味の見聞録

カテゴリ:そば
鴨南蛮
そば
並木藪蕎麦
これを食べないと冬じゃない
老舗蕎麦屋の逸品

 ご存じ、老舗の蕎麦屋。この店の「鴨南蛮」千九百円を食べないと、冬が来た感じがしないというファンは多い。

 運ばれれば、黒に近い、こっくりと濃いつゆに、鴨の脂が浮かんで、てらりと光る。

 分厚い鴨肉を齧れば鴨のエキスが流れ出て、舌を伝わり体の奥底へと向かっていく。この「肉を食らっている」と実感させる鴨肉の厚さがいい。

 今度は、一緒に入れられた鴨の団子を齧る。団子は鉄分に富んで、その野性味が体に火をつける。濃いつゆと鴨肉とのバランスが見事にとれた鴨南蛮といえよう。

 細い蕎麦は、ツルルと唇を震わせ、口の中をしなやかに過ぎていく。合間に、短冊の葱を食べて読点を付け、再び鴨肉を齧る。そんな食べ方が正しい鴨南蛮である。

 また、小さな脂身が一つ入っていて、こいつを「えいっ」と力を入れて噛みしめれば、くにゃりと脂が裂け、のちに溶けて、寒風に冷え切った心身を抱きしめる。

 最後は蕎麦猪口と蕎麦湯をもらい、脂が溶け込んだつゆを少し入れて、蕎麦湯で伸ばして飲む。その瞬間が、またたまらない。

●並木藪蕎麦 

東京都台東区雷門2-11-9 
電話=03(3841)1340
営業時間=11時~19時半(19時LO) 
定休日=木曜日
鴨南蛮
そば
サヴール・ド・ソバ カンセイ
蕎麦とフレンチ風蕎麦前を
ワインと楽しむ蕎麦ビストロ

 フランス料理店「GINZA kansei」の坂田幹靖シェフによる、蕎麦と季節の素材を使った蕎麦前、ワインを楽しむ蕎麦ビストロ。「鴨南蛮」は千五百円。

 まず何より蕎麦がいい。坂田シェフが惚れ込んだという群馬県赤城・深山産の石臼挽き十割細打ち蕎麦は、温められてもしなやかなコシがあり、歯の間でねちっと粘って、ほのかな甘みを感じさせる。

 鴨は、スペイン産のマグレ鴨。噛めば血の味が漂って、鴨肉を食らう醍醐味があり、全体がロゼ色に染まったキュイッソン(加熱)もブレがない。この辺りは、フレンチのエッセンスを感じさせる点である。他の具は、葱の小口切りと三つ葉。

 つゆは鰹節の香り高く、こっくりと醤油味が濃い黒色に近いつゆだが、後味のキレよく、ついつい飲み過ぎてしまう。

 最後は、蕎麦湯と湯呑みをもらい、湯呑みに蕎麦湯とつゆを注いで飲めば、さらに幸せ感が加速する。

 世界各国のワインが広く揃うので、この「鴨南蛮」の「台抜き(蕎麦抜き)」を頼んで、赤ワインの相手にするのもいいだろう。

東京都中央区銀座7-12-1 銀座TYビル1階 
電話=03(6264)3319
営業時間=11時半~20時(19時半LO) 
定休日=日曜日・祝日
鴨南蛮
そば
手打そば 菊谷
毎日石臼挽きして打つ
都内でも屈指の上質の蕎麦

 都内でも屈指の上質の蕎麦を出されるお店。「鴨南蛮」は二千円。

 鴨の薄切りが十枚ほどと鴨団子が二つと、鴨の魅力がたっぷりと込められた鴨南蛮である。鉄分を充分に感じさせる鴨肉と、ふんわりと優しい食感にまとめた団子との組み合わせがいい。交互に食べながら進む楽しさがある。鴨は茨城県にて無農薬の飼料を与えて放し飼いしているチェリバレー種の合鴨で、モモ肉を使用しているという。他の具は、刻み葱と短冊葱に柚子片。

 温められた二八蕎麦は、実にたおやかな食感で、勢いよく手繰れば、蕎麦自体の甘い香りが引き立つ。汁は旨味が深く上品な味わいで、鴨肉の薄さや蕎麦の香り、団子の食感とのバランスが美しくとれている。

 なお、毎日石臼挽きして打つ蕎麦は、数種あり、ぜひ「?き蕎麦」(二種千二百五十円、三種千六百円)も試してほしい。産地、挽き方、つなぎ割合、寝かせなどを変えた、数種の蕎麦を食べ比べるのも一興。

東京都豊島区巣鴨4-14-15 
電話=03(3918)3462
営業時間=11時半~14時半(LO)、17時半~20時(LO) 
定休日=月曜日(祝日と4のつく日は翌日に振替)
鴨南蛮
そば
手打ちそばと酒 蕎ふるやま
滋味が滲み出る厚切り鴨肉と
存在感ある蕎麦

 住宅街でご夫婦で営まれている、手打ち蕎麦と酒のお店。「鴨なんばん」は千五百円。

 見事に一面ロゼ色に火が入れられた厚切りの鴨肉が五枚、短冊葱と刻み葱、三つ葉と柚子片という構成である。

 鴨肉を噛めば滋味がじっとりと滲み出て、その勢いで蕎麦を手繰る。その繰り返しが何とも楽しくなる鴨南蛮である。

 短冊葱は鴨脂で炒められているのだろう。鴨脂を纏い、くったりとして美味しい。

 石臼挽き細切りの外一蕎麦は、ある日は北海道北早生(きたわせ)蕎麦が使われ、温められても充分な存在感があった。

 その他の品書きでは、「せいろ」七百五十円や、「自家製飛龍頭そば」千二百五十円もおすすめ。酒と肴の揃えもいい。

東京都杉並区成田東4-26-12 
電話=03(5378)0233
営業時間=11時半~21時半(LO)  
定休日=水曜日・木曜日(祝日の場合は営業)
※1月30日~3月3日休業
鴨南蛮
そば
築地 鴨料理 鴨亭
ボリューム満点でお値打ち
鴨肉料理専門店の昼定食

 鴨肉料理専門店。「鴨亭南蛮そば」千八十円は、ランチのみで提供される。

 つゆは、鴨鍋のつゆをやや濃くしたような優しい味わい。おそらく鴨の骨や筋などで取られた出汁を甘めに味付けしたものと思われる。鴨のモモ肉は小さく切って入れてあり、通常の鴨南蛮のロース肉とは違う噛みしめる喜びがある。

 鴨と葱の他、三つ葉、蒲鉾、たぬき、月見にたっぷりの麺と、ボリュームがあるうえ、ご飯に玉子焼き、サラダまで付いてこの値段ゆえに、お値打ち感がある。

東京都中央区築地4-2-11 新橋演舞場別館1階 
電話=03(6264)0504
営業時間=11時半~14時(LO)、18時~22時(LO)
※土曜は夜のみ営業 17時~21時(LO)  
定休日=日曜日・祝日
二〇一五年話題の店
そば
由庵(ゆあん) 矢もり
穀物の持つ香りと味が滲み出た
素晴らしい蕎麦と肴と酒

 もんじゃ屋がひしめく月島の裏路地で、ひっそりと営む蕎麦屋である。

 ご主人の矢守昭久さんが、昨年十月に開店したこの店は、二階建ての民家を改装し、一階が六席のカウンター、二階が掘り炬燵式テーブル席の個室(四名まで)となっている。
料理は、六千四百八十円のコースのみ。

 まずは、三点盛りの突き出しから始まる。蕎麦味噌と生姜酢漬け、青梅である。これらで酒をちびちびやっていると、「冷やかけ」が出される。

 冷たいつゆを張った冷やかけに、昆布出汁のジュレ、トマトとオクラを叩いたものである。つるると手繰れば、蕎麦出汁のうま味に絡まった蕎麦が、トマトの酸味やオクラの粘り、昆布出汁の滋味と出合って、それぞれに口内で味が変化していく楽しみがある。

 続いて、三つの小鉢に入れられた酒肴。桜海老おから、ワケギと青柳のぬた和え、鶏団子とツルムラサキの胡麻浸しである。

 桜海老の塩気とうま味を抱いたおからは酒を恋しくし、絶妙な甘辛さで和えたぬたもこれまた燗酒を呼び、鶏団子の優しさとツルムラサキのヌルッとした食感の取り合わせが妙で、さらに酒が進む。

 この頃、矢守さんは、石臼に苗色の種を置いてゆっくりと回し始める。脇からは次第に薄緑色の粉が挽かれて落ちていく。その粉をボールに取り、水を入れて、渾身の力で棒を回し始める。やがて粉が固まると、染付の小鉢に入れて、蓋を閉める。

 「蕎麦がき」である。蓋を半分開けて香りを嗅げば、だだ茶豆のような甘い香りがする。塩とわさびが用意されるが、何もつけずにそのままで食べたい純真さがある。そして、ほのかに緑色が差した薄灰色のその蕎麦がきを口に入れれば、噛むまでもなく、かすかな甘さだけを残して淡雪のように消えていく。

 その余韻に浸っていると、次に出されたのが「鰊の煮物」である。添えられるのは、自家製蒟蒻、茄子と南瓜、オクラの炊き合わせ。素朴な鰊のうま味に心温められる。
続いて、穴子の濃い滋味が滲んだ「穴子の煮こごり」。わさびをつけりゃ、また酒が進んで困る。

 次は「蕎麦サラダ」。食べやすい長さに切った細切り蕎麦に水菜や鶏肉の細切りを合わせ、蕎麦茶と胡麻だれをかけたサラダで、胡麻の甘い香りと蕎麦が実によく合う。

 いよいよ真打、蕎麦の登場。まずは、アサリ、ワカメ、茗荷、三つ葉の温かい蕎麦。食べれば、蕎麦の甘みに、アサリの滋味と、ワカメや茗荷の香りが重なっていく。つゆは塩梅が良く、優しい味わい。

 そして最後は、せいろ。穀物の野生を意識させる香りと清々しさがあって、素朴な甘みが滲み出る。ねっちりと歯を押し返すようなコシ。素晴らしい蕎麦である。

 ご主人はとても気さくで、飄々と仕事をされているが、話しかければ、さまざまな愉快な蕎麦の話などをして場を盛り上げてくれる。

 日本酒は「三千盛(みちさかり)」(岐阜)、「扶桑鶴(ふそうづる)」(島根)、「伯楽星(はくらくせい)」(宮城)、「萩の鶴」(宮城)、「天遊琳」(三重)などが揃う。

東京都中央区月島3-9-7 
電話=03(6225)0633
営業時間=18時~22時(最終入店19時半)
定休日=日曜日・祝日 
※ 完全予約制。カード不可。
そば割烹
そば
みや野
酒が進む見事な料理と甘みと力強さ、香りに満ちたそば

古民家風の趣のある店内には、夜な夜なご主人の宮野晋さんが作る料理に魅せられた人たちが集う。

ある日のコース(七千三百五十円)は、妖艶な味わいの「酔っ払い香箱蟹」に始まり、海の野味と呼びたい逞しき味わいの「メジナの焼き霜作り」。脂が上品に乗った甘鯛を使った「かぶら蒸し」、青海苔がけのなまめかしい「〆サバ」へと続く。

もうこれだけで各種揃えられた銘酒の数々が空くが、畳み掛けるように、命を噛みしめる旨さに唸る「白子の生刺し」、春の近づきに心和む「えんどう豆の葛寄せ」と続き、さらに、日本酒の次に赤ワインを所望したくなる猛々しい味わいの「鴨の燻製」に「そばがき」。このそばがきは空気がふんだんに含まれ、噛むと香りだけを残し、淡雪のように消えていくそばのムースだ。これを、一緒に出される「オリーブ油と天日塩」「たまり醤油と柚子胡椒」でいただく。

そして、そば。第一陣の「自家製唐墨とわさび菜のフェットチーネ風幅広麺のそば」は、オリーブ油と塩で。二陣は極細の「せいろ」。いずれも穀物としての甘みと力強さ、草のような香りに満ちた素晴らしいそばだ。

東京都杉並区阿佐谷南一の三十五の二十三
電話=03(3315)0535
営業時間=希望予約時間(完全予約制)
定休日=定休日なし
そば割烹
そば
流石 はなれ
てらいのない料理の流れが
心地よい、そば懐石

住宅街にひっそりと佇む、そば懐石の店。カウンターのみで、目の前には石臼が三台、ご主人一人で作り接客する。六千三百円のコースのみ。

ある日のコースは、「突出し」がそば味噌、「お凌ぎ」は釜揚げそばが小椀で出される。熱々のそばはむちむちとした食感で小気味よい。次の「盛り込み」は、桜海老のおから、玉子焼き、芋がら、梅ジャコの構成。

続く「そばがき」は、ほんのり緑がかった薄灰色の色合いが美しい。挽き立てで作られたそれを沖縄の塩で食べれば、ナッツ香に似た甘い香りが口腔いっぱいに広がる。

「松前漬け」の後に、惣菜三皿。柚子皮を大根で巻いて干して甘酢に漬けた「柚子巻き」と、「鴨のじぶ煮」「油揚げと青菜の煮びたし」。自然なてらいのない料理の流れが心地よい。次は、鶏ササミ、しめじ、春菊、人参、芹、大根とそばによる「そばサラダ」。そばと共に食べると、不思議と野菜の甘みが生きてくる。

そして、そば。お客の数だけ目の前で挽き、こね、のし、打つ。第一陣は「花巻そば」。海苔の香り、甘みと、そばの甘みが溶け合う。つゆは旨味が強すぎず、穏やかな気分になる。二陣は「せいろ」。野趣を感じる香り、胸を開くような清々しさ、穀物を感じさせる素朴な甘み、ねちっと歯を押し返すコシが素晴らしい。そば湯も香り高く、幸福の気分を高めてくれるは必至。

東京都中央区湊三の十三の十五
電話=03(6228)3870
営業時間=18時〜(できれば予約は前日までに)
定休日=日曜日・祝日
そば割烹
そば
有いち
吟味した質の高い季節の素材に
きちんと仕事がなされた心憎い皿

吟味した季節の食材を心憎い皿に仕立てた、酒飲みにはたまらない一品多し。コースでもアラカルトでも気軽に楽しめる。

ある日の八千四百円のコースは、心を落ち着かせ、喉を開き、胃袋を目覚めさせる「湯葉汁」から始まり、「白子豆腐」「知多半島の天然トラフグ刺身」と続き、酒のペースが次第に上がる。「お造り」は、〆サバ、ヒラメ、巻海老で、いずれも上質。

そして、真骨頂の「盛り込み」だ。岩海苔とサザエの肝和え、雲丹、こごみ胡桃和え、赤貝と山独活と三つ葉のぬた、墨イカの唐墨焼き、帆立入り出汁巻き玉子、紅白ナマス、鯖寿司、蕗と才巻海老と筍の炊き合わせ、子持ち昆布、きんかん。どれも素材の質が素晴らしく高く、仕事がきちんとなされていて、「お客様に少しでも非日常を味わってほしい」という思いがこの盛り込み料理に込められている。

次に、「飛龍頭椀」「真魚鰹西京焼き」「ほうれん草としめじのおひたし」「冬野菜と鴨肉のココット焼き白味噌風味」と続き、自家挽き手打ちそばの「ひやかけそば辛味大根添え」で締める。そばの清々しい香りに喉が喜びながら、充足したひと時を終える。

東京都杉並区上荻一の六の十
電話=03(3392)4578
営業時間=17時半〜23時
定休日=日曜日(月曜日が祝日の場合は休み)
そば割烹
そば
大庵
洋風肴から季節の変わりそば、
酒類まで豊富に揃う充実メニュー

新宿でそばと酒を楽しむなら、俄然おすすめ。人気店で連夜盛況。できれば要予約。

まずは、「季節の盛り合わせ」から頼んではいかがか。ある日のそれは、素朴な味わいのそばがき蓮根やたたき牛蒡、ニシン甘辛煮、胡桃味噌、鶏のたたき、大学芋など。豊富に用意された日本酒や焼酎、ワインで、とっくりと楽しむことができる。

また「勘八」千三百六十五円をはじめ、お造り類も十分に吟味していることを感じさせる質の高さで、たっぷりと盛られる。「焼き筍」八百四十円は、かえしに一晩浸けて、その甘辛味と香ばしさが加わり、一層酒が進むこと必至。

「そばがき」「出汁巻き玉子」といったそば屋の定番肴から、炭火焼きや揚げ物、さらに「京都丹波産 鴨ロースのカルパッチョ」八百四十円や「そば粉の自家製ニョッキ(しそバター風味)」七百三十五円といった洋風肴まで幅広く楽しめる。

百パーセント国産の玄そばを石臼で粗挽き自家製粉したそばは、細打ちでエッジの立った「せいろ」七百八十八円と、太打ちで挽きぐるみ(全層粉)の「田舎せいろ」八百九十三円とあり、いずれも穀物のねちっとしたコシがあり、甘みがにじみ出る。おかわりは二百円安くなるので、ぜひ両方試されたい。季節の変わりそば「バジル切り」九百四十五円や「はまぐりそば」千五十円など、その他のそばも魅力的。

東京都新宿区新宿三の三十六の六 大安ビル二階
電話=03(3352)5113
営業時間=11時半〜14時半(土・日・祝 12時〜15時)、17時〜23時半(日・祝 16時半〜22時半)
定休日=年中無休(月曜の昼のみ休み)
そば屋
そば
菊谷
酒飲みのツボを押さえた肴
毎日石臼挽きする手打ちそば

清潔感に富む白木を配した店内は、新店ながらしっとりとした空気感が漂う。

まずは「お任せ酒肴盛り」六百円を。ある日のそれは、鯖の燻製、わさび漬け、切り干し大根の沢庵の煎り煮、九十二歳になられるというおばあちゃんの糠漬け、きんぴらごぼう、鶏肝の生姜煮。どれもしみじみとした旨さがある。

おすすめは、野菜料理を得意とする料理長の皿。ある日の「野菜料理盛り合わせ」は、大根と金時人参のなます、玉葱と椎茸酢漬け、雪下蕪酢漬け、八つ頭のきぬかつぎ、わかさぎ南蛮漬け、自然薯むかご、蓮根きんぴら、芹入り出汁巻玉子など、いずれも土の香りと温かみが伝わる料理の数々。その他、味が染みた大根に顔がほころぶ「鴨のかえし煮」、「シシャモの炙り浸し」など、酒飲みのツボを押さえた肴が並ぶ。

毎日石臼挽きする粉で打たれるそばは、数種あるが、ぜひ「利きそば」(二種:千百五十円、三種:千五百円)を試されたい。産地、挽き方、つなぎ割合を変えた数種のそばが食べられる。例えば、甘い香りが鼻に抜ける「新潟産二八そば」、清々しい香りが胸に広がる「秩父産十割そば」、打ってから三日間寝かせ、穀物感のある野趣に富む香り漂う「福井産十割そば」といった具合。そば好きにたまらぬ品書きである。

酒は、「四季桜」「春霞」「菊姫」など、三十以上の銘柄が用意されている。

東京都豊島区巣鴨四の十四の十五
電話=03(3918)3462
営業時間=11時半〜21時(20時半L.O.)
定休日=火曜(4の付く日と祝日の場合は翌週の月曜)
そば屋
そば
蕎麦切り 酒 大愚
「媛っこ地鶏」を使った料理
清涼感と野趣が同居した見事なそば

カウンター七席。昼はそば屋、夜は酒を飲まない人は入店不可の、酒とそばの店。

「そばがき」「焼きそば味噌」といったそば屋の肴もいいが、おすすめは、日本初の四元交配の「媛っこ地鶏」を使った料理の数々。特に厨房に設えられた炭床で焼く鶏や野菜がおいしい。「媛っこ地鶏と千住葱の塩焼き」九百八十円は、鶏モモ肉の逞しい旨みと葱の甘みを存分に味わえる。温泉玉子に浸けて食べる「つくねの温泉玉子添え」六百八十円は、つくねの優しい味わいと玉子の甘みとの出合いがいい。その他、野菜の凝縮した味が素晴らしい「季節の野菜焼き」(五百円〜)、山椒の風味に酒が進む「鶏モツの有馬煮」五百円、湯引きした鶏皮と野菜を土佐酢で和えた「鶏皮ザク」五百円など、酒が恋しくなる肴が揃う。

毎日挽く粉で打つそばは、丸抜き(脱皮)から挽く細打ちの「せいろ」と、玄そばから挽く太打ちの「田舎」の二種類。いずれも八百四十円。モチッと歯を押し返すようなコシと、スッと鼻に抜ける草のような香り、噛み込むと滲み出る甘み。清涼感と野趣が同居した、見事なそばだ。

酒は「宗玄」「諏訪泉」「風の森」「鶴齢」「悦凱陣」など。燗付の具合も抜群。

東京都港区西新橋一の十九の十
電話=03(3597)0359
営業時間=11時〜14時、18時〜22時半(21時半L.O.)
定休日=土曜・日曜・祝日(昼は月・水・金のみ営業)
そば屋
そば
玉笑
閑静な住宅街にひっそりと佇む
隠れ家的そば酒屋

分厚い一枚板のカウンター、無垢材のテーブルと椅子、土壁。凛と引き締まった、そばをいただくにふさわしい空間が広がる。

肴はまず「豆腐」六百三十円からいかがか。ある日は青大豆の豆腐と自家製湯葉をのせた皿で、甘い豆の香りがふわりと広がり、心が緩む。「玉子焼き」七百三十五円は、塩が舌に当たらない上品な仕上がりで、出汁の香りが素晴らしい。「そばがき」千六百八十円は、数回噛んだだけで、野趣の香りをほんのり漂わせながら消えてゆく。その他おすすめは、しみじみ旨い西京味噌漬けの「海老の味噌漬け焼き」千五十円、ホロリと崩れゆく「つまみ鰊」千五十円。

細打ちの「粗挽きせいろ」千五十円は香りが見事。一瞬歯を押し返すようなコシから、野味のあるほろ苦さと甘さが入り混じった香りが鼻に抜け、そば本来の甘みがじわりと出る。さらに面白いのが「熱もりせいろ」千五十円。やや太めに打たれ、蒸した熱いそばを、そばつゆ+溶き玉子に浸けて食べる。立ち上る香り強く、そばの穀物としての優しさと甘みを実感する。

お酒は、「菊姫」「鄙願」「六友」など。

東京都渋谷区神宮前五の二十三の三
電話=03(5485)0025
営業時間=[平日]11時半〜15時半(15時L.O.)、17時半〜21時半(21時L.O.)[土]11時半〜20時(19時半L.O.)[日]11時半〜17時(16時半L.O.)
定休日=月曜(祝日の場合は翌火曜/都合により定休日以外も休む場合があるので事前にご確認を)
そば屋
そば
猛烈に燗酒が恋しくなる肴
おすすめは珍しい「重ねせいろ」

藍色の暖簾を潜れば、弁柄色の木戸。小体で静謐な空間が広がる。

酒は、小さいグラスに三種類の純米酒が注がれた「参酒」八百円から始めてはいかがだろう。ある日は、「開運」「鶴齢」「宗玄」のにごり。その後燗酒を頼めば、「味の違いをお試し下さい」と、おちょこ一杯の冷や酒が出される。酒好きにはたまらぬ趣向だ。

肴もツボを突く。細長い板に付けて焼かれた「焼き味噌」四百九十円や、豆腐味噌漬け「悠久豆腐」四百八十円は、猛烈に燗酒が恋しくなり、そば汁を含んだ「玉子焼き」七百八十円は、甘さと出汁が程よくきいて心が落ち着く。葱の甘さと肝やかえしの味が絡んだ烏賊による「千住葱とかえし漬け烏賊の肝焼き」六百八十円もおすすめ。

そばは、珍しい「もり」と「温もり」の二枚仕立ての「重ねせいろ」千四百円はいかがか。まずは、なんとも優しい甘みを忍ばせる極細打ちの「もり」の草のような香り、モチッと歯を押し返すコシ、凛と引き締まったつゆを楽しむ。次に「温もり」のふわりと広がる甘み、噛み込むに従って滲み出る穀物の旨みを楽しむ。薬味はおろしのみ。そば湯時に葱が出されるのもいい。

東京都小平市美園町二の九の七
電話=042(344)7732
営業時間= 12時〜14時半、18時〜21時(土・日・祝の昼は 11時半〜15時)
定休日=月曜不定休
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