味の見聞録

カテゴリ:居酒屋
札幌の美味(3)
居酒屋
こなから
季節感と個性に富む料理と酒
食いしん坊のための居酒屋

 市内に数多く居酒屋はあるが、ここが一番だろう。いや、ほかにはない。

 ご主人の小割茂樹さんは、毎朝石狩をはじめ遠くの港まで足を運び、魚を仕入れ料理する。魚好きが頼みたくなる料理がずらりと並び、ある日数えてみたら、四十八種類もあった。どれも季節感と個性に富んでいて、酒飲みと食いしん坊のツボをチクチクと刺激する。

 さらに、酒の揃えもいい。燗のつけ具合もいい。とっても危険な店なのである。だから、「もう札幌の夜は、こなから以外に行けなくなった」という人を、私はたくさん知っている。

「いいものがあるとつい買っちゃう」と、小割さんが遠くまで買い付けに行った魚の「刺身の盛り合わせ」に「アスパラガスとウドの白和え」、「白蕪とキュウリの浅漬け」をもらって、スタートする。

 酒は地元の「二世古」を二種類冷やでいただき、あとは「宗玄」、「るみ子の酒」、「而今(じこん)」を燗にしてもらって食べ進むのも楽しいだろう。

 磯香が口の中でのたうち回る「鮑の岩海苔あんかけ」、焼いた香りが甘い「ホワイトアスパラガスの焼き浸し」、身が緻密で優しく、脂がじっとり回った「時鮭焼き漬け」、胃袋を掴むようなこっくりとしたうま味が溶け込んだ「メヌケの味噌汁」。どれも酒が進んで困っちゃう肴である。

「海老マヨ」は衣にコーンの香りがして、マヨネーズの塩梅がなんともいい。さらに、堂々たる大きさの身がしっとりとして、噛み込めば品のある脂が広がる「ホッケの炭火焼き」で、また笑ってしまうのである。

 名物「イチジクレーズンバター」では、「ウィスキーをください!」と叫び、「行者菜となめこと卵の辛味炒め」で、なめこの役割を褒め称える。

 ほかにも、コラーゲンのうま味と海苔の香りが抱き合う「ゴッコ(ホテイウオ)と岩海苔の小鍋仕立て」。品のいい脂が舌の上で溶ける「ニシンの焼き〆造りの刺身」。大きく分厚いカレイの肉がホロリと甘く崩れる「ババガレイの煮付け」。不思議に三者の味わいが共鳴して思わず笑い出す、名物「牡蠣と柿と牛スジの朴葉味噌焼き」などの冬の料理も捨てがたい。

 店名の「こなから」=「小半ら」は一升の半分の半分、つまり二合半くらいがほどよい酔い具合と言われているのに、まったくもって酒が止まりません。
そして散々食べたあとには、「蟹炒飯」、「ストロングドライカレー」、鯖の新鮮な身のうま味とソースのバランスが精妙な、名物「鯖サンド」が待っている。

 どうです? 困った店でしょう!

北海道札幌市中央区北二条西3 イシガキビル2階 
電話=011(281)1250
営業時間=17時~22時半(土曜 17時~22時)
定休日=日曜日・祝日(その他不定休)
ポテトサラダ酒場
居酒屋
羅無櫓(らむろ)
居酒屋界のマッターホルン
皿の上にそびえ立つ白い山

 四谷三丁目交差点から徒歩三分ほど、粋な風情が残る荒木町柳新道通りの路地にある、名焼酎酒場。焼酎ブームのはるか以前より、数多くの焼酎を揃えて人気を呼んでいた店。壁一面には、二百種近い焼酎の一升瓶が並んでいる。十席ほどのカウンター席は、山男でもあるご主人・官兵衛さんの人柄に惚れてやってくる常連でいつも賑わっている。

 まず出されるのは、お盆の上の小皿に盛られた先付三種。ポテトサラダにゴーヤのおひたし、煮イカという日もあれば、きんぴら、おから、ひじき煮という日もある。そのどれもにきっちりとした仕事が施されており、味がしっかり舌に乗る。

 単品でも頼める「ポテトサラダ」五百円の姿は、居酒屋界のアンナプルナかマッターホルン。皿の上で、白い山がそびえ立つ。白き頂に箸を突っ込めば、潰れた芋の香りに満ち満ちて、思わず笑いがこぼれる。その甘みの加減が芋焼酎とも実に合う。

 焼酎を飲むならまずは、店のおすすめ「前割り焼酎」のぬる燗はいかがか。「伊佐大泉」などの芋焼酎六に対し、ご主人が住んでおられる高尾山で汲む湧水四で割り、それを甕で四日間寝かせて馴染ませた前割りは、ふわりと芋の香りが顔を包み、口当たりまろやかで、酔いが優しく回っていく。

 肴は、刺しの入った馬刺や、香ばしい小アジの素揚げ、ほのかな甘みがクセになるさつま揚げのほか、ウルメイワシ、アゴ、鮭とばといった酒泥棒が多数揃い、焼酎が進むは必至。

東京都新宿区荒木町7 
電話=03(3358)9515
営業時間=18時~23時半
定休日=土曜日・日曜日・祝日
ポテトサラダ酒場
居酒屋
青山ぼこい
心の内からほっこりとする
後を引くおいしさ

 青山の地で、一九六八年の創業以来、四十数年営む酒亭。「ぼこい」は漢字では「母恋」と書く。「お母さんの味が恋しくなったら来てほしい」という先代の想いが込められている。現在は、兄弟二人で営んでおられ、岡本太郎氏をはじめ数々の著名人に愛された味は、良い酒亭がない青山界隈で、今も変わらず多くの人に支持されている。

 「ポテトサラダ」六百二十円は、姿は一見普通だが、料理の引き算ができた〝ほどの良さ〟で、食べると心の内からほっこりとするおいしさ。芋の香り、玉子のうま味、両者を引き立てるマヨネーズの味、ベーコンの隠し味。なにを食べさせたいのか明確であり、料理としての均整美がここにある。マヨネーズに混ぜた卵黄の甘みやベーコンを炒めた油のコクが効いていて、後を引くこと間違いなし。

 そのほか、刺身類、季節の野菜料理の数々や、「若鶏の竜田揚げ」、「牛肉豆腐」、「蟹クリーム春巻」、「自家製五目がんも煮」、「自家製アジの干物」など、ひと味違う味わいが数多く待っている。

東京都港区南青山5-13-2 池田ビル2階 
電話=03(3407)2031
営業時間=[月~金]18時~24時(23時LO)[土]18時~23時(22時LO)
定休日=日曜日・祝日
ポテトサラダ酒場
居酒屋
高太郎
日本酒に合うように作られた
玉子の薫製香広がるうま味

 二〇一一年、大人の居酒屋が少なかった渋谷に開店以来、店主・林高太郎さんによる素晴らしい料理と厳選した日本酒で、連夜満席の人気店。

 まずは突出しから飲兵衛の心を捉える。季節替わりの豆と青菜の浸しは、旬の食材への敬意に満ちて清々しく、「さあ、酒を飲むぞ!」と、スイッチが入る。

 厳選した日本酒に合うように考えたという「燻玉ポテトサラダ」七百円は、マスタード風味のドレッシングがかかり、その名の通り、半熟の燻製玉子が乗っている。まずはポテトサラダそのもののうまさを味わい、次に玉子を崩して混ぜ込みながら食べると良い。芋の甘みに目を細め、燻製香が次第に広がって、うま味が膨らんでいく。そこへ「七本槍(しちほんやり)」のぬる燗などを合わせれば、酒飲み冥利に尽きると膝を打つ。

 そのほか、日々吟味して選ぶ刺身、香りが素晴らしい上品な脂の焼き大穴子、豊かな肉汁と酒がぴたりと合うメンチカツなど、逸品揃い。

 締めには、香川県出身の店主が毎日打つ「讃岐うどん」が待っている。

東京都渋谷区桜丘町28-2 三笠ビル1階 
電話=03(5428)5705
営業時間=18時~翌2時(翌1時LO)
定休日=日曜日・第一月曜日
二〇一一年開店の話題の店(2)
居酒屋
高太郎(こうたろう)
酒よし、肴よし、
サービスも快適な大人の居酒屋

四月に開店。大人の居酒屋の少なかった渋谷にできた優良店。

突出しからして素晴らしい。時季時期で獲れる豆を使った「浸し豆と青菜の浸し」。旨い料理をアテに飲もうという気分を静かに盛り上げてくれる。

酒は、店主の林高太郎氏が「じっくり付き合っていきたい」という観点から選んだ、「石鎚」「喜久酔」「貴」「七本槍」「悦凱陣」「秋鹿」「宗玄」「泉橋」の八蔵。

これらの酒に、充分吟味したことが伝わる刺身(九百五十円〜。三種盛千八百円)や、それを使った和え物に合わせれば、酒飲みのツボを突かれて、盃が進む。

例えば「金目と白瓜の塩昆布和え」六百円や、「ホッケと蕪の塩昆布和え」七百円は、昆布が素材の旨味を盛り上げ、前者に七本槍、後者に石鎚を合わせれば、酒の乳酸が色っぽく絡み合って、顔が情けなく崩れる。

また、皿の上で初めて完成する味わいの、燻製玉子をのせた「燻玉ポテトサラダ」六百円は七本槍の香りと調和し、肉の香りが素晴らしい「メンチカツ」八百円は、その肉汁に悦凱陣の酸を合わせると面白い。

そして締めは、香川県出身の店主が毎日打つ「手打ちぶっかけ讃岐うどん」四百円を。滑らかでしなやかながら、逞しいコシのあるうどんは、止まらなくなる。その他日替わりの「土鍋ごはん」の用意もある。

酒よし、肴よし、そして働く喜びが滲み出たスタッフのサービスも快適。贔屓にしたくなる居酒屋である。

東京都渋谷区桜丘町二十八の二 三笠ビル一階
電話=03(5428)5705
営業時間=18時〜翌2時(翌1時L.O.)
定休日=日曜日
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