味の見聞録

月間アーカイブ:2015年07月
二〇一五年開店の話題の店
フランス料理
Restaurant Celaravird(セララバアド)
日本の食材と海外で学んだ
技術を合わせ、新しい日本を表現

 渋谷区上原の閑静な住宅街に佇むレストラン。エントランス、店内から望む中庭など緑多き店。オープンキッチンの店内は、シェフズカウンター二席とテーブル十二席。一月にオープンしたが、シェフの経歴と、飲食店では珍しくクラウドファンディングで開店資金を集めるなど話題も重なり、すでに半年先まで満席という盛況ぶりである。

 橋本宏一シェフは、スペインの「エルブリ」や「マルティン・ベラサテギ」などで修業し、帰国後は「レストランサンパウ東京」を経て、マンダリンオリエンタル東京の「タパス モラキューラバー」の料理長を務め、開店前は『サンペルグリノ世界のベストレストラン100』で一位となったデンマークの「ノーマ」で修業した。

 こうした経歴を見ると、最新分子料理を想像するかもしれないが、盛りつけにはそれらのエッセンスはあるものの、料理自体はそうではない。既存の料理を中心に、日本の食材を使って洗練された料理へと昇華している。

 コースは、六千八百円(税・テーブルチャージ料別)の十~十二皿構成。オープンにあたり全国の生産者を回って集めた食材を使い、季節ごと年四回コース内容が替わる。
春のコースでは、まずクッキーの缶が置かれる。蓋を開ければ「昆布のタルトとホタルイカ」。ドライトマトのうま味とフヌイユ(ウイキョウ)の香りを加えた、潮の香り満載のホタルイカを楽しむ料理である。
 次が「ストーンポテト」。石板の上には石が積み上げられているが、その一つが石に見せかけたジャガイモ。炭の粉で皮を作り焼き上げたもので、パセリバターをつけて食べればホクホクと甘く、笑顔がこぼれる。

「春の高原」と題した皿では、円筒になったガラス皿の中に花が飾られ、中央には長野産のフロマージュブランとローズウォーターとクランベリー、蜂蜜で作った泡状のソースが置かれる。まさに高原の澄んだ空気を吸い込むような一皿である。

「春の大地Ⅰ」は、丸太の皿の上に土に見立てた黒オリーブとパンの粉が敷かれ、野菜と山菜の天ぷらが芽生えるように立てられる。アボカドと蕗味噌を合わせたソースの塩梅が実にいい。

「スモークエッグ」は、密閉瓶に桜チップの燻煙と温泉卵を入れた料理。クルトンのスプーンが面白い。

「オオミゾ貝 ウド 海藻」。ウドと青海苔のリゾットに貝が載せられるが、なにより蕗の香りと食感がよく引き出されていて、季節に食べる喜びを与えてくれる。その後、丁寧な仕事が光り、しみじみとしたおいしさがあるビスク「才巻海老 菜の花」、真空調理した「短角牛 そら豆 筍」と続く。

 デセールは、牛蒡のガトーショコラと生姜のクランチとアイスクリームが石板に置かれた「春の大地Ⅱ」。そして、フランボワーズと山椒のギモーブ、パチパチと口の中で弾ける、オレンジとショコラ、オリーブオイルグミ、よもぎマカロンが載せられた、ミニャルディーズでコースは終了する。

 ワインはペアリングで、グラスでお願いするのがいいだろう。

東京都渋谷区上原2-8-11 TWIZA上原1階 
電話=03(3465)8471
営業時間=19時コーススタート~22時半
定休日=月曜日を基本に月6回 
※完全予約制
二〇一五年開店の話題の店
フランス料理
SUGALABO(スガラボ)
質の高い日本の食材の息吹が
生き生きと伝わる健やかな料理

 六月に開店した「SUGALABO」は、須賀洋介シェフの実験室という意味合である。

 一九七六年生まれの須賀シェフは、二十代前半でジョエル・ロブション氏と出会い、その才が認められて、六本木ヒルズ「ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション」開店時のエグゼクティブシェフを務める。その後、ラスベガス、NY、台北での新店立ち上げの責任者を任され、最後はパリ本店総料理長となる。そして去年ロブション氏のもとを離れ、今年この店をオープンした。

 “ラボ”と名乗るだけあって、壁にパイプをめぐらせ、計器など配置したインテリアは刺激的である。完全なるオープンキッチンで、八席のカウンター席はシェフズテーブルとして、須賀シェフが目前ですべての調理をする様子が見て取れる(六~八人用テーブル席と個室もあり)。

 若くして世界トップレベルの店を仕切ってきた須賀シェフの料理は、食材の声に耳を傾け、素直に伸び伸びと持ち味を引き出した、実に健やかな料理である。日本全国の優れた食材を探して紹介することを目的としており、今後は毎月数県ずつに絞り、その県の生産物だけを使ったコース料理を組み立てていく予定だという。

 五月のプレオープンでは、愛知県、愛媛県、広島県を中心に料理が出された。コースは全十皿。

 アミューズとして出されたのは、豚の背脂と花山椒をのせたグジェール、さっと焼いた石川県のイワシの切り身。そして、味付けの妙で見事に素材を生かした対馬沖本マグロのタルタルと、互いのミネラルが呼応し合った味わいが素晴らしい愛知産ミル貝と北海道産白アスパラガスを和えた小鉢。 

 次に、刻んだ鹿児島上甑(かみこしき)島沖アオリイカに、広島大崎上島産レモンとあくまトマトを合わせた皿は、レモンの爽やかな甘みとイカのじっとりとした甘みが抱き合って、思わず顔が崩れる。

 広島岡本農園のアスパラガスの風味をシンプルに黄身?油で味わい、長崎五島列島沖のノドグロのうま味は、下にソースのように流してあるアサリの養分と蕗など春野菜の香りに持ち上げられる。

 そして、噛む喜びを感じさせるクリッとした食感の山形産和牛ハラミは、埼玉県三郷産の姫人参が持つ土の力と同化しようとする。

 広島さだしげ市民農園の頭崎米(かしらさきまい)の丸い甘みが出たリオレ(牛乳で煮たリゾット)は、煮て添えた佐藤錦の甘酸っぱさや、熟成貴醸酒のサバイヨンと、自然な球体を作って、新たなうま味を膨らます。

 といったふうに、全てにわたって農園や生産地の名前が明記され、一つ一つ須賀シェフが愛をこめて説明してくれるので、よりおいしくなる。

 どの皿も、食材の息吹が生き生きと伝わり、あらためて日本の食材の質の高さに、目を瞠る。「SUGALABO」は、〝シンプル〟と〝素直〟が持つ芯の太さを考えさせられるラボである。

東京都港区麻布台1-11-10 日総第22ビル1階 
電話=非公開
紹介制
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