味の見聞録

月間アーカイブ:2014年09月
二〇一四年話題の店(1)
フランス料理
LA BONNE TABLE
食材の生命の息吹を感じさせる料理
「おいしい食卓」を生むレストラン

 今春、「コレド室町2」にオープンした「ラ・ボンヌ・ターブル」は、斬新な料理でフランス料理通を唸らしてきた西麻布の星付きフランス料理店「レフェルヴェソンス」の生江史伸シェフが手がけたレストランである。

 店内は天井が高く、ランチ時は陽光が入って、実に清々しい。「生産者とお客様の距離を縮める」。そんなレストランを目指すことがコンセプトで、日本国内の優れた生産者の食材を、シンプルにモダンに創作した料理が並ぶ。

 お昼のコースは三千六百円(サービス料別途)で、前菜二品、主菜三品、デザート三品から、それぞれ一品ずつを選ぶ、プリフィクススタイル。

 まず運ばれてくるのが、豊富な葉類、根菜類など数種が盛られたサラダである。野菜のみずみずしさが弾け、力強い苦みや甘みなどが開いて、味蕾が刺激され、休んでいた味覚がリセットされる。

 ある日の前菜は、「炭火で軽く炙った鰆、エコファームアサノ(千葉県八街市)から届いた牛蒡とそのピュレ 焼きそら豆とその葉」。牛蒡が主役の皿は、純粋な土の香りに満ちていて、それが鰆の炙った香りと共鳴する。そして、そら豆の甘い香りがそこに流れ込む。

 主菜は、「柿木畜産(岩手県久慈市)から届いた短角牛の尻尾の赤ワイン煮込みとキタアカリ(じゃがいも)、蓮根と春菊のパイ包み焼き アロマレッド(人参)のソースと焼きリンゴ、梶谷農園(広島県三原市)から届いたハーブをたっぷりのせて」。

 主役であるはずの牛テールパイは端に置かれ、中央には人参のソースがたっぷりと敷かれている。主役は人参なのである。パイにソースをたっぷりつけて食べれば、ほっこりとした気分になる。皿のデザインはモダンだが、味わいはどこか懐かしい温かみに満ちている。そこが新しい。

 また別の日の前菜は、「炭で炙った鰹、サザエのドレッシングと三陸のワカメ、すりつぶした焼き茄子、オカヒジキ、フルーツトマト、ニイクラファーム(西東京市)から届いたバジルレッドルビン」。本来、主張の強い鰹が、サザエとその肝、茄子の甘みだけを自然に表に出させたソースや焼き茄子と出合うと、いからせた肩をほどき、やさしく胃袋へと収まっていく。食材を生かす仕事を施しながら、しかし、決してうま味を過剰にしない料理が素晴らしい。

 一方主菜は、「花愁豚のロースト」。一口齧ると、雑味のない綺麗な肉汁が舌に滴り、そのうまさにのけぞる。次に、ほうれん草のソースを絡めて食べれば、豚肉が穏やかな滋味に変わる。

 人の手をかけながら、自然に近づける。肉も魚もそれ以上の味にはしない。真の意味の自然な味わいが五感を刺激し、都会生活で鈍化した感覚に養分を与えてくれる料理。生命の息吹を感じさせるデザートも含め、まさに店名通り、「おいしい食卓」を生むレストランである。

東京都中央区日本橋室町2-3-1 COREDO室町2 
電話=03(3277)6055
営業時間=11時半〜13時半(L.O.)、17時半〜21時半(L.O.)
年中無休
二〇一四年話題の店(1)
イタリア料理
La TRIPLETTA 
粉の香り豊かな驚くほど軽い生地
多彩な本格ナポリピッツァ

 武蔵小山はここ数年、さまざまな面白い新規店ができている地域である。

 オーナーであり、ピッツァヨーロ(ピッツァ焼き職人)でもある太田賢二氏は、ナポリの名店「マリーノ」で修業し、帰国後は南青山のピッツェリア「ナプレ」で統括ピッツァヨーロを務めた後、今年二月に自分の店をオープンした。

 彼の焼くナポリピッツァの特徴は、焦げの香りに邪魔されることなく、粉の甘い香りが豊かであり、しかも生地を食べた感覚が軽いことにある。

 これは生地の加水量の多さによって生まれるものだという。生地のほとんどは粉と水でできており、加水量=水の比率によって、発酵、及び焼成の段階で違いが出てくる。加水量が多い=水の比率が高い生地は、焼いている間に蒸発していく水分量の比率が高くなり、生地が軽く仕上がるという。

 もちろん、ただ水分量を増やせばいいということではなく、その加水量に応じて発酵、焼き方、窯の温度などを適切に合わせなければ逆に焦げやすく、味わいのない生地になってしまうのである。

 また、加水量が多いと生地がやわらかく、だれやすくなるので、その分、伸ばすときに技術を要する。その技術がないと打ち粉がどうしても多くなり、結果、打ち粉が焦げるだけで生地の香りを遮ってしまう。この打ち粉をいかに付けずに焼くかが、大切なのだという。

 その生地の実力を実感するために、まずは前菜で、揚げたピッツァと野菜を合わせた「アンジョレッティ」を頼んでみるといいだろう。カリッとした表面と中の空気を含んだ生地の軽やかなこと。揚げてあるのに油っぽさをまったく感じないのである。

 ナポリピッツァのメニューは、モッツァレッラベースの白い「ピッツァビアンカ」が十八種類、トマトソースとモッツァレッラによる「ピッツァロッサ」が十七種類。

 定番の「マリナーラ」九百円や、「マルゲリータ」九百五十円もおいしいが、おすすめは、チコリ(豚バラ肉のコンフィ)をのせた「ポパイ」や「プレフェリータ」(共に千六百五十円)。カリッと揚げられた豚バラ肉の脂がおいしく、それがモッツァレッラや薫製スカルモッツァチーズと合う。

 また、モッツァレッラ、ゴルゴンゾーラ、ソーセージ、サラミ、トレビスがのった「ロザータ」千七百五十円もいい。トレビスのほのかな苦み、ソーセージとサラミのうま味、モッツァレッラ、ゴルゴンゾーラの塩気が見事にまとまっていて、噛み締めると思わず顔が崩れる。

 昼は、十種類のピッツァがドリンク付きで千円から用意されているので、そちらから試してみてもいいだろう。
夜の前菜は、新鮮な内臓を使ったピリ辛のモツ煮や、山口から届けられる魚介類の料理などがいい。また、炭火焼きのサルシッチャや牛肉、羊肉にマカジキ、そのほか鶏モモ肉の釜焼きといった、主菜も充実している。

 人気店ゆえ、夜は予約が望ましい。

東京都品川区小山3-13-12
電話=03(6451)3537
営業時間=11時半〜14時半(L.O.)、17時半〜22時半(L.O.)
定休日=第3火曜日・不定休
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