開店の話題店(2)
2009年11月 二〇〇九年開店の話題店(1)
2009年10月 悠遊カフェ
2009年09月 モダン・インディアン(2)
2009年08月 モダン・インディアン(1)
2009年07月 夏の和菓子
2009年06月 ポークソテー新規店編
2009年05月 ポークソテー老舗編
2009年04月 新東京ラーメン
2009年03月 東京ラーメン
2009年02月 カキフライ
2009年01月 変わりしゃぶしゃぶ
2008年12月 フライの名店
2008年11月 おでん
2008年10月 チーズ系スイーツ
2008年9月 肉割烹
2008年8月 銀座でビール
2008年7月 汁かけご飯・アジア編
2008年6月 汁かけご飯
2008年5月 フレンチトースト
2008年4月 新井薬師
2008年3月 ナポリタン
2008年2月 東京の手土産 クッキー編
2008年1月 タンシチュー
2007年12月 もつ鍋
2007年11月 モンブラン
2007年10月 東京の手土産 マカロン編
2007年9月 冷たいそばとうどん
2007年8月 冷やしラーメン
2007年7月 ドライカレー
2007年6月 カツカレー
2007年5月 バゲット
2007年4月 カウンターフレンチ
2007年3月 カウンターイタリアン(2)
2007年2月 カウンターイタリアン
2007年1月 プリン
2006年12月 パンケーキ
2006年11月 美人女将の和食店
2006年10月 ホテルの和朝食
2006年9月 ホテルの朝食
2006年8月 中国小食堂
2006年7月 築地
2006年6月 ドイツ料理
2006年5月 馬肉料理
2006年4月 焼餃子
2006年3月 水餃子
2006年2月 ビストロ パート2
2006年1月 ビストロ パート1
2005年12月 焼き魚定食
2005年11月 マティーニ
2005年10月 かつ丼
2005年09月 新世代中華
2005年08月 羊肉料理店
2005年07月 野菜がおいしいレストラン2
2005年06月 野菜がおいしいレストラン
2005年05月 和食新形態
2005年04月 ぶた鍋
2005年03月 お米が主役の料理屋さん
2005年02月 味噌ラーメン
2005年01月 鉄火丼
2004年12月 すっぽん
2004年11月 チャーハン
2004年10月 焼きそば

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