味の見聞録

カテゴリ:中国料理
話題の新店
中国料理
ファイヤーホール4000
他にはない良質のスープと
多彩な具材による四川火鍋

 渋谷「スーツァンレストラン陳」の総料理長だった菰田欣也氏が開店。昼は、四川伝統の燃える和えそば「宜賓燃麺」をはじめとする麺専門店、夜は四川火鍋専門店として営業。都内に火鍋専門店は多くあるが、スープの質が他とは格段の差。具材も極めて質が高く新鮮で、バラエティに富む。

 二種のスープの一つ、三年間かけて生み出したという麻辣豆板醤スープは、自家製発酵豆板醤をベースに、四川の香辛料(豆板醤、豆?醤、唐辛子、山椒など)を合わせて作られる。辛さに深みがあり、食べるにしたがって虜になるは必定。牛脂は使わずに油は少量のため、胃にもたれない。

 もう一種の肉骨茶(バクテー)スープは、シンガポール四川飯店より逆輸入した肉骨茶をベースに、中国の営養薬膳師の資格を持つ菰田氏が生薬(当帰(とうき)、川?(せんきゅう)、党参(とうじん)、熟地黄(じゅくじおう)など)を配合した、体をいたわるスープ。昆布鰹節出汁と鶏がらスープを混ぜ合わせ、大根、豚肉、ニンニクを入れて一時間沸かしてから、生薬を入れて一時間炊き、味付けしたものである。体の隅々まで染み渡る滋味に満ちている。

 具材の中心は、毎日群馬の農場から直送される「プレミアム加藤ポーク」の肩ロース肉、背ロース肉、バラ肉、肩肉、モモ肉に、内臓類。特に内臓類が素晴らしい。また、各地農家から届く力強い野菜やキノコ類の他、値段によって、松茸や牛肉やフカヒレなどの用意もある。締めは中華麺か雑炊で。火鍋はコースで三千五百円~一万円。

 火鍋の他に、新鮮な豚レバーを使った「もやしレバ炒め」、皮と餡のバランスが絶妙な「焼き餃子」もおすすめ。

東京都品川区東五反田1-25-19 
電話=03(6450)3384
営業時間=11時半~14時15分(L.O.)、17時半~21時半(L.O.)  
定休日=月曜日
札幌の美味(2)
中国料理
茶月斎
札幌に現れた中国料理の星
気品のある深い味わいの数々

長らく中国料理不毛の地であった札幌に現れた星である。小蕎隆広シェフの手による、地元の食材を活かした、見事な料理の数々がいただける。

 例えば、「千歳の黄芯白菜と干貝柱のスープ」は、一口飲んでため息が漏れ、二口飲んで笑い出す。甘みと微かなえぐみ、甘い香りなど、白菜の持つすべてを余すことなく抽出したスープが、舌を過ぎ、喉に落ち、細胞に染み渡っていく。干貝柱のうま味をギリギリに押さえた精妙な味付けが、白菜を活かし、淡さの中に品格を生み出している。料理がなされているのだが、人間の意図を感じさせない澄んだ味わいがあって、飲むほどに白菜への愛が伝わる。

 また、「貝づくしの前菜」は、ホンビノス貝の老酒漬け、厚岸(あっけし)産牡蠣のオイル漬け、ムール貝の酒蒸し、トリ貝とホッキの合間のようなミゾ貝とつる菜の和え物、ホタテとトウキビの春巻など、貝の質を活かした味わいが唸らせる。特に春巻が素晴らしく、半生に火を通したホタテとトウキビの甘みが、なんと合うのだろう。

「アブラガレイとカリフラワーの金沙炒め」は、奥底にたくましい滋味を持つカレイと、甘い甘い蒸しカリフラワーの取り合わせがなんとも良く、そこへココナッツやカレーの香りを含んだ金沙パウダーが加わりアクセントとなっている。

「根室産ヤナギダコとルッコラのマスタードオイルサラダ」は、ルッコラとマスタードの刺激の中で、マダコより柔らかい食感のヤナギダコの甘みを光らせている。

「鶏肉とタラバガニの外子の蒸し餃子」は、鶏肉にすり込んだ外子の風味が、喉に落ちる時にふうっと顔を出す。

「厚岸産ムール貝のビーフン」は、ムール貝のミルキーな滋味がビーフンに絡んで、なんとも優しい気分にさせてくれる。

「ラムと甘唐辛子、新玉葱の炒め」は、野菜に囲まれながら、ラムのラムたる味わいがくっきりと浮き彫りにされていて、しみじみとうまい。

 その他、「叉焼とインゲン」、山椒油で風味を付けた「安徽(あんき)省ポテトサラダ」もおすすめである。

 どの皿も、余分なうま味がなく、淡く、優しく、簡潔でいて、しみじみとした味の深さがある。食材への深い信頼と敬意が生んだ料理には、気品があり、思いやりがあり、健やかに我々の体を上気させる。

「何で調味しているのですか?」と小蕎シェフに聞くと、「水と醤油だけです。何もしていません。以前はスープを使っていたのですが、それでは味がぼけると思いまして」と、さらりと言う。

 水と醤油だけで味を決めるのは、相当の胆力だろう。彼に愛された道産の食材たちは幸せ者だ。

北海道札幌市中央区南三条西8丁目7番 大洋ビル2階 
電話=011(272)4202
営業時間=12時~14時(LO)、18時~21時(LO) 
定休日=日曜日(その他不定休)
※月・金のランチ休み
話題の新店 中国料理編
中国料理
蓮香(レンシャン)
美味しさに心打たれる
中国西南地方の料理

 麻布十番「ナポレオン・フィッシュ」で料理長を務められていた小山内(おさない)耕也(こうや)氏が独立して開店。前店は、貴州省の料理が中心だったが、今回は西南地方を主軸としたより少数民族の料理を出していく。基本はコースで、七千円から。

 ある日の前菜は、「豆もやし、ミントの西双版納(シーサンパンナ)サラダ」「虎手菌(キノコ)と押し豆腐の香り和え」「チベット式パクチーサラダ」の盛り合わせ。続いて、四川省自貢市名物「鉢鉢鶏」。辛いソースに浸かった鶏肉料理である。山椒の利かせ方がよく、複雑ながらバランスのいい味が実に見事。

「空心菜尼西辛子炒め」では、水分を保ったまま炒められた空心菜と唐辛子が共演する。「黄金幸菜と海老の台湾エシャロットソース」は、黄金幸菜と海老を、八角・ニッキ・陳皮・エシャロットを漬けて味噌にしたもので炒めた料理。

「雲南式回鍋肉塩辛納豆えだ椰子入り」 は、塩辛納豆の練れた塩気が豚肉を生かし、マコモダケのような食感のえだ椰子がアクセントになっている。噛んだ瞬間に香りが爆ぜる「ポルチーニ入り春巻」。臭みはほとんどなく、噛むほどに旨い「ヤクのナシ族スタイル・ヒレとロース」。稚鮎の香りと茄子の甘み、唐辛子の甘い香りが交錯する「稚鮎と茄子の山盛り唐辛子炒め」。

「ふぐの白子生唐辛子醤油」は、白子の甘さと、生青唐辛子を漬け込んだ醤油の辛味と旨味、ピーマンの香りと青々しさが絶妙に抱き合う。「牛肉の新生姜 ピクルス炒め」は、すき焼き風の甘辛い味付けで、新生姜の淡い辛味と香菜の香りが牛肉の旨味を持ち上げる。
締めは、「香格里拉(シャングリラ) 松茸煮込み麺」。茸の香りが満載の麺料理である。

「ニラの花 塩漬け炒飯」は、 辛くシャープな味付けのご飯が美味しいこと。

 いずれも馴染みはないが、美味しさに心打たれる料理である。各種揃った紹興酒とヴァンナチュールは、すべて二千九百円。

東京都港区白金4-1-7 
電話=03(5422)7373
営業時間=18時半~21時(LO) 
定休日=不定休
話題の新店 中国料理編
中国料理
Matsushima
マニアックな
少数民族の郷土料理

「黒猫夜(くろねこよる)」の料理長だった松島由隆(ゆたか)さんが独立して開いた店。黒板に書かれたメニューには、ミャオ族、チワン族、プイ族など、マニアックな少数民族の料理が並ぶ。

 お通しは、鹹蛋(シェンタン)を衣に混ぜて揚げた「トウモロコシの塩卵絡め揚げ」、青海苔の香りがいい「吉野川の青海苔をまぶしたピーナッツ」「豆腐干(とうふかん)と水菜の和えもの」。

 鶏をレモン・ライム・ミントを利かせた漬け汁でマリネし、煎り唐辛子を和えて加熱した「鶏もも肉広西チワン族仕立て」。

「空芯菜とイカのニンニク醤油炒め」は醤油味の塩梅がよく、イカの甘みを生かしている。「羊腰(ひつじまめ)の広東味噌炒め」は、麺?醤・海鮮醤・柱候醤・八角などによる漬け汁に一日漬け込んだ羊の腎臓を、豆板醤で炒めた料理。辛さの奥にある三種の醤醤の複雑な旨味と辛味のバランスが素晴らしい。

「仔羊胸腺肉卵焼き」は、雪菜を入れた胸腺肉の中華風オムレツ。卵と胸腺肉それぞれの甘みと食感が見事に出会った料理である。「ミャオ族血餅の腸詰揚げ」は、鹿の血ともち米で作られた中国風ブーダン・ノワール。癖はなく、ほのかに甘く香ばしい。ジャーキーの塩気に岩塩・唐辛子・胡麻・山椒などの強烈な香りが花開く「プイ族のビーフジャーキーとじゃがいもの炒め」はお酒が進んで困る一品。

 そして、一番のお勧めは「西安すいとん」。乾燥したパンのようなものをちぎって小鍋に入れ、羊肉や、トマト・酸菜などの野菜が入った、羊の香りと酸味の利いたスープを注いで食べる西安名物料理である。みんなでちぎって入れるのが楽しく、また、その乾燥パン状のものがスープを吸ってすいとん状になるのが面白い。

 各皿九百円から千五百円前後。珍しい紹興酒も数多くの揃えがある。

東京都渋谷区上原1-35-6 第十六菊地ビル地下1階 
電話=03(7416)8059
営業時間=18時~23時(LO) 
※日・祝 17時~22時(LO) 
定休日=水曜日
話題の新店 中国料理編
中国料理
Mimosa(ミモザ)
毎日食べたくなるような
優しい味の上海家庭料理

 新宿の名店「CHEF’S(シェフス)」の料理長だった南俊郎さんが独立して開店。新ビルの二階にある店は、外からの陽光が入って心地よい。「CHEF’S」時代の料理は「クラゲの前菜」と「トマト卵炒め」のみで、あとは南さんが惚れ込んだ上海家庭料理が並ぶ。

 前菜では、燻製香がいい「スモーキーピータン豆腐」千四百円、サクサクのパイの中に、大根の甘みと金華ハムの旨味が詰まった「金華ハム包み揚げ」千五百円、車海老がとろんと舌に甘えてくる「活き車海老酔っ払い」八尾二千七百円がお勧め。

 野菜料理では、レタスの甘みを四川漬物芽菜(ヤーツァイ)の練れた塩気が持ち上げる「ロメインレタスと芽菜の炒め」千四百円。海鮮料理で特に勧めたいのが、甘鯛の旨味が滲み出たスープに、細切りの豆腐干を入れた「干甘鯛のスープと豆腐干」二千八百円。カラリと香ばしく、上海風に甘辛く炒めた「大海老の素揚げ炒め」四尾四千二百円もいい。

 肉料理では、梅干しの酸味が絶妙に利いて豚肉をより甘くさせる「中国干し梅入り酢豚」二千六百円と、煮汁に入れられた豚脂・リンゴ・氷砂糖の三種の異なる甘みが交差して、ご飯が猛烈に恋しくなる「上海式紅焼肉 豚の角煮」二千九百円をぜひ。

 締めは、カリカリに焼いた麺を、八角の甘い香りのする醤油ソースに絡めて食べる焼きそば「アニスソースのパリパリ麺」千八百円、真っ黒い醤油色の濃い味わいなのに食味が丸い「葱油拉麺」千六百円をお勧めする。

 南さんの料理は優しく、家庭料理ならではの毎日食べたくなる真髄がある。冬には上海蟹も出す予定で、点心や粽も始めるという。ワインの揃えもよく、ソムリエールに相談して飲み進むのもいいだろう。

東京都港区南青山3-10-40 フィオラ南青山ビル2階 
電話=03(6804)6885
営業時間=18時~23時(LO)  
定休日=日曜日・祝日
ネオチャイニーズ
中国料理
虞妃
値段は手頃で、味は本格
何度も通いたくなる四川料理店

 昨年暮れ、代々木上原商店街の路地に開店した中華ダイニング。十数人は座れるカウンター席と、その奥に四席のテーブル席がある。料理長とサービス兼料理助手の男性二人だけで営む小体な店である。

 「虞妃」は、古代中国の武将・項羽の愛人とされる、紀元前二〇〇年頃に実在した美人妃。そんな歴史上の人物を店名にしている点もユニークである。

 料理長の佐藤剛氏は、一九八三年生まれ。四川に留学経験があり、東京都内の有名四川料理店で働いていた経験を持つ。そのため、店で出す料理は四川料理が中心だが、三十代ならではのしなやかな感性で、個性的な料理も用意されている。

 前菜ならまず、「大山(だいせん)地鶏のよだれ鶏」千六百円がいいだろう。口水鶏(コウシュイジー)=よだれ鶏は、おいしさのあまりよだれが止まらないところから命名された四川の名物料理で、茹でた鶏モモ肉に、ごま油、辣油、唐辛子、黒酢、砂糖などを混ぜたタレをかけ、香菜やナッツなどを散らした皿である。甘辛さと油のコクが鶏を持ち上げるが、ややもするとしつこくなってしまう。しかし、佐藤料理長が作るそれは、油を多用しているにもかかわらず、油っぽさがなく、味のバランスがすっきりとして、後味がいい。茹で鶏肉もしっとりと仕上がっており、味わいがきれいである。この一品だけでも料理長の腕を窺い知ることができる。

 「牛頬肉の燻製」千四百円は、燻製香を利かせたコラーゲンに富む頬肉が実に旨い。
「豚ガツのピリ辛和え」千二百円は、ガツや葱、セロリの切り揃え方、ガツの茹で方、味付けの調和の良さなど、下ごしらえの確かさが光っている。ガツの下に敷かれたレモンの酸味と香りが効果的で、しみじみとおいしい。

 季節には「鮎の春巻き」(二匹で千円)も、ぜひ。ササゲの泡菜(漬け物)と大葉を一緒に挟んで揚げ、その青々しい香りと鮎との相性を楽しむ。なにより春巻きの巻き方が素晴らしく、緩く、しかしきっちりと巻かれているため、サクッと軽く皮が弾けて、春巻きという料理本来のおいしさがある。

 主菜では、ぜひ「仔羊の麻辣豆腐」千六百円を。四川省の豆板醤の名産地であるピーシェンの豆板醤を使用。そのなかでも、おそらく寝かせ方が長いものなのだろう、入手が難しい黒い豆板醤を使っていて、その深いコクが舌を唸らせる、ほかにはない麻婆豆腐である。豆腐は熱々、ソースと豆腐の濃度のバランスもよく、油のキレもいい。豆?も使うが、一旦、醤油や紹興酒、辛味を加えて炒めてあるため、いわゆる豆?臭さや塩辛さはまったくない。

 仔羊が苦手な向きは、同じ豆板醤と、牛挽き肉と葉ニンニクを使った、店の人気メニュー「特製麻婆豆腐~土鍋仕立て」千八百円をおすすめする。

 腐乳で炒めた「えん菜の炒め」千二百円も火の通しが精妙。そのほか、「穴子と万願寺唐辛子の甘辛炒め」千四百円や、「牛タンの色々茸入りトリュフソースがけ」千六百円といった面白いメニューもある。

 二千円を超える料理はほとんどなく、値段は手頃なのに味は本格、しかもカジュアルな雰囲気で、何度でも通いたくなる店である。近隣に住む人が羨ましい。

東京都渋谷区上原1-17-14 LAビル1階 
電話=03(6407)0217
営業時間=11時半~14時(L.O.)、17時~22時(L.O.)
定休日=水曜日
※表記の価格はすべて税別。
ネオチャイニーズ
中国料理
DAINI’S table
フレンチの料理人による
モダンな新中華料理

 中華料理店といえば、大皿料理と回る円形テーブルが当たり前だった時代に、従来とはまったく違う内装とサービスで、〝モダンチャイニーズ〟という新潮流を生み出した「DAINI’S table」。ファッションデザイナーや芸能人など、数多くの著名人にも支持されてきた当店が、創業三十五周年を迎えた今年、新たな挑戦に臨んだ。フレンチの梶間稔シェフを迎え、フランス料理と中華料理を融合した〝新中華料理〟の提供をスタートしたのである。

 ある晩夏の日の一万円のコースをご紹介。

 アミューズに「リンゴ飴に見立てたトマト飴」。ミニトマトに飴がけした可愛い皿は、甘みの中から酸味と塩味が飛び出して、食欲を刺激する。

 前菜は「皮蛋(ピータン)豆腐」。砕いた豆腐の上に、ザーサイと混ぜた皮蛋の黄身をのせ、さらに細かくした白身をピュレ状にしてかぶせた、〝エレガントな皮蛋豆腐〟である。

 続いて「鮪のミキュイ 胡瓜の甘酢 クラゲのルイユ シェリー酒と醤油に漬けた卵黄の盛り合わせ」。表面だけをサッと炙った鮪の細長い造りの両側に、クラゲと胡瓜の食感をアクセントとして添えた料理である。シェリーの香りがほんのりと漂う卵黄につけて食べると、鮪のうま味が膨らむ。

 四皿目は「焼きフカヒレのコンソメスープがけ」。以前から、厳選した質の高いフカヒレを出す店として知られていたが、上湯(シャンタン)でなくコンソメにした点が面白い。きれいに取られたコンソメの深く丸みのある滋味が、フカヒレと馴染む。

 魚料理は「辛くない海老のチリソース」。アメリケーヌソースの方法で、甲殻類のうま味をたっぷり溶け込ませたソースをほんのりと辛く仕立て、魅了させる。

 肉料理は「木の実をまとった牛フィレ 朝天唐辛子の香り」。なにより、木の実の甘い香りに包まれた牛肉の味わいが、心をくすぐる。そこへ四川の朝天唐辛子の刺激的な香りが加わって、食欲を煽る。

 ご飯は「トリュフと卵の炒飯」。微塵に切ったトリュフがご飯の一粒一粒に絡み、妖艶な香りを放つ炒飯である。クセになるは間違いなし。

 デザートは、生のスイカの清涼感とチーズのコク、甘酸っぱいルバーブソースが共鳴しあう皿で、中華料理にはない食後の夢見心地を運んでくれて、素晴らしい。

 いずれもフランス料理のエッセンスを巧みに生かし、ダイナミックな中華料理に色香を付け加え、ますます瀟洒な内装に似合うエレガントな料理になったといえよう。ワインと共に食せば、他店にはない時間を与えてくれるだろう。

東京都港区南青山6-3-14 サントロペ南青山ビル地下1階 
電話=03(3407)0363
営業時間=11時半~14時半(L.O.)、17時半~22時(L.O.)
定休日=日曜日
※サービス料・税別。
中国の鍋
中国料理
赤坂璃宮銀座店
多彩な具材と味わい深いスープ
高級火鍋「漢方酔鶏鍋(コンフォチョイカイウォー)」

 「火鍋」は、東京でもさまざまな店があり、デトックス効果があるとして女性にも人気の鍋である。多くの店では、毛湯(モウトン)という白濁スープと真っ赤な辛いスープの二種のスープが用意されるが、今回ご紹介するのは、より高級な火鍋「漢方酔鶏鍋」。

 何より、そのスープが素晴らしい。金華ハムや鶏などでとった、上湯(ショントン)と呼ばれる中国料理の一番出汁に、各種漢方、鶏肉の紹興酒漬け「酔鶏」を入れて、さらに深い味わいに仕上げる。微かに紹興酒や漢方の香りが加わった、深々とした上品な滋味のそのスープに具材を入れながら食べていく。

 まずは、鱈の白子、あん肝、ハタ、車海老、北寄貝、つぶ貝、牡蠣、帆立、鮑、スッポンなどの海鮮類・高級食材から始め、次に、牛肉、豚肉、豚ガツ(胃)、ハチノス(牛の第二胃)、鹿アキレス腱などの肉類やモツ類へと移る。そのほか、肉団子、魚団子、海老団子などを、レタス、芹、広東白菜、葱、筍、干し筍、椎茸、柳松茸、あわび茸、木耳といった野菜類・茸類と一緒にいただく。
さっとスープに通してそのままスープと共に食べてもよし、三種のタレ(ポン酢・胡麻ダレ・ニンニクと唐辛子を効かせた醤油ダレ)で食べてもよし。薬味は、葱、香菜、赤唐辛子、XO醤、蝦醤(ハーチョン)、ザーサイ、腐乳など各種あり。食べ進むごとに深くなっていくスープの味わいもまた格別である。

 〆は中華麺。極上の出汁による湯麺ゆえ、さんざん食べて満腹ながら、至福のひと時がまた味わえる。

 そのほか、黒酢のコクに包まれた豚肉が舌の上でほろりと崩れ、コラーゲンのうま味が広がる「骨付き豚すね肉の黒酢風味土鍋煮込み」、葱と生姜を効かせた味わいのスープの中で、さっと牡蠣に火を通した「牡蠣の葱生姜鍋」もおすすめである。

東京都中央区銀座6-8-7 交詢ビル5階 
電話=03(3569)2882
営業時間=[平日・土]11時半~15時(L.O.)、17時半~22時(L.O.)[日・祝]11時半~16時(L.O.)、16時~20時半(L.O.)
年中無休
中国の鍋
中国料理
趙楊
三種類のスープによって
具材の風味が変わる楽しい火鍋

 今、火鍋は二色スープが主流だが、正式には三種類だという。ここではその希少な三種類のスープによる火鍋がいただける。①豆板醤と、八角や枸杞(くこ)や棗(なつめ)など、二十四種類の漢方と香辛料を入れた真っ赤なスープ。②朝鮮人参、雲南ハム、干し海老、豆乳、鶏のスープを合わせた白いスープ。③アガリスク、ポルチーニ、トリュフなど、四川で豊富にとれる五種類の干し茸と水による、黒いスープである。

 ①は強烈に辛いが、香辛料と漢方の薬効で体がほてり、食べるほどに毒素が抜けていく感がある。②は優しく丸い味わいで、その中で朝鮮人参の香りが効いている。面白いのが③のスープで、複雑な香りとうま味が混沌と舌を包み、具材に艶を与え、食べ進むほど陶然となっていく。

 具材は、多岐に及ぶ。肉類は、牛肉、豚肉、仔羊肉、鹿アキレス腱、牛レバー、ハチノス、豚ガツ、豚レバー、鶏砂肝、鶏レバー、肉団子。魚介類は、魚団子、海老、イカ、帆立、白身魚、ナマコ、根昆布など。これに野菜類、茸類が加わる。珍しいのはアロエで、スープに通すとほのかに甘みを帯びて、ぬるりと崩れていく食感が面白い。いずれの具材も、スープによって風味が全く変わる楽しさは、比類なき鍋であろう。

 〆は中華麺。どのスープも味が深くなり、麺が活きるが、おすすめは③。また、ご飯をもらって、スープ茶漬け風にしてもたまらない。

 そのほか特注すれば、土鍋で沸かしたスープにアヒルと漢方を入れ一昼夜置いた「アヒルの薬膳土鍋」、汽鍋(チーコー)という鍋に具材と酒を入れて、塩を一切しないで蒸し上げた、優しく丸い紹興酒の香りが魚の滋味を持ち上げる「紹興酒魚蒸し鍋」といった鍋も楽しむことができる。まさに中国料理の深みを痛感する鍋料理であるといえよう。

東京都港区新橋1-5-5 グランベル銀座ビルⅡ7階 
電話=03(3289)2006
営業時間=[月~金]17時半~21時(L.O.)[土・祝]17時~20時(L.O.)※売切れ仕舞い
定休日=日曜日
中国の鍋
中国料理
龍水楼
北京の名物料理
仔羊のしゃぶしゃぶ「涮羊肉(シュワンヤンロウ)」

 一説によれば、しゃぶしゃぶの原点にもなったという、北京名物の仔羊のしゃぶしゃぶ「涮羊肉」がいただける。

 まずは、豆腐干の和え物、鶏砂肝の冷菜、湯葉とセロリの和え物、粉皮(フンピ)と胡瓜と金針菜の和え物、揚げ海老団子といった前菜をいただき、「涮羊肉」へ。店主・箱守不二雄さんの名調子による、北京の有名店の話、なぜこの鍋が生まれたのかなど「涮羊肉」の説明が楽しい。

 仔羊の薄切りと野菜類をたぎったスープに入れてさっと火を通し、順次食べていく。

 タレは酢と醤油のみだが、薬味が豊富。微塵切りにした葱とニラに香菜、ニンニクのおろし、生姜のおろし、豆板醤、芝麻醤、老酒、ゴマ油、腐乳とあり、それらを好みで混ぜながら食べていく。次第に味の濃いものへと入れていくのがいいだろう。また、ニンニクの蜂蜜漬けは合いの手として楽しむのがいい。

 最初は座って食べているが、仔羊の香りと各種薬味の香りが混ざり合っていくうちにコーフン状態となり、二皿目からは座ってなんかいられなくなる。全員立ち上がって臨戦態勢でしゃぶしゃぶし始めるは必至。タレは次第に濃くなり魔界状態、カオスの凄みを仔羊が受けとめる。

 羊肉を食べ終わると、羊肉餡の水餃子が運ばれ、その香りと皮のうまさに、これまた一同やられてしまう。そして、〆は麺。羊の香りが溶けたタレをスープで割ってつるるる。満腹でも、誰もが食べてしまう。

 デザートは、卵・砂糖・ラード・澱粉で作る「三不粘(サンプチャン)」。「皿に粘らない、歯に粘らない、箸に粘らない」ことからの命名であるが、口の中ではもっちりとして粘るという、不思議な菓子。作るのには高等技術が必要で、本場中国でも作れる料理人は少なく、東京ではここでしか食べられない。

東京都千代田区神田錦町1-8
電話=03(3292)1001
営業時間=11時半~13時半、17時~20時頃
※昼は月~金のみ、夜は予約のみの営業
定休日=日曜日・祝日
話題の新店(2)
中国料理
楽記
神宮前に香港が出現!
広東式焼物と自然派ワインの店

銀座「グレープ・ガンボ」、六本木の老舗ワインバー「祥瑞」といえば、フレンチをベースにした、ワインをグビグビと飲ませる料理を提供する、ワイン好きにはたまらない、連夜大盛況の店。残念ながら、三原小路の再開発のため「グレープ・ガンボ」は今年初めに惜しまれつつ閉店したが、その両店のオーナー・勝山晋作さんが、七月末、神宮前にオープンした新店が「楽記」である。

初めての試みである、広東式焼物とワインの店だという。キラー通りから路地を入ったところにある、地下一階、地上二階の店である。

店内に足を踏み入れ、まず目に入ってくるのは、左手にある厨房。たった四席のカウンターと厨房の間はガラス張りになっており、そこには、焼き上げられたばかりのチャーシュー、アヒル、豚バラ肉、ハト、鶏などがズラリと吊り下げられている。「まるで、香港!」と思われる方も多いのではないだろうか。

厨房には大きな炭火焼の釜が二つ並んで、常に稼働している。炭火で焼く釜が設置されている店は、日本にはそうはない。しかも、鶏もハトも特別飼育されたもので、わざわざ香港に行かなくても済むのではないかと思うほどレベルが高い。

「貴妃鶏(光鶏の特製醤漬け)」(半羽:六千円、一羽:一万二千円)は、日本で特別飼育された龍崗鶏を使い、特別のタレで茹で、注文が入ってから、さらに熱々の別タレに漬け込んだ料理である。

手で持って齧りつくと、優しい肉の滋味が滲み出す。鶏は、まだ加熱されたことに気づいていないのかもしれない。そう思わされるたおやかさがあって、肉がどこまでも自由である。玖瑰露酒(中国の蒸留酒「高粱酒」にハマナスの花を漬け込み、再蒸留したものに加糖し、水で酒精度を整えたリキュール)の甘い香りもたまらない。添えられた油漬け葱と一緒に食べてみよう。

そのほか、肉汁と甘辛い特製ダレが病み付きとなる「蜜汁叉焼(炭火釜焼チャーシュー)」千三百円、カリッと焼かれた豚バラ肉の皮がうまい「脆皮焼肉(皮付き豚バラ肉のクリスピー焼)」千三百円、「焼鴨(炭火釜焼アヒル)」(四分の一羽:千九百円、半羽:三千六百円)、「蟹肉冬瓜湯(蟹肉と冬瓜のスープ)」、「潮州凍魚(魚の冷製)」、「郊外油菜(季節野菜の炒め物)」などがお勧めである。

お酒は、ビールとヴァンナチュール(自然派ワイン)のみで、紹興酒はなしという潔さ。すでにもう、予約至難の人気店になりつつある。

東京都渋谷区神宮前3-7-4
電話=03(3470)0289
営業時間=[月〜金]18時〜22時半[土]15時〜21時
定休日=日曜日
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