味の見聞録

月間アーカイブ:2014年04月
東京駅の駅弁
弁当
東京駅の駅弁

JR東京駅改札内「エキナカ」で売っている駅弁の種類は、世界一である。売り場も、コンセプトごとに分かれて数カ所あり、その種類は約三百種ともいわれる。厳選した七十品目を食べた中から優れたおすすめ駅弁を、売り場ごとにご紹介したい。

JR東京駅 構内
 ・GRANSTA
 ・ニッポンの駅弁
 ・駅弁屋 祭
東京駅の駅弁
弁当
GRANSTA

東京駅地下一階の丸の内と八重洲を結ぶエキナカゾーン「グランスタ」には、「浅草今半」、「ぎんざ泥武士」、「加賀料理 金茶寮」など、名店の味が気楽に楽しめるショップが軒を連ねる。
おすすめは、「味の浜藤」が展開する和惣菜専門店「てとて」のお弁当。グランスタの中だけに限らず、東京駅で売られている、魚がおかずの幕の内弁当としては間違いなく随一。おすすめの理由は五つ。
(1)合成保存料、合成着色料、化学調味料を一切使用していないこと。そのため後味のキレが素晴らしい。
(2)魚の質がいい。魚はどの弁当も分厚い切り身で入っており、魚自体の味がしっかりと舌に乗ってくる。この価格でこれだけ上質な魚を使っている弁当はない。
(3)味付けがしつこくない。弁当は保存性を考え、どうしても味を濃くしがちだが、的確な調味で素材を活かしている。
(4)野菜がおいしい。煮野菜がやわらかすぎず、本来の歯応えと香りがある。蕗や人参の煮物が殊にいい。
(5)弁当の基本であるご飯が、甘みがあり、素晴らしくおいしい。山形のお米「つや姫」を使用。
まずおすすめは「おいしい海苔弁当」(九百四十二円)。脂が乗った立派な紅鮭の塩焼に、青海苔が混ざった、「山形屋海苔店」の青とび焼海苔、香り高い「にんべん」の削り節。東京が誇る名店三店が、弁当の中でがっぷり四つ。それだけで十分ながら、玉子焼や野菜の煮物といった脇役陣も素晴らしく、一点の曇りなき弁当である。
変わったところでは「鯛わっぱめし」(九百三十三円)はいかがだろう。銀ひらすを炊き込んだ上品な味わいのご飯の上に、大きな鯛塩焼の切り身が一枚。鯛はほんのりと甘く、柚子皮や三つ葉が香りのアクセントとなり、飽くことがない。食べていくと、心が豊かになるような弁当である。
そのほか、「鮭かま塩焼弁当」(八百二十円)、「野沢菜とじゃこごはん弁当」「西京焼とあさりの春ちらし」(共に九百三十三円)、「おいしい西京焼弁当」(九百四十二円)、「かれい照焼弁当」(千円)、「桜えびと竹の子ごはん弁当」(千二百円)、「二色銀だら西京焼弁当」(千四百二十円)などのメニューが揃う。(※以上は、全て税抜き価格)

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ニッポンの駅弁

駅改札内一階、名店とコラボレーションしたレストランやスイーツなどのショップで構成される施設「グランスタダイニング」にある、「ニッポンの駅弁」専門店。中華の陳健一氏、フレンチの坂井宏行氏、イタリアンの本多哲也氏、日本料理の笠原将弘氏など、古今の味の匠=全国各地の老舗や気鋭のシェフ達と共に創り上げた駅弁が揃う。
一番のおすすめは「分とく山 津軽景色」(千四百円)。西麻布「分とく山」野崎洋光氏がプロデュースし、八戸の「吉田屋」が調整。「八戸小唄寿司」や「福を呼ぶ 海鮮萬両玉手箱」などで知られる、明治二十五年創業の駅弁屋である。
この駅弁売店共通デザインである白ボール紙の枠に、赤と黒で彩られた発泡材容器の弁当箱をはめこんであり、蓋を開けると中は二つに仕切られている。
半分がご飯。うるち米の茶飯の上は、鮭ハラス・三つ葉・イクラ醤油漬・とろとろスクランブルエッグで覆われている。鮭ハラスは脂が乗ってうまく、皮に二本入れた焼き目が香ばしい。甘く絶妙な半熟具合に仕上がった玉子とご飯、イクラを一緒に合わせて掻き込めば素晴らしい共演である。
半分がおかず。ウニの味がほのかについた「蒸しウニとカニ入り厚焼玉子」。しっとりと煮えた「昆布煮」。シャキッとした歯応えの「長芋の酢漬」。しみじみうまい「ごぼうの醤油漬」。ホッキ貝・胡瓜・わかめ・菊の「酢の物」。青菜の香りが生きた「春菊と人参の白和え」。イワシの香ばしい香りに酒が飲みたくなる「イワシの蒲焼」。濃厚なうま味の青森ブランド地鶏シャモロックの「若鶏のつみれ」といった布陣。
どのおかずも、甘すぎずしょっぱすぎず、かといって薄すぎず、味の抑制が効いていて、気持ちがほっこりとする。
「分とく山」はもう一つ、二つの長細い容器に盛り込まれた「匠の旬菜膳」(千五百円)も売られている。
こちらは、先付(数の子味噌漬、出汁巻玉子)、前菜(菜の花胡麻和え、なす田楽、きぬさや)、焼物(アワビ磯焼風、サバ白醤油焼、イカの黄金焼、ホタテ磯辺焼)、煮物(エビ利休煮、煮タコ)、御飯(寿司三貫、筍ご飯)と、品目多く豪華。

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駅弁屋 祭

一階「セントラルストリート」にある、駅弁専門店「駅弁屋 祭」。全国各地の有名駅弁や人気駅弁、期間限定駅弁のほか、店内の実演厨房で作る、できたての温かい駅弁など、百五十種類以上取り揃えられ、大勢のお客さんで大盛況。
牛肉弁当の中でおすすめは、茨城水戸の「常陸牛 牛べん」(千五十円)。常陸牛をすき焼風に仕上げ、ご飯の上にのせた駅弁である。この「駅弁屋 祭」で一番人気は、牛肉そぼろと牛肉煮をのせた、山形の名物駅弁「牛肉どまん中」(千百円)で、ほかにも、各地の銘柄牛を使った多彩な弁当が売られているが、最も牛肉の持ち味を活かしているのは、「常陸牛 牛べん」であった。
肉に厚みがあり、噛む喜びがある。脂身と赤身のバランスがいい。牛肉自体から味が抜けておらず、噛んでいくと風味が滲み出る。甘辛いタレの味付けが濃すぎずほどよく、そのタレが染みた、玉ねぎとご飯のおいしいこと。添えられた煮玉子、出汁がチュッと飛び出る、湯葉で巻かれた高野豆腐も微笑ましい味。なにを食べさせたいか、わかっている弁当である。
海鮮系では、新潟の有名駅弁「えび千両ちらし」(千二百円)がいい。手焼玉子の下に四種の寿司ネタが隠された珍しいちらし寿司である。
蓋を開けると、上に桜むきエビのおぼろがかかった玉子焼で一面覆われている。その玉子焼をめくると、ウナギ、コハダ、エビ、イカが現れる。その下が、おぼろ昆布が敷き詰められたご飯。ご飯は寿司飯で、蓮根とかんぴょうを混ぜ合わせたコシヒカリの精進合わせ。
香りある「ウナギの蒲焼タレ仕込」、〆具合が程よく、微かにワサビの刺激が効いた「コハダ薄切り〆のワサビ醤油からめ」、酢の塩梅が甘みを引き立てる、しっとりとした「蒸しエビの酢通し醤油からめ」、味が濃い「一夜干し塩イカ」。玉子焼の下に隠れた、それらの具材や寿司飯をほじりだしながら食べると、おいしいこと。具材を玉子焼にくるんだり、寿司飯と頬張ったりと、いろいろに味わえる実に楽しい駅弁である。

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