味の見聞録

月間アーカイブ:2013年10月
話題の新店(2)
中国料理
楽記
神宮前に香港が出現!
広東式焼物と自然派ワインの店

銀座「グレープ・ガンボ」、六本木の老舗ワインバー「祥瑞」といえば、フレンチをベースにした、ワインをグビグビと飲ませる料理を提供する、ワイン好きにはたまらない、連夜大盛況の店。残念ながら、三原小路の再開発のため「グレープ・ガンボ」は今年初めに惜しまれつつ閉店したが、その両店のオーナー・勝山晋作さんが、七月末、神宮前にオープンした新店が「楽記」である。

初めての試みである、広東式焼物とワインの店だという。キラー通りから路地を入ったところにある、地下一階、地上二階の店である。

店内に足を踏み入れ、まず目に入ってくるのは、左手にある厨房。たった四席のカウンターと厨房の間はガラス張りになっており、そこには、焼き上げられたばかりのチャーシュー、アヒル、豚バラ肉、ハト、鶏などがズラリと吊り下げられている。「まるで、香港!」と思われる方も多いのではないだろうか。

厨房には大きな炭火焼の釜が二つ並んで、常に稼働している。炭火で焼く釜が設置されている店は、日本にはそうはない。しかも、鶏もハトも特別飼育されたもので、わざわざ香港に行かなくても済むのではないかと思うほどレベルが高い。

「貴妃鶏(光鶏の特製醤漬け)」(半羽:六千円、一羽:一万二千円)は、日本で特別飼育された龍崗鶏を使い、特別のタレで茹で、注文が入ってから、さらに熱々の別タレに漬け込んだ料理である。

手で持って齧りつくと、優しい肉の滋味が滲み出す。鶏は、まだ加熱されたことに気づいていないのかもしれない。そう思わされるたおやかさがあって、肉がどこまでも自由である。玖瑰露酒(中国の蒸留酒「高粱酒」にハマナスの花を漬け込み、再蒸留したものに加糖し、水で酒精度を整えたリキュール)の甘い香りもたまらない。添えられた油漬け葱と一緒に食べてみよう。

そのほか、肉汁と甘辛い特製ダレが病み付きとなる「蜜汁叉焼(炭火釜焼チャーシュー)」千三百円、カリッと焼かれた豚バラ肉の皮がうまい「脆皮焼肉(皮付き豚バラ肉のクリスピー焼)」千三百円、「焼鴨(炭火釜焼アヒル)」(四分の一羽:千九百円、半羽:三千六百円)、「蟹肉冬瓜湯(蟹肉と冬瓜のスープ)」、「潮州凍魚(魚の冷製)」、「郊外油菜(季節野菜の炒め物)」などがお勧めである。

お酒は、ビールとヴァンナチュール(自然派ワイン)のみで、紹興酒はなしという潔さ。すでにもう、予約至難の人気店になりつつある。

東京都渋谷区神宮前3-7-4
電話=03(3470)0289
営業時間=[月〜金]18時〜22時半[土]15時〜21時
定休日=日曜日
話題の新店(2)
イタリア料理
il Magnifico
様々なリクエストに応えてくれる
素晴らしいサービスのイタリアン

広尾「ラ・ビスボッチャ」のシェフ、山下孝一さんと、サービスの大木高志さんが独立し、今年三月に開店した、北イタリア料理の店である。

細長い店内は、手前がテーブル席、中央が厨房とカウンター、奥がテーブル席という、変わった設えであるが、少人数ならぜひカウンター席をお勧めする。

迎えるはマネージャーの大木さん。彼の変幻自在なサービスが楽しい。その日の自分の気分を伝えれば、ぴったりのワインを選んでくれ、料理の説明も、すべて美味しそうに聞こえる。また、料理の皿数や分量、順番の相談、あるいはメニューにない料理を相談しても、できる限りアレンジしてくれる。そして何より、働くのが楽しくてしょうがない、という雰囲気が素晴らしい。

まず前菜に選んだ、フィレンツェの伝統料理「ランプレドット」千五百円は、煮込まれたギアラ(牛の第四胃袋)の脂のうま味が存分に楽しめる。

パスタは、すべて手打ちの生麺。「ストロッツァプレーティ、自家製サルシッチャとンドゥイヤのトマトソース」千五百円は、モチモチッとしたショートパスタに、サルシッチャ(唐辛子入りソーセージ)の辛味を効かせたトマトソースの料理。また、ある日の「ピーチ、本日の煮込みソース」千八百円は、ピーチという、うどんのような太いパスタに、ハトの肝と肉の濃厚なソースを合わせて、唸らせる。

ショートパスタでお勧めは、「お肉のラビオリ”ゴッビ“、黒トリュフのバターソース」二千円。餃子大の大きな半月型パスタが、トリュフを刻み入れたバターソースをとろりとかけられて、輝いている。食べれば、皮がもっちりとして美味しい。その皮とよく練られた餡のうま味が調和し、濃厚なソースと混ざり合い、そこへトリュフの妖艶が香り、顔がみるみるうちに崩れていく。

ゴッビとは、せむし男、腰のまるまったおじいさん、という意味だそうで、マリア・カラスとの数多い共演で知られる、イタリアのバリトン歌手、ティート・ゴッビのゴッビも同じ意味だそうである。本名なのか、公爵に仕えるせむしの道化であるリゴレットを演じるための芸名なのか? そんな話を聞きながら食べるのも楽しい。

メイン料理も、「ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ(牛炭火ステーキ)」六千八百円〜、「仔羊骨付きロースのグリル」二千四百円、「自家製サルシッチャのグリル」千六百円、「鮮魚のオーブン焼き、香草風味」二千六百円など、選ぶのに困る皿が並ぶ。

快活なサービスのもと、友人、恋人、接待と、目的を選ばないレストランである。

東京都港区麻布十番1-4-3 熱田ビル1階
電話=03(6459)1430
営業時間=17時〜23時 ※日曜のみランチも営業 12時〜14時
定休日=月曜日
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