味の見聞録

月間アーカイブ:2015年11月
ステーキの新店
ステーキ
BISTECCHERIA ENOTECA ilMORO
トスカーナ名物
炭火焼き「正統ビステッカ」

「毎日肉を焼くのが、楽しくて楽しくてしかたない」。「イルモーロ」の大田勇樹シェフは言う。こういうシェフに焼かれる牛肉は幸せであり、食べる我々も幸せである。

 穀物だけで育てられたUSブラックアンガスビーフは、Tボーン(骨付きのサーロインとフィレ)が千九百円、Lボーン(骨付きのサーロイン)が千七百円。和牛とアンガス牛の交雑種の熊本阿蘇ブラックブラックのTボーンが千九百円、骨なしが二千二百円。以上は百グラムの値段で、六百グラム(骨なしのみ二百グラム)から注文できる。

 これらの肉を最上に焼くために考えられたスペイン製の炭火炉で、休ませながら三十分かけて焼く。出来上がった〝正統ビステッカ〟は、表面はガリッと香ばしく、中は赤き肉が艶めいている。噛めば、がっしりとした肉のエキスが歯や舌に絡み付き、食べ進むごとにコーフンが高まっていく、ステーキの醍醐味が味わえる。

 ソースは、「熟成バルサミコソース」「四種コショウのペッパーコーンソース」「数種の香草で作るサルサヴェルデ」「国産レフォール」の四種類から選択できる。

 ステーキ以外では、口に入れた瞬間に脂がするりと甘く溶けていく「幻の豚チンタセネーゼの生ハム(二十四カ月熟成)」二千三百円が素晴らしい。

 温かい料理でおすすめは「ランプレドット」千六百円。ギアラ(牛の第四胃袋)を煮込んだフィレンツェの名物料理である。クニャリと煮込まれたギアラの食感が歯を喜ばせ、優しい野菜の甘みと丸いトマトのうま味が包み込む。下処理も確かで、上品に作られており、内臓の苦手な方でもおいしく食べられるだろう。

 牛肉の他、比内地鶏、鹿児島黒豚、オーストラリア産サフォーク種のラム肉などの炭火焼もいい。また、手打ちパスタ類も充実しており、ナッティな甘い熟成香が漂う肉の小片がゴロゴロと入った「熊本阿蘇赤牛の熟成ラグー ボローニャ風ラザニア」や、黒トリュフの香りと茸類の香りが溶け合って、口に運ぶ度に陶然となる「イタリアウンブリア風 黒トリュフ香る茸のラグーのタヤリン」などがおすすめである。

 昼は、「自家製生パスタランチ」千二百円、「炭火焼ミートランチ」(オージー牛サーロインor鹿児島産黒豚肩ロース)二千五百円などが用意されている。

「ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ」は、ルネッサンス期のフィレンツェで生まれたTボーンステーキで、富の象徴だった。貴重な成牛を潰し、一番いい部位を味わうのは、メディチ家など繁栄を誇った資産家たちにとって、至上の贅沢だったのである。当時、一枚が百万円近くもしたという。そんな贅沢に、現代の我々は銀座の真ん中でお値打ち価格でいつでも出会える。なんと幸福な時代だろう。

東京都中央区銀座5-13-12 サンビル1階 
電話=03(3524)8560
営業時間=[平日]11時半~144時(L.O.)、18時~22時(L.O.)[土・日・祝]12時~14時(L.O.)、18時~21時(L.O.)
年中無休
※表記の価格はすべて税別。Coperto(席料)お一人様400円別途。
ステーキの新店
ステーキ
Er bisteccaro dei magnaccioni
肉好きな庶民のための救世主
センス光るステーキ職人現る

 銀座でステーキを食べるというのは、今までは相当な出費を覚悟する行為であった。しかし、肉好きな庶民のための救世主が現れた。今年五月に開店した当店である。

 長い店名は「食いしん坊達のお腹を満たすためのステーキ職人」。なんと、肉好きをくすぐる痛快な名前だろう。長くローマ料理を学んだオーナーシェフの山崎夏紀さんは、肉が大好きで、イタリア修業中も一キロほど食べていたという。しかし東京で一キロも食べるとなると、とんでもない高額になる。だからといって、手頃な値段で食べようと思うと、小さなものしか食べられない。そこで、自分で店を作ったのである。

 おすすめは、「Tボーンステーキ一キロ」八千円。高温と低温の二つのオーブンを駆使し、最初に高温で表面を焼き上げてから、低温で肉汁を休ませながら時間をかけて焼く。その焼き上がりの姿は、実に美しい。

 表面には一ミリ以下で香ばしいこげ茶色の焼き色が付けられ、中は一面ロゼ色に輝いている。断面からはうっすらと滲んだ肉汁が、早く食べろと誘いかける。すかさず食べれば、歯がグイッと肉にめり込み、肉汁が溢れ出る。しかしまだ序の口である。噛めば噛むほどに牛のエキスが流れ出て、口の中を満たしていく。強い塩が肉の甘みを持ち上げ、噛むことによるコーフンが体を上気させる。USビーフながら味が濃く、噛む喜びに満ちていて、まさに「肉を食らっているぞ!」と、叫びたくなるような味わい。それが、焼き職人としての山崎シェフの技とセンスが成す味なのである。

「約十種類の前菜盛り合わせ」(二人前で二千五百円)も見事。人参のサラダ、青菜のアーリオオーリオ、コッパロマーナ、ペペロナータ、ズッキーニのサラダ、ツナとインゲン豆のサラダ、南瓜とアーモンドとレーズン、さつま芋のレモン風味、ラディッキオとザクロのバルサミコサラダ、蕪のレモン風味カポナータ、茄子のグリルという豪華さで、どれも味わいが優しく、食材の味が生きている。これだけでお腹いっぱいになってしまいそうなほど見事な盛り合わせだが、昼は、これにパスタと自家製パンが付く「パスタランチ」を千二百円というお値打ち価格で提供している。

 また、本格的なローマ料理のレシピを再現した、グアンチャーレ(豚ほほ肉の塩漬け)と卵の濃厚な味わいの「スパゲッティ カルボナーラ」千五百円をはじめ、パスタ料理も素晴らしい。

 その他にも、ミントの香りが効いた「トリッパのトラステヴェレ風煮込み」千五百円、チョコレートや香草を使った甘い香りのソースと肉のコラーゲンの甘みが抱き合う「オックステールのローマ風煮込み」二千五百円といった逸品も揃う。

 ぜひ大勢で出かけ、「肉」に挑んでもらいたい。

東京都中央区銀座3-9-5 伊勢半ビル地下1階 
電話=03(6264)0457
営業時間=11時半~14時半(L.O.)、18時~23時(L.O.)
定休日=月曜日
※表記の価格はすべて税別。
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