味の見聞録

月間アーカイブ:2014年08月
和朝食
和定食
金田中 草
ホテルの日本料理店でいただく
良質の優雅な朝食

 ホテル内の和朝食といえば、そう代わり映えがしない印象があるが、こちらは、季節を感じさせる極めて質の高い朝食(献立は月替わり)が、三千三百二十六円(税・サ込)でいただける。

 まず「冷搾り」として、竹筒に入ったジュースが供される。ある日は、グレープフルーツとオレンジ、リンゴのミックスジュース。冷たい果汁で胃袋が目覚めたところに、豆腐が運ばれる。おぼろ豆腐に豆乳を加え、醤油と生姜を少量かけた「豆乳豆腐」は、豆の甘みが漂う優しい味わい。

 そして副菜が登場する。丸い白磁の盆に季節の葉が飾られ、そこに白磁の箱が三段に重ねられている。皿に見立てた蓋には、しっとりと脂がのった大目鱒の塩焼きと、甘めの玉子焼きに甘酢漬け茗荷。

 一段目は、薄く同寸に切られ、丁寧な仕事が冴える野菜の沢煮。蓮根、ずいき、牛蒡、アスパラガス、黄ニラ。

 二段目は、ひじきと枝豆白和え、クラゲとドンコの胡麻酢和え、塩もみした白瓜と茄子と茗荷の新香、ふりかけるとご飯が進んで困る鰹の辛煮。

 三段目は牛ロースの時雨煮。甘辛く煮た上質の牛肉と新じゃがによる皿である。

 輝く炊きたてご飯も上等(茶粥も選べる)、シジミの赤出汁も味噌の香りが高い。

 白磁の盆ほか、ご飯や味噌汁には無垢材の椀が使われており、器からも朝の清々しさが漂う朝食である。

東京都渋谷区桜丘町26-1 セルリアンタワー東急ホテル2階 
電話=03(3476)3420
営業時間= [朝]7時?10時(L.O.)、[昼]11時半?14時(L.O.)、[夜]17時半?22時(L.O.)
年中無休(ホテルの営業に準じ、変更の場合あり)
和朝食
和定食
栩翁S
上質の魚とご飯と味噌汁
正統な日本の定食ここにあり

 全国から吟味した食材を、巧みな技で昇華させる、三十代の若い料理人が営む割烹。

 予約制(前々日まで)で朝食を提供。ご飯、味噌汁、小鉢、新香と、シンプルな構成だが、魚の質が素晴らしく、超一級の和朝食が九百円(税・サ込)とお値打ちでいただける。

 魚は三種類の中から選ぶ。例えば初夏のある日は、金目鯛、スズキ、アジ。

 アジの塩焼きは、福井産の三十センチほどもある大きな真アジ。炭火で焼かれたそれは、皮に箸を立てると、パリッと身に入っていく。甘いうま味の尻尾の部分、脂がのった背側の部分、香ばしい皮としっとりとした身を一緒に口に入れ、すかさずご飯を掻き込むと、思わず笑みがこぼれる。

 一方、静岡産の金目鯛の照り焼きは、締まった身が舌の上ではらりはらりと舞って、柔らかな甘みを滲ませる。

 添えられるは、炊きたてのご飯、季節を感じさせる新香に、香り高い味噌汁、しんとり菜のおひたしと、一点の曇りなき正統な日本の定食である。

 食べゆくうちに姿勢が正され、体の中が清らかになっていく。凡百の焼き魚にはない品のある後味が、海に囲まれし国の幸せを実感させる。

東京都港区南青山7-14-6南青山ビル1階 
電話=03(6805)0856
営業時間=[朝・月?金]9時?10時半(L.O.)、[夜・月?土]18時?23時(L.O.)
定休日=日曜日・祝日
和朝食
和定食
八雲茶寮
心和む空間で
簡素な贅沢を味わう

 八雲に風情ある佇まいを見せる一軒家。夜は紹介制の和食店であるが、店内の茶房にて供される「朝膳」千二百円(税・サ別)は、紹介なしでいただける。

 店内からは、大きな窓越しに朝日を浴びた輝く緑を望む。その光と影が織りなす空間でいただく食事は、心が和む。

 ある日の献立は、ご飯(または粥)、味噌汁(油揚げと三つ葉)、干物(めざし)、季節の一品(ひじき)、飯の友(塩昆布、柴漬け、梅干し、ちりめん山椒など)という構成で、禅僧が用いる応量器に盛られる。

 至って素朴ながら、いずれもしみじみとおいしく、簡素な贅沢を噛み締める。中でもご飯が素晴らしい。輝いた米粒が、一粒一粒際立ちながら一致団結し、甘く香る。香り高い味噌汁とともにおかわりは自由。ちりめん山椒などで、二膳目を食べるのもいいだろう。

東京都目黒区八雲3-4-7
電話=03(5731)1620
営業時間=9時?17時(L.O.)
※朝膳は9時?11時(L.O.)
定休日=日曜日・祝日
和朝食
和定食
山田チカラ
何杯もご飯をおかわりしたくなる
精妙な調理が施された料理

 南麻布の裏路地に店を構える、人気の割烹。五月のGW明け?九月限定で、朝食を出されている。要事前予約。三千八百円(税込・サ別)。

 焼き魚を中心に、厳選された食材に精妙な調理が施された料理が並ぶ。

 ある日の焼き魚は、トキシラズ。品のいいうま味に、ご飯が恋しくなる。トキシラズと盛り合わせているのは、カボチャ、蕪、ヤングコーン、アスパラ、茄子、ドンコ、人参の焼き野菜に、厚揚げ、プチトマト、茗荷、水茄子。いずれの野菜も味わいが強く、香り高い。

 添えられた四つの小鉢は、マコガレイと蓴菜の酢和え、里芋と冬瓜とスナップエンドウの鶏おぼろあんかけ、温泉卵、胡麻豆腐。いずれも丁寧な仕事が光る。

 さらに、珍しいビーツのきんぴら、ウニと湯葉という、二つの小鉢が供される。

 ご飯も甘く香っておいしく、赤出汁は質の高いシジミに、味噌の香り高く、しみじみとしたうまさが広がる。新香は、胡瓜、蕪、人参、梅干し、刻み柴漬け。また別皿で、結晶塩、山椒、胡麻一味、醤油、ちりめん山椒、ワサビも添えられ、何杯もご飯をおかわりしたくなる。最後は、番茶と桃と金平糖で締めくくられる。

東京都港区南麻布1-15-2 
電話=03(5942)5817
営業時間=[朝]8時?12時(L.O.)、[夜]18時?24時(L.O.)
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