味の見聞録

月間アーカイブ:2012年01月
二〇一一年開店の話題の店(1)
スペイン料理
ZURRIOLA(スリオラ)
日本の食材への想いが込められた現代スペイン料理

四月にオープンした現代スペイン料理の店。夜のコースは、日替わりで一万千円。アミューズから前菜、メイン、チーズ、デザートまで十一皿で演出する。

ある日のアミューズは、スペイン版ピッツァ。パリッと弾けるコカの生地にのせた優しい味わいの自家製塩ダラのブランダーダ(塩ダラを低温で加熱し、ニンニク風味のオリーブオイルで乳化させた料理)。次は、二秒揚げた生桜エビの香りと甘みで食欲を増進させる「生桜エビの瞬間フリット 全粒粉のクレープでサンドされたズッキーニ おかひじきと共に」。三皿目は、生のようなしなやかな食感ながら皮目が香ばしく、サバの長所のみが堪能できる「六十二度で一分間火を入れたサバ パセリとニンニク、小玉葱のエスカリバーダ(マリネ)」。四皿目は、ソテーしたフォアグラと、生ハムと煮込んだレタスのスープ。通常甘いソースが合わさるフォアグラとは一見対比するスープだが、その青々しさの奥にある穏やかな甘みが、食べ進むことにより共鳴していく、本多誠一シェフならではの真骨頂。五皿目は、低温で火を入れ、均一にしなやかな溶けるような食感に仕上げ、味のたくましさと艶めかしさを両立させたマナガツオ。自然な甘みが滲み出た蕪のソースと合わせれば陶然となる。六皿目は、きめ細かい身質を持った「蝦夷鹿のプランチャ(鉄板焼き)」。淀みのないきれいな肉汁が舌に迫る。七皿目は、コラーゲンの旨みたっぷりの「パスタで巻いた国産牛テールの煮込み」。

チーズは、「ブーリーニ・サンピエール」「トルタ・デ・カサール」「フルムダンベール」の三種が、各々の特色を生かした付け合わせと共に供される。「トロピカル」と名付けられたデザートは、ココナッツムースに各種果物、レッドペッパーオイルと黒オリーブの粉。胡椒の刺激がよく合う。

どの皿もスペイン料理への愛情と、日本の食材への想いが満ち満ちて、心温まる。

港区麻布十番三の二の七 リゾーム麻布十番一階
電話=03(5730)0240
営業時間= 11時半〜13時半(L.O.)、18時〜21時半(L.O.)
定休日=月曜日
二〇一一年開店の話題の店(1)
フランス料理
Restaurant L’asse(レストラン ラッセ)
郷土料理愛に満ちた
シンプルで美しいイタリア料理

五月にオープンしたイタリア料理店。シェフ村山太一氏は、イタリアの三ツ星レストラン「ダル・ペスカトーレ」副料理長出身。料理はコースのみ。郷土料理愛に満ちた、シンプルで美しい皿で構成される。サービスも実にスマートで心地よい。

昼は、「パスタランチ」が二千五百円、主菜も盛り込んだコースが四千二百円。

ある日のアミューズは、サクサクとして香り高い「白ゴマのクロッカンテ」。二皿目は、アルトアディジェ産スペック(生ハム)の濃厚な味わいと富士柿、北海道トマトの甘みを合わせた一皿。アンティパストは、素朴な味わいのバカラ・マンテカート(干しダラのペースト)に、ねっとりとしたエビ芋の甘みを合わせ、有機オリーブのリグーリア風トマトソース煮を合わせた一皿。

パスタは、「フェットチーネ 山形産黒毛和牛のボロネーゼ 二十四カ月熟成のパルミジャーノ・レジャーノ」。肉の甘みが膨らんだソースと、粉の甘みが伝わり噛みしめるのが楽しいパスタとの出会いの幸せを得られる。主菜は、肉か魚を選択。魚は「愛媛産真鯛と浜名湖産アサリのアクアパッツァ」。アサリの塩分だけで作られたスープは味が綺麗で、余韻が長い。シンプルながら食材の力を見抜き信じて作られた清々しさに溢れている。

ドルチェは、スペシャリテの「ティラミス」をぜひ。甘美で優しく、かつ力強さも秘めた、心を溶かすデザートである。

夜は、「技のコース」七千五百円と、「スペシャルなメニュー」一万五百円の二種。深々と充足のため息をつかせる「トルテッリ・イン・ブロード」、笑顔が止まらない「四種チーズのラヴィオリ」、食べ手にも誠実が求められるような深く澄んだ味わいの「アサリのリゾット」、肉汁に雑味なくうっとりとさせる「仔羊のローストと煮込み」など、名品が並ぶ。

目黒区目黒一の四の十五 ヴェローナ目黒地下一階
電話=03(6417)9250
営業時間= 12時〜15時(13時半L.O.)、18時〜23時(21時半L.O.)
定休日=日曜日
二〇一一年開店の話題の店(1)
日本料理
日本料理 晴山
店主のおもてなし精神を深々と感じる誠実な日本料理

六月の開店以来、連夜満席の人気割烹。ご主人の山本晴彦氏は、岐阜の名店「たか田八祥」出身。若干三十一歳ながら誠実で明るい人柄に、初めて訪れた人でもすんなりと入り込み楽しむことができる。八席のカウンターと、四人掛けの個室と八人ほど入る小部屋。夜のコース料理は、七千円、一万円、一万五千円の三種。いずれも八皿+デザートで、食材の内容が変わる。

ある晩秋の日の一万円コースは、突出しに「とんぶり・焼き茄子・新イクラ・長芋の和え物」。茄子の甘みと新イクラの優しい食感に目を細める。お椀は「渡り蟹の真丈と椎茸」。関西の吸い地より濃いが、蟹の旨みを抱いた真丈との調和がよく、心がすわる。お造りは「ヒラメ 雲丹」。厚く切られたヒラメは弾けるような食感ながら、充分に旨みが醸し出されている逸品。

「焼きカマスの寿司・イカのワタ和え・ホオズキトマト」は、香ばしい寿司が胃の腑を落ち着かせ、ワタで酒を呼び、トマトの酸味と甘みでさらに食欲を刺激する。岐阜出身ならではの「サワラの朴葉焼き」は、朴葉味噌が何とも塩梅よく、濃すぎず緩すぎない丸い味で、しっとりと焼き上がったサワラに浸ければ、笑みがこぼれる。

六皿目が、たか田八祥名物「ジャガ芋のハリハリ」。細く切ったジャガ芋を加熱し、トビコをまぶしたもの。芋の食感を残した火の通し、トビコの塩分具合、油の香り、各々がぴたりと着地している。何気ない料理に込めたおもてなし精神を深々と感じる。そして、ねっとりと甘い「蓮根饅頭」と続き、締めは、浜名湖の青海苔を使った「出汁茶漬け」。デザートは「無花果のコンポートにシャインマスカット」。

いずれも大向こうを狙った派手さはないが、修業先への愛情が滲む誠実な料理に、充実した時間が過ごせよう。

港区三田二の十七の二十九 グランデ三田地下一階
電話=03(3451)8320
営業時間= 12時〜15時(13時半L.O.)、17時半〜23時(21時半L.O.)
定休日=月曜日
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