味の見聞録

月間アーカイブ:2015年03月
大阪新進気鋭のフランス料理店
フランス料理
アドック
勇猛さに繊細さが加わった
多彩な料理に心がときめく

 西区土佐堀「トゥールモンド」で骨太なビストロ料理を楽しませてくれた高山龍浩シェフが昨年店を閉め、九月に店名を一新し、中之島に場所を移してオープンした店。緑を望み、自然光が燦々と店内に差し込む窓、高い天井、白と木を基調とした内装、広々ととられた客席。郊外のレストランに出かけたようなくつろぎがある。

 昼は五千円、夜は一万二千円のおまかせコースのみ。ある日の構成は以下の通り。

 テーブルには、食材だけが書かれたメニューが置かれている。「河豚、豚」と題したアミューズは、細長い皿に小石を敷き、枯れ木が立ち、四つの料理が並んでいる。白子のアイスクリームと豚脂の泡を合わせた料理。河豚のタルタルに鶉玉子の目玉焼き、豚足をペーストにして焼き、テュイル(煎餅)状にしたものを合わせた料理。河豚と豚のフロマージュ・ド・テット(煮凝り)。河豚を豚バラの薄切りで包み、竹皮の粉をまぶして丸め、トリュフに見立てた料理。漢字にすれば豚同士というユーモアと、両者の相性を感じさせる皿である。

 続いて、「タラバガニ、人参、みかん」。微かにクミンを効かせた二種類の人参のソース、煮た金時人参、人参の薄切り、紫人参の細切りとローストしたみかんを、茹でたタラバガニと合わせた料理。タラバガニの甘みが、各種人参の甘みやみかんの酸味と出会い、エレガントな艶を感じさせる。

 次は「アンディーブ、トリュフ、パン・デピス」。アンディーブ(チコリー)とトリュフを何層かに重ね合わせ、生ハムとパン・デピスの粉と泡、トリュフソースを添えた料理。間に挟まれたクルトンとバナナの甘みがアクセントとなり、心和ませる。

 「本州鹿のラビオリ」は、鹿肉を詰めたラビオリと鹿肉のソーセージに鹿肉のコンソメを注いだ料理。脂の少ない鹿肉ならではの凝縮した肉の香りと滋味溢れるコンソメを飲みながら、ソーセージやラビオリを噛み締める。素晴らしき鹿の三重奏である。

 魚料理は、「鰆、キャベツ」。しっとりと火を通した鰆にサボイキャベツをのせ、アサリ、マーシュ(葉野菜)、サフランのソースを添え、アクセントにガラムマサラを散らした皿。鰆の甘みと、キャベツの甘みと微かな苦みが混ざり合い、春の訪れを予感させる。

 肉料理は、「仔鳩、季節の野菜」。肉焼き名人である高山シェフの本領発揮。ロゼに仕上がった仔鳩に、仔鳩のジュで作ったソースと内臓のソース、ビーツ、セルフィーユの根、チーマディラーパ(菜花)が添えられる。しとやかさの中に命のあがきを感じさせる、堂々たるフランス料理である。

 続いて「トゥルトフロマージュ」。こんがりと焼いたバター生地の間に、サントモールチーズとクリームを合わせたものを挟んだ皿。思わず顔が緩む味わいである。

 以前の男らしい勇猛な味わいに、繊細なエスプリを感じさせる色っぽい料理が加わった、ときめく瞬間があるコース構成となっている。

大阪府大阪市福島区福島一の一の四十八 
電話=06(6225)8814
営業時間=12時~13時(L.O.)、18時~20時半(L.O.)
定休日=水曜日 
※サービス料5%別途
大阪新進気鋭のフランス料理店
フランス料理
ラ・シーム
モダンの根底に古典の哲学
華麗で品格あるフランス料理

 閑静なオフィス街に佇むレストラン。高い天井を持つ、木と白を基調とした内装の広々とした店内には、アンティークの鞄や鳥かごなどがさりげなく飾られている。テーブルの上には周りにドングリを散らした一輪挿しが置かれた風景と相まって、どこか田舎のオーベルジュに出かけたような、懐かしさと温もりが醸し出されている。

 フランス料理のエスプリに満ちた、高田裕介シェフの作る、ある日の一万八百円のコースは以下の通り。

 アミューズは、細長い木版に五つの料理が並べられる。白人参のムースを挟んだカモミールのマカロン。ブーダンノワール(腸詰め)を挟み込んだ、トリュフ状にまとめた竹炭パン。ビーツのムースとカリッと焼き上げた極薄のビーツ。生ハムを包んだパプリカ風味の揚げラヴィオリ。レーズンのペーストを入れた半月状のパイ。いずれも、香りと食感の妙があって食欲を刺激し、続く料理への期待を高める皿である。

 前菜四皿の一品目は、「菊芋のヴルーテ」。細かく刻んだ椎茸と椎茸のチップが添えられたスープは、優しい素朴な甘みに満ちていて、心を温める。

 二品目は、「穴子とカリフラワー」。甘いソースを絡めた北海道産の分厚く逞しい穴子と、添えられたカリフラワーのムースの甘みが出会い、穴子がエレガントな別の顔を見せる逸品。葱の香りをつけたパウダーやオゼイユ(酸葉)の香りなども心憎い。

 三品目は、「フォアグラのテリーヌ」。人参のソースと、紫人参にリースリングを混ぜた甘酸っぱいソース、小さい立方体にカットしたカカオ風味のブリオッシュ添え。優しい人参の味わいと、カカオの苦みがアクセントとなり、滑らかなフォアグラの魅力をさらに深めた料理である。

 四品目は、「トレビスと豚足」。豚足、セップ茸、茄子のファルスをトレビス(若菜)で包んでパリパリに焼き、玉葱と菊芋の甘みに満ちたソースを添えた皿。茸のうま味、豚足と茄子の甘みを、ラディッキオの苦みが際立たせている。

 魚料理は、「ハタのポワレ」。レフォール(西洋山葵)のソース、菜の花のソース、菜の花のマスタード和え、山葵菜のフリット添え。ハタの淡く品のいい味を、レフォールの刺激と菜の花ソースの苦みが引き立てる。苦みや刺激を纏わせて、食材を輝かせる。まさにフランス料理の醍醐味である。

 肉料理は、「ブレス鶏」。トリュフを挟んだ胸肉と、ウイキョウとトマトと生姜のジュレをのせた腿肉。穏やかな滋味の胸肉にトリュフで艶をつけ、片や、強い滋味の腿肉に野菜を合わせて優しさを引き出す。これもまたフランス料理の魅力であろう。

 緻密な計算が活きた高田シェフの料理は、モダンな盛りつけや調理技術によって、一見現代的でありながら、古典フランス料理の哲学が底辺に脈々と流れていて、確固とした華麗さと品格で舌に迫ってくる。

 ランチコースは五千三百円から。

大阪府大阪市中央区瓦町三の二の十五 
瓦町ウサミビル一階
電話=06(6222)2010
営業時間=12時~13時(L.O.)、18時半~20時(L.O.)
定休日=日曜日(祝日不定休) 
※サービス料5%別途
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