味の見聞録

カテゴリ:スペイン料理
ファインスパニッシュランチ
スペイン料理
ZURRIOLA(スリオラ)
スペイン伝統料理に敬意を払い、
季節の食材を駆使した刺激的料理

 昨年、麻布十番から銀座に移転。店内はテーブル席と長いカウンター席に分かれる。

 ランチコースは、四千八百円(主菜一皿)と、六千八百円(主菜二皿)の二コース。

 米粉のチップと、オリーブ油を射込んだパンの突き出しに続く一皿目は「白身魚のフリット ロメスコソース」。葉の上に、ロメスコソース(松の実・アーモンド・ニンニク・パプリカ・トマトなどで作るオレンジ色をしたカタルーニャの伝統的ソース)、白身魚のフリット、泡状にした酢橘の果汁が重ねてある。葉で包み込むようにして食べれば、ソースの旨味が白身魚の淡い甘みを持ち上げ、酢橘の酸味が引き締める。

 続いて「ヒメマスと生ハムのモンタディート」。モンタディートとはスペインのミニバケット。軽くトーストした薄いパンの上に、ゼラチンで固めたハーブのソース、スペイン最高峰ホセリート社のハモンイベリコ(イベリコ豚生ハム)、軽く燻製にしたヒメマスが重ねてある。何より、旬のヒメマスのじっとりとした脂の甘い香りが素晴らしい。そこへ生ハムの旨味とハーブの香りが合わさって、笑顔が生まれる。

 次は「桜の葉で香りをつけたキノコとヤリイカの詰め物 アルスアウジョアのソース」。ヤリイカの中に豚喉肉とキノコの炒めたものを詰め、ガリシア地方の牛チーズ「アルスアウジョア」を添えた皿で、上には揚げた桜の葉がのせてある。ヤリイカの甘み、豚喉肉のコラーゲンの旨味、キノコの香りが抱き合い、それぞれの食感の違いが楽しい。それらをバターを思わせるような豊かなチーズのコクが包み込む。

 主菜の「千葉県産花愁(かしゅう)仔豚のコンフィ ちりめんキャベツと大根のなめらかなピュレ」は、カシューナッツを食べて育った仔豚の優しい滋味にうっとりとなる逸品。「仔牛脛肉のピペラーダ煮 ペドロヒメネスの香り」は、仔牛脛肉のコラーゲンの甘みが下に敷かれた野菜煮の甘みと共鳴し、心がほぐれる。スイートシェリーの香りをつけたソース、添えた骨髄も素晴らしい。

 そしておすすめは魚料理、「ナメタカレイの骨付き炭火焼、軽いピルピルソース」。二キロ以上あるナメタカレイを骨付きのまま炭火焼にし、骨を抜いて元の形に戻し、ピルピルソースを添えた料理。食べれば、しなやかな肉の躍動がある。とろんと乳化したソースにまみれ、カレイは自らの甘みをじっとりと舌に広げ、ニンニクの香りと共にカレイの丸い香りが抜けていく。そこへ皮下のコラーゲンがにゅるんと溶ける。なんとも艶かしい料理である。

 デザートは「蜂蜜のメレンゲとローズマリーのアイス ヨーグルトとオリーブ油のソース」。食べれば、コート・ダジュールを歩いているような爽やかで甘い風が吹き抜ける、優美なデザートである。

 最後は、チョコレートやポルボロンなどの小菓子の盛り合わせが供される。

 スペイン伝統料理に敬意を払いながら、季節の食材を駆使した、本多誠一シェフ独自の刺激的な料理を、ぜひ試されたい。料理は基本的に二~三ヶ月で変わっていくが、たとえ二日続けて訪れても全く違う料理を出してくれる。

東京都中央区銀座6-8-7 交詢ビル4階 
電話=03(3289)5331
営業時間=[ランチ]平日:11時半~13時(LO)、土日祝:11時半~13時半(LO)[ディナー]18時~21時(LO) 
定休日=月曜日 
※上記価格に、消費税とサービス料10%別途
ファインスパニッシュランチ
スペイン料理
RESTAURANT SANT PAUA  (サンパウ)
日本の四季の美を見事に捉えた
女性ならではのしなやかな感性

 カタルーニャ地方のサン・ポル・ デ・マル村にある「サンパウ」の日本店。数少ない三つ星女性シェフの一人、カルメ・ルスカイェーダさんは毎年来日し、日本の食材に触れ、新しい料理を生み出すという。

 ランチは、六千円(平日のみ)、九千円、一万六千円の三コース。今回は、春のある日の九千円のコースをご紹介。

 アペリティーボは二種類。カルメさんの手書きイラストによる、可愛らしい説明カードがテーブルに置かれている。一つはクラゲに見立てたアペリティーボ。ターメリックで色付けたゼリーをかぶせ、ナッツ、グリーンペッパー、クラゲの足に見立てたクラゲの千切り、ラルドカンサラダを入れ込んであり、様々な食感や香りが忍んで刺激的。もう一つは、ビーツソースとビーツ角切り、馬肉のタルタルを入れた、ビーツで色付けしたコーン。同じ色合い者同士の相性を、巧みに構成した料理である。

 前菜は「ホタテ レンズ豆 えのき 青パパイヤ」。白醤油で味付けしたレンズ豆のクリームソースに、半生に加熱した帆立貝を合わせた皿。レンズ豆と柔らかい甘みを持ったソースが帆立貝に優しく寄り添う。それだけでなく、穂紫蘇の香りのアクセントや、ごく微塵に切った人参やえのき、青パパイヤの食感、パプリカゼリーの甘みが見事に響き合う心憎い逸品。 

 魚料理は「サワラ カルソッツ ペコロス 人参のピュレ」。低温で調理し、しっとりと仕上げたサワラに、焦げるまで焼いた下仁田葱の芯が添えられる。サワラの甘みに葱の甘みが溶け合い、色気を感じさせる。そして花山椒のアクセントは、共に春を生きる者同士の呼応を感じさせる。

 肉料理は「和牛テール 苺 根セロリのピュレ」。長時間煮込んで骨から外し、再び四角に整形した牛テールと、とちおとめ、根セロリのピュレ、大根を合わせた料理。テールの男性的な味わいに、苺の香りが加わって、可憐さが増す驚きがある。

 続くリフレッシュフルーツは「愛媛のせとかみかんのアイスクリーム セージのソース」。甘いだけではない、胸をつく香りに春の本質を感じさせる。そしてデザートは「桜餅 百合根 ホワイトチョコ」。ビーツで色付けした桃色のペーストを桜餅の皮に見立てた、愛らしい一品。中はホワイトチョコとマカデミアナッツで、桜の花と葉の塩漬けが添えられる。紅玉とキルシュによるソースの酸味の合わせ方も素晴らしい。

 最後は、またカルメさんのイラストカードが添えられた「十種類のプティフール」。どれも小さな驚きと発見、懐かしさと温かさが入り混じる小菓子である。

 四季という日本の美を見事に捉え、そこに女性ならではのしなやかな感性と愛情を加えた料理は、スペイン料理でありながら、我々に日本を伝える。

東京都中央区日本橋1-6-1 コレド日本橋ANNEX 
電話=03(3517)5700
営業時間=[ランチ]平日:11時半~13時半(LO)、土日祝:12時~13時半(LO)[ディナー]18時~21時(LO) 
定休日=月曜日を中心に月6日間・年末年始 
※上記価格に、消費税とサービス料10%別途
二〇一一年開店の話題の店(1)
スペイン料理
ZURRIOLA(スリオラ)
日本の食材への想いが込められた現代スペイン料理

四月にオープンした現代スペイン料理の店。夜のコースは、日替わりで一万千円。アミューズから前菜、メイン、チーズ、デザートまで十一皿で演出する。

ある日のアミューズは、スペイン版ピッツァ。パリッと弾けるコカの生地にのせた優しい味わいの自家製塩ダラのブランダーダ(塩ダラを低温で加熱し、ニンニク風味のオリーブオイルで乳化させた料理)。次は、二秒揚げた生桜エビの香りと甘みで食欲を増進させる「生桜エビの瞬間フリット 全粒粉のクレープでサンドされたズッキーニ おかひじきと共に」。三皿目は、生のようなしなやかな食感ながら皮目が香ばしく、サバの長所のみが堪能できる「六十二度で一分間火を入れたサバ パセリとニンニク、小玉葱のエスカリバーダ(マリネ)」。四皿目は、ソテーしたフォアグラと、生ハムと煮込んだレタスのスープ。通常甘いソースが合わさるフォアグラとは一見対比するスープだが、その青々しさの奥にある穏やかな甘みが、食べ進むことにより共鳴していく、本多誠一シェフならではの真骨頂。五皿目は、低温で火を入れ、均一にしなやかな溶けるような食感に仕上げ、味のたくましさと艶めかしさを両立させたマナガツオ。自然な甘みが滲み出た蕪のソースと合わせれば陶然となる。六皿目は、きめ細かい身質を持った「蝦夷鹿のプランチャ(鉄板焼き)」。淀みのないきれいな肉汁が舌に迫る。七皿目は、コラーゲンの旨みたっぷりの「パスタで巻いた国産牛テールの煮込み」。

チーズは、「ブーリーニ・サンピエール」「トルタ・デ・カサール」「フルムダンベール」の三種が、各々の特色を生かした付け合わせと共に供される。「トロピカル」と名付けられたデザートは、ココナッツムースに各種果物、レッドペッパーオイルと黒オリーブの粉。胡椒の刺激がよく合う。

どの皿もスペイン料理への愛情と、日本の食材への想いが満ち満ちて、心温まる。

港区麻布十番三の二の七 リゾーム麻布十番一階
電話=03(5730)0240
営業時間= 11時半〜13時半(L.O.)、18時〜21時半(L.O.)
定休日=月曜日
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