味の見聞録

月間アーカイブ:2015年06月
ポテトサラダ酒場
居酒屋
羅無櫓(らむろ)
居酒屋界のマッターホルン
皿の上にそびえ立つ白い山

 四谷三丁目交差点から徒歩三分ほど、粋な風情が残る荒木町柳新道通りの路地にある、名焼酎酒場。焼酎ブームのはるか以前より、数多くの焼酎を揃えて人気を呼んでいた店。壁一面には、二百種近い焼酎の一升瓶が並んでいる。十席ほどのカウンター席は、山男でもあるご主人・官兵衛さんの人柄に惚れてやってくる常連でいつも賑わっている。

 まず出されるのは、お盆の上の小皿に盛られた先付三種。ポテトサラダにゴーヤのおひたし、煮イカという日もあれば、きんぴら、おから、ひじき煮という日もある。そのどれもにきっちりとした仕事が施されており、味がしっかり舌に乗る。

 単品でも頼める「ポテトサラダ」五百円の姿は、居酒屋界のアンナプルナかマッターホルン。皿の上で、白い山がそびえ立つ。白き頂に箸を突っ込めば、潰れた芋の香りに満ち満ちて、思わず笑いがこぼれる。その甘みの加減が芋焼酎とも実に合う。

 焼酎を飲むならまずは、店のおすすめ「前割り焼酎」のぬる燗はいかがか。「伊佐大泉」などの芋焼酎六に対し、ご主人が住んでおられる高尾山で汲む湧水四で割り、それを甕で四日間寝かせて馴染ませた前割りは、ふわりと芋の香りが顔を包み、口当たりまろやかで、酔いが優しく回っていく。

 肴は、刺しの入った馬刺や、香ばしい小アジの素揚げ、ほのかな甘みがクセになるさつま揚げのほか、ウルメイワシ、アゴ、鮭とばといった酒泥棒が多数揃い、焼酎が進むは必至。

東京都新宿区荒木町7 
電話=03(3358)9515
営業時間=18時~23時半
定休日=土曜日・日曜日・祝日
ポテトサラダ酒場
居酒屋
青山ぼこい
心の内からほっこりとする
後を引くおいしさ

 青山の地で、一九六八年の創業以来、四十数年営む酒亭。「ぼこい」は漢字では「母恋」と書く。「お母さんの味が恋しくなったら来てほしい」という先代の想いが込められている。現在は、兄弟二人で営んでおられ、岡本太郎氏をはじめ数々の著名人に愛された味は、良い酒亭がない青山界隈で、今も変わらず多くの人に支持されている。

 「ポテトサラダ」六百二十円は、姿は一見普通だが、料理の引き算ができた〝ほどの良さ〟で、食べると心の内からほっこりとするおいしさ。芋の香り、玉子のうま味、両者を引き立てるマヨネーズの味、ベーコンの隠し味。なにを食べさせたいのか明確であり、料理としての均整美がここにある。マヨネーズに混ぜた卵黄の甘みやベーコンを炒めた油のコクが効いていて、後を引くこと間違いなし。

 そのほか、刺身類、季節の野菜料理の数々や、「若鶏の竜田揚げ」、「牛肉豆腐」、「蟹クリーム春巻」、「自家製五目がんも煮」、「自家製アジの干物」など、ひと味違う味わいが数多く待っている。

東京都港区南青山5-13-2 池田ビル2階 
電話=03(3407)2031
営業時間=[月~金]18時~24時(23時LO)[土]18時~23時(22時LO)
定休日=日曜日・祝日
ポテトサラダ酒場
居酒屋
高太郎
日本酒に合うように作られた
玉子の薫製香広がるうま味

 二〇一一年、大人の居酒屋が少なかった渋谷に開店以来、店主・林高太郎さんによる素晴らしい料理と厳選した日本酒で、連夜満席の人気店。

 まずは突出しから飲兵衛の心を捉える。季節替わりの豆と青菜の浸しは、旬の食材への敬意に満ちて清々しく、「さあ、酒を飲むぞ!」と、スイッチが入る。

 厳選した日本酒に合うように考えたという「燻玉ポテトサラダ」七百円は、マスタード風味のドレッシングがかかり、その名の通り、半熟の燻製玉子が乗っている。まずはポテトサラダそのもののうまさを味わい、次に玉子を崩して混ぜ込みながら食べると良い。芋の甘みに目を細め、燻製香が次第に広がって、うま味が膨らんでいく。そこへ「七本槍(しちほんやり)」のぬる燗などを合わせれば、酒飲み冥利に尽きると膝を打つ。

 そのほか、日々吟味して選ぶ刺身、香りが素晴らしい上品な脂の焼き大穴子、豊かな肉汁と酒がぴたりと合うメンチカツなど、逸品揃い。

 締めには、香川県出身の店主が毎日打つ「讃岐うどん」が待っている。

東京都渋谷区桜丘町28-2 三笠ビル1階 
電話=03(5428)5705
営業時間=18時~翌2時(翌1時LO)
定休日=日曜日・第一月曜日
ポテトサラダ酒場
バー
Bar Shanks
塩レモンハイボールに合わせる
大人のための〝夜のポテサラ〟

 小田急線参宮橋駅前ビルの螺旋階段を上った二階にある小さなバー。

 珍しいモルトウィスキーの数々、希少なビール、新鮮なフルーツを使ったオリジナルカクテル、そして、店主・芳賀雅紀さんが考案する、個性的な料理が揃っている。

 「スモーキーポテトサラダ」五百四十円もその一つ。一見、普通のポテトサラダのようだが、じゃがいもとマヨネーズが抱き合った甘みを噛みしめれば、中に潜んだいぶりがっこがカリリと当たり、燻製チップスがパリンと弾ける。その燻製香が鼻から抜けて、気分はすっかり夜となる。

 合わせるのは、アイラモルトのラフロイグをベースに作った「塩レモンハイボール」。最初は、レモンの酸味とソーダの痛快さが広がり、たちどころに口は爽やかになる。しかし、その後にラフロイグが顔を出し、スモーキーなピート香と、ポテサラの燻製香が手を結んでにやり。

 この繰り返しがクセになる、まさに〝夜のポテサラ〟。酒を愛してやまない、大人たちの特権である。
そのほか、プレス機で潰して肉のうま味を閉じ込めた、どこにもない「スモーキースタンプバーガー」千八十円も傑作。

東京都渋谷区代々木4-1-5 参宮橋駅前ビル2階 
電話=03(3374)7374
営業時間=[月~金]18時~翌3時(翌2時LO)[土]18時~24時(23時LO)
定休日=日曜日
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