味の見聞録

月間アーカイブ:2012年03月
そば屋
そば
菊谷
酒飲みのツボを押さえた肴
毎日石臼挽きする手打ちそば

清潔感に富む白木を配した店内は、新店ながらしっとりとした空気感が漂う。

まずは「お任せ酒肴盛り」六百円を。ある日のそれは、鯖の燻製、わさび漬け、切り干し大根の沢庵の煎り煮、九十二歳になられるというおばあちゃんの糠漬け、きんぴらごぼう、鶏肝の生姜煮。どれもしみじみとした旨さがある。

おすすめは、野菜料理を得意とする料理長の皿。ある日の「野菜料理盛り合わせ」は、大根と金時人参のなます、玉葱と椎茸酢漬け、雪下蕪酢漬け、八つ頭のきぬかつぎ、わかさぎ南蛮漬け、自然薯むかご、蓮根きんぴら、芹入り出汁巻玉子など、いずれも土の香りと温かみが伝わる料理の数々。その他、味が染みた大根に顔がほころぶ「鴨のかえし煮」、「シシャモの炙り浸し」など、酒飲みのツボを押さえた肴が並ぶ。

毎日石臼挽きする粉で打たれるそばは、数種あるが、ぜひ「利きそば」(二種:千百五十円、三種:千五百円)を試されたい。産地、挽き方、つなぎ割合を変えた数種のそばが食べられる。例えば、甘い香りが鼻に抜ける「新潟産二八そば」、清々しい香りが胸に広がる「秩父産十割そば」、打ってから三日間寝かせ、穀物感のある野趣に富む香り漂う「福井産十割そば」といった具合。そば好きにたまらぬ品書きである。

酒は、「四季桜」「春霞」「菊姫」など、三十以上の銘柄が用意されている。

東京都豊島区巣鴨四の十四の十五
電話=03(3918)3462
営業時間=11時半〜21時(20時半L.O.)
定休日=火曜(4の付く日と祝日の場合は翌週の月曜)
そば屋
そば
蕎麦切り 酒 大愚
「媛っこ地鶏」を使った料理
清涼感と野趣が同居した見事なそば

カウンター七席。昼はそば屋、夜は酒を飲まない人は入店不可の、酒とそばの店。

「そばがき」「焼きそば味噌」といったそば屋の肴もいいが、おすすめは、日本初の四元交配の「媛っこ地鶏」を使った料理の数々。特に厨房に設えられた炭床で焼く鶏や野菜がおいしい。「媛っこ地鶏と千住葱の塩焼き」九百八十円は、鶏モモ肉の逞しい旨みと葱の甘みを存分に味わえる。温泉玉子に浸けて食べる「つくねの温泉玉子添え」六百八十円は、つくねの優しい味わいと玉子の甘みとの出合いがいい。その他、野菜の凝縮した味が素晴らしい「季節の野菜焼き」(五百円〜)、山椒の風味に酒が進む「鶏モツの有馬煮」五百円、湯引きした鶏皮と野菜を土佐酢で和えた「鶏皮ザク」五百円など、酒が恋しくなる肴が揃う。

毎日挽く粉で打つそばは、丸抜き(脱皮)から挽く細打ちの「せいろ」と、玄そばから挽く太打ちの「田舎」の二種類。いずれも八百四十円。モチッと歯を押し返すようなコシと、スッと鼻に抜ける草のような香り、噛み込むと滲み出る甘み。清涼感と野趣が同居した、見事なそばだ。

酒は「宗玄」「諏訪泉」「風の森」「鶴齢」「悦凱陣」など。燗付の具合も抜群。

東京都港区西新橋一の十九の十
電話=03(3597)0359
営業時間=11時〜14時、18時〜22時半(21時半L.O.)
定休日=土曜・日曜・祝日(昼は月・水・金のみ営業)
そば屋
そば
玉笑
閑静な住宅街にひっそりと佇む
隠れ家的そば酒屋

分厚い一枚板のカウンター、無垢材のテーブルと椅子、土壁。凛と引き締まった、そばをいただくにふさわしい空間が広がる。

肴はまず「豆腐」六百三十円からいかがか。ある日は青大豆の豆腐と自家製湯葉をのせた皿で、甘い豆の香りがふわりと広がり、心が緩む。「玉子焼き」七百三十五円は、塩が舌に当たらない上品な仕上がりで、出汁の香りが素晴らしい。「そばがき」千六百八十円は、数回噛んだだけで、野趣の香りをほんのり漂わせながら消えてゆく。その他おすすめは、しみじみ旨い西京味噌漬けの「海老の味噌漬け焼き」千五十円、ホロリと崩れゆく「つまみ鰊」千五十円。

細打ちの「粗挽きせいろ」千五十円は香りが見事。一瞬歯を押し返すようなコシから、野味のあるほろ苦さと甘さが入り混じった香りが鼻に抜け、そば本来の甘みがじわりと出る。さらに面白いのが「熱もりせいろ」千五十円。やや太めに打たれ、蒸した熱いそばを、そばつゆ+溶き玉子に浸けて食べる。立ち上る香り強く、そばの穀物としての優しさと甘みを実感する。

お酒は、「菊姫」「鄙願」「六友」など。

東京都渋谷区神宮前五の二十三の三
電話=03(5485)0025
営業時間=[平日]11時半〜15時半(15時L.O.)、17時半〜21時半(21時L.O.)[土]11時半〜20時(19時半L.O.)[日]11時半〜17時(16時半L.O.)
定休日=月曜(祝日の場合は翌火曜/都合により定休日以外も休む場合があるので事前にご確認を)
そば屋
そば
猛烈に燗酒が恋しくなる肴
おすすめは珍しい「重ねせいろ」

藍色の暖簾を潜れば、弁柄色の木戸。小体で静謐な空間が広がる。

酒は、小さいグラスに三種類の純米酒が注がれた「参酒」八百円から始めてはいかがだろう。ある日は、「開運」「鶴齢」「宗玄」のにごり。その後燗酒を頼めば、「味の違いをお試し下さい」と、おちょこ一杯の冷や酒が出される。酒好きにはたまらぬ趣向だ。

肴もツボを突く。細長い板に付けて焼かれた「焼き味噌」四百九十円や、豆腐味噌漬け「悠久豆腐」四百八十円は、猛烈に燗酒が恋しくなり、そば汁を含んだ「玉子焼き」七百八十円は、甘さと出汁が程よくきいて心が落ち着く。葱の甘さと肝やかえしの味が絡んだ烏賊による「千住葱とかえし漬け烏賊の肝焼き」六百八十円もおすすめ。

そばは、珍しい「もり」と「温もり」の二枚仕立ての「重ねせいろ」千四百円はいかがか。まずは、なんとも優しい甘みを忍ばせる極細打ちの「もり」の草のような香り、モチッと歯を押し返すコシ、凛と引き締まったつゆを楽しむ。次に「温もり」のふわりと広がる甘み、噛み込むに従って滲み出る穀物の旨みを楽しむ。薬味はおろしのみ。そば湯時に葱が出されるのもいい。

東京都小平市美園町二の九の七
電話=042(344)7732
営業時間= 12時〜14時半、18時〜21時(土・日・祝の昼は 11時半〜15時)
定休日=月曜不定休
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