味の見聞録

月間アーカイブ:2013年01月
二〇一二年開店の話題の店
和定食
鎹(かすがい)
店主が育てた野菜を中心とした
心洗われる惣菜の数々

「さだ吉」として、当意即妙の料理を出していたが、店主三浦俊幸氏が地元長野で農家を始めることをきっかけに、四月に和定食屋に業態を変えてオープン。三浦氏が作った野菜を中心とした惣菜の数々は、都会に住む我々にとっては心洗われる皿だ。

定食は三千五百円。長手箱に入れられた、野菜を中心とした惣菜の数々と、煮物、肉料理、ご飯、味噌汁、香の物という構成である。

ある日の長手箱は、南瓜自身の甘みに驚く「南瓜とナズナの和えもの」、それぞれの食感の出会いが絶妙な「金糸瓜と白菜とトンブリの酢の物」、しみじみと美味しい「蓮根の山椒醤油煮」、豆と牛蒡の香りの出会いに心和む「三度豆と牛蒡の煎りつけ」、素朴な旨さの「玉子焼き」。

「煮物」は、蕪や大根、サツマイモの揚げ煮と豚肉団子を上質な出汁で炊き合わせたもの。肉料理は、「放牧豚のロースト」。野菜出汁に八丁味噌を合わせたソースが、なんとも美味しい。

そして、大根、揚げ、コンニャクなどが深々と旨い「味噌汁」や、羽釜で炊いた光り輝く「ご飯」、隼人瓜、赤蕪などの「香の物」が揃う、真っ当な贅沢がここにある。

その他、「タラコと生海苔の天ぷら」、「シシャモのフライ」、「もつ煮」、「コハダの葱ぬた」、「若鶏の炭火焼」(七百五十円〜千五百円)などもあるので、夜は一杯やってから、定食をいただくのも良い。

東京都港区六本木6-2-7 ダイカンビル地下1階
電話=03(5786)4155
営業時間=11時半〜14時、18時〜23時
定休日=日曜日・祝日
二〇一二年開店の話題の店
オーストリア料理
Habsburg Veilchen(ハプスブルク・ファイルヒェン)
品格と優しさを備えた
オーストリア宮廷料理

四月開店。惜しまれつつ閉店した、赤坂「KuK(カー・ウント・カー)」の神田真吾シェフによる、オーストリア料理のレストラン。アジア圏で唯一「オーストリア国家公認料理マイスター」を持つシェフである。ゆったりと席がとられ、蝋燭の揺らめく店内は実に典雅。

夜のコースは、一万五千円と九千五百円の二種類。ある日のメニューを紹介。

白子のフリットやトウモロコシのスープといったアミューズに続き、前菜は「毛蟹と丹波黒枝豆のマリネ カリフラワーのアオフラオフ カルトフェルネスト」。ヴィネグレットでマリネした毛蟹とカリフラワーのムースを重ね、インカの目覚めを網状にして揚げたものが上に乗り、黒枝豆が周囲に散らされている。蟹は甘みに満ちていて、優しい甘みを持つカリフラワーのムースとの気品ある競演に、しばしうっとりとなる。

スープは、「トピナンブールのスープ メランジェ仕立て」。菊芋のミルクのような優しい甘みと土の香りが舌をいたわる、素晴らしいスープだ。そこに合わせたのは、ニンニク風味のクルトン。面白い。

魚料理は、「チロラーグリュステルと地鶏卵トリュフのソース ゲバッケネンオイスタン」。チロル地方のジャガイモとベーコンを使った郷土料理に、薄い衣でカリッと揚げたカキフライ。

シナモンの香りを効かせた華やかな「リンゴのソルベ」で口直しをした後は、主菜。選んだのは、ハンガリーの伝統料理「グーラッシュ」。見事なキレのあるソースで煮込んだ、マンガリッツァ豚を使ったシチューだ。肉自体の滋味強く、コク深いソースと渾然一体となって申し分なし。付け合わせのオーストリアのショートパスタ「アイヤーノッケルン」はソースをたっぷり絡めて。

デザートは、スパイス入り赤ワインソースと合わせたバラチンケン(クレープ)。不思議な香りにスプーン持つ手が止まらない。

その他アラカルトでは、「梅山豚の骨付き熟成ハム」、「貴腐ワインでマリネしたブルーチーズ」などがおすすめ。

いずれも、ハプスブルク家ゆかりの宮廷料理らしい品格と優しさを備えながら、奥底には長い間オーストリア人に愛されてきた料理の本質が脈々と流れている。

オーストリア銘醸ワインも数多く揃う。ランチコースは、五千二百五十円。

東京都中央区銀座7-8-7 GINZAGREEN7階
電話=03(5537)3226
営業時間=【昼】11時半〜13時半(L.O.)
     【カフェ】13時半〜15時(L.O.)
     【夜】18時〜21時半(L.O.)
※別途サービス料:昼10%・カフェ5%・夜12%
定休日=日曜日・祝日
二〇一二年開店の話題の店
イタリア料理
DA OLMO(ダ・オルモ)
誠実が味に染みた
心を震わせる北イタリア料理

新宿「トラットリア ブリッコラ」の北村征博シェフとマネージャーだった原品真一氏が独立し、九月に開店。シェフの修業先、イタリア北東部のトレンティーノ・アルトアディジェ州の料理が中心。国境を接するオーストリア、ドイツ料理との接点も感じられる、山と川の恵みに富む料理だ。ある日のディナーコース六千五百円を紹介。

前菜の「トローテインブルー」は、白ワインとスパイスで煮たヤマメ。雑味なく、ヤマメの深いコクとワインの酸味、ウイキョウやジャガイモの優しい甘みが呼応し合って、しみじみと旨い。

「アサリとクエのラサ」は、米粒状の小さなラサというパスタを使った料理。クエの豊富なコラーゲンの旨味とアサリのミルキーな滋味、そこにラサの甘みが加わった、笑わずにはいられない美味しさに満ちた皿。

「鳩のラグー リガトーニ」は、わざとゴツッとした固い食感に茹で上げたリガトーニ(表面に筋が入ったショートパスタ)が、鉄分豊かなソースを受け止める、痛快な皿。

特徴的なのが、「カーネデルリ」。トレンティーノ・アルトアディジェ州の郷土料理で、残り物のパンと小麦粉やチーズ、スペック(生ハム)などを混ぜた団子。パンと小麦粉以外は、身近にある季節のものを入れて、そのまま焼いたり、スープに浮かべたり、ソースを絡めたりと様々で、この日出されたのは「ポルチーニ茸のカーネデルリ」。スープに浮かんだカーネデルリを突き崩し一口飲むと、あまりの旨さに身震いがする。ポルチーニの香りが弾けて、ブロード(出汁)の滋味が広がっていく中、カーネデルリの素朴な甘みが溶けていく。

食べる人、郷土料理、食材、その三者を思いやる誠実が味に染みて、心を震わせる。恐るべし北イタリア料理。厳寒の地方ゆえ、これからの季節にはもってこいである。 ランチメニューは、千五百円。

東京都港区虎ノ門5-3-9 ゼルコーバ5‐101
電話=03(6432)4073
営業時間=11時半〜14時、18時〜23時
定休日=日曜日・祝日(月・土は夜のみ営業)
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