味の見聞録

月間アーカイブ:2013年11月
話題の新店(3)
イタリア料理
Convivio
イタリアの伝統料理をベースにした
アイデアに富む皿が揃う

昨年十一月オープンのイタリアンレストラン。薄い緑色を基調としたダイニングは、「饗宴」の意味を持つ店名にふさわしい、シックで華やぎのある空間である。

シェフは、渋谷にあるリストランテ「BIODINAMICO」にてキッチンを任されていた辻大輔氏。修業先のトスカーナの郷土料理をベースに、アイデアに富んだ独創的料理が味わえる。月替わりのコースが、昼は三千五百円、夜は七千円。ある日のディナーコースをご紹介。

突出しは、一皿目が、サラミ、マグロのたたきにサルサヴェルデ(グリーンソース)、フォアグラのムースにブリオッシュといちじくのジャム。「新宿の花畑」と題した二皿目は、あやめ雪蕪、姫人参、焼いたグラナパダーノ(チーズ)を串に刺し、小さな植木鉢に活けてある。続いて、たこ焼に見立てたアランチーニ(米のコロッケ)。すでにこの三皿で、テーブルの雰囲気が和む。

前菜は、野菜とケッカソース(冷たいトマトソース)を添えた「ソプレッサータ」。豚の頭肉などを使ったパテで、様々な部位の食感が楽しく、しみじみとした美味しさに仕立てた、シェフの力量が光る逸品。

パスタは二種類。まずは、イカ墨を打ち込んだ生パスタを、イカの肝のソースで和えた、イカが持つ様々な滋味が押し寄せる痛快な一皿。次は、シェフのスペシャリテの「カーチョエペペ」。チーズ(カーチョ)と黒胡椒(ぺぺ)だけを使ったシンプルな料理だけに、互いの分量とパスタ生地のうまみが試される一品だが、辻シェフのそれは、モチモチとした生パスタのほのかな甘みに、チーズのコクと黒胡椒の刺激が効いて、笑い出したくなるうまさである。

主菜は、ぺヴェラーダソースとアメリカンチェリーを添えた、シャラン鴨のロースト。鉄分溢れる鴨の滋味を、チェリーの甘く酸っぱい味わいと、塩気の効いたソースが持ち上げる。

そして最後に、またユーモアに富んだデザートが登場。土に見立てたビーツのアイスとチョコクッキーに、小さなじょうろに入れたミントシロップを注ぐ演出である。

食事をしていれば、そこが新宿の喧噪の中にあることを忘れてしまう。ダイニングの他、厨房に隣接した個室もあり。サービスもワインのチョイスも的確でスマート。新宿でシックな夜を過ごすのに押さえておきたい大人の店である。

東京都新宿区新宿3-20-6 FSビル4階 
電話=03(3354)4774
営業時間= 12時~15時(13時L.O.)、18時~23時(20時L.O.)
※夜のみサービス料10%別途
定休日=水曜日・第3火曜日
話題の新店(3)
フランス料理
Anis
低温でじっくりと火を通した
素晴らしい肉料理がメイン

初台にオープンした、フレンチをベースとした本格的料理をカジュアルに楽しめるレストラン。広いテラス席、フローリングに厨房を囲む木のカウンター席。モダンなカフェのような店内は、実に心地よい。

シェフは、「ラール・エ・ラ・マニエール」出身の清水将シェフ三十八歳。夜のコースは、五千五百円と九千五百円。

スペシャリテは、鉄板の上で長時間焼かれる仔牛や仔羊など、肉の主菜。ある日のホロホロ鳥は、こまめに角度を変えながら骨からも火が通るように、四時間焼かれたもの。皮には、焼けた香ばしい香りがついているが、肉はどこまでもしっとりと、歯に優しい。齧りつくと、しなやかな筋肉がふるると躍動して、口に入り、柔らかな甘みが滴り落ちる。命がはらむ多様な甘みがある、素晴らしい肉料理。ただ長時間焼いただけではない、シェフの力量がうかがえる逸品である。

もう一つのスペシャリテは、サラダ。保湿性が抜群だという桐の箱で保管された葉類は、大きなボウルに入れられて、一番最後に登場する。苦み、甘み、みずみずしさ、香りを放ち、生き生きと舌に迫る。スプレーでかけるドレッシングも、酸味と塩味がピタリと決まり、野菜を生かす。

その他、前菜類、魚料理も繊細な味付けが光る皿である。

東京都渋谷区初台1-9-7
電話=03(6276)0026
営業時間= 11時半~14時半、18時~23時半
※夜のみサービス料10%別途
定休日=月曜日・第2日曜日
話題の新店(3)
鮨 銀座おのでら
全国から仕入れる優れた魚介と
スタッフの心地よいサービス

歌舞伎座を背に、東銀座の路地に五月にオープン。店主坂上暁史氏は、札幌の名店「すし善」出身。それだけに、北海道の魚介に精通し、また独自のルートを持って、他店にはない質の高い魚類が用意されている。

例えば、香りの高さにうっとりとなる茹でたての北海シマエビ、小さくて甘く凝縮感のある積丹のウニ、噛むとブリッと音を立てそうに身を爆ぜるボタンエビ、品がありながら豊満な甘みで魅了する毛ガニ、ワサビと葱、鰹節と醤油を合わせたものをまぶして食べる甘い白イカ、キンキの味噌あぶりの握り、脂が舌を翻弄するオオスケ(特に大きなキングサーモン)など。この店ならではの幸せである。

もちろん、北海道以外の地から良質の魚介を仕入れることも怠らない。優しい甘みに満ちた三重県安乗の宝彩エビ、二百五十キログラム以上の本マグロでないと味わえないという、鉄分の味わいが舌をキックするマグロ脳天肉の握り、小さくとも脂がグンと乗った舞鶴金樽イワシなど、「市場でいいものを見つけると、商売関係なくつい買ってしまいます」というご主人の言葉どおり、優れた全国の魚たちが待ち構える。

店はカウンター九席のみ。いつも笑顔と冗談を絶やさないご主人の人柄か、スタッフも気さくで愉快な方ばかりで、銀座といえど堅苦しさは微塵もなく、楽しく、くつろいで過ごすことができよう。

夜の予算は酒を飲んで、二〜三万円と安くはないが、これから銀座の行きつけを作ろう、あるいは接待で使える店を作ろうと考えている人には、料理の華やかさ、鮨の確かさ、ご主人はじめスタッフのサービスともに最適である。まずは、五千円の昼の握りから試してみるのも手である。

東京都中央区銀座5-14-14
サンリット銀座ビル2
電話=03(6853)8878
営業時間=11時~14時、17時~22時
定休日=水曜日
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