味の見聞録

月間アーカイブ:2015年12月
話題の肉料理店
ステーキ
カルネヤサノマンズ
老舗肉屋と肉を熟知したシェフが
タッグを組む最強の店

 料理、特に熟成肉(ドライエイジングビーフ)の扱いに優れていた、神楽坂の人気のイタリア料理店「カルネヤ」の高山いさ己シェフと、長く熟成肉の販売をしてきた、静岡県富士宮市の精肉店「さの萬」が共同で始めた店である。

 店に入ると、目の前には「さの萬」の肉が美しく飾られているケースが目に入り、おのずと食欲をそそられる。

 まずは、ホルスタインと和牛の交雑種の七十日間熟成肉「ウチモモにカルパッチョ、黒トリュフを添えて」(三千八百円)は、いかがだろう。しなやかな鉄分がにじむ肉に、煮詰めに煮詰めた野菜ソースとブロードを合わせたソースが優しくなじむ、肉を熟知した高山シェフならではの、肉に敬意を払ったカルパッチョである。

 そして、やはり主役はステーキ。四十日間熟成させたホルスタイン牛の「熟成牛の骨付きLボーンステーキ」(二人前一万千円~)は、表面を香ばしくガリッと焼いた見事な焼き上がりで、中は一面ロゼ色に輝いている。

 強めながら精妙にふられた塩が肉の甘みを引き立てる。軟らかながら噛む喜びが湧き上がる肉の食感と甘み、そして肉汁。食べた後に残る香りの良さという、きちんと熟成させた肉の魅力が、高山シェフの腕によって引き出されている。

「和牛のイチボ四十日間熟成ステーキ」(二百グラム四千八百円~)も、焼きは完璧。アメリカから取り寄せた専用グリルを駆使し、恐れることなく肉の力を信じて突っ込んで焼かれて、肉の持ち味を十二分に引き出している。添えられたサルサヴェルデ(パセリたっぷりの緑色のソース)と肉の鉄分、酸味がよく合い、思わずワインが恋しくなる味わいでもある。奥行きのある肉の味わいを噛みしめ、焼けた表面の香ばしさに目を細め、赤ワインをぐっと飲む。すると、ステーキを食べる楽しみが湧き上がる。
そのほか、常時あるとは限らないが、希少な「北海道十勝ファーム上田さんの短角牛の熟成Lボーン」(百グラム二千五百円)もおすすめである。

 または、「さの萬熟成牛のカツレツ」(二百グラム五千五百円)はいかがだろう。

 熟成させたホルスタイン牛をカツにするのだが、普通のカツレツとは違い、粉と卵をつけずに、ディジョンマスタードとパルミジャーノチーズでパン粉を接着して衣を作る。さらに揚げるのではなく、パン粉にオリーブオイルを塗って、フライパンでソテーする。シチリアでは、薄い牛肉にパン粉をたっぷりまぶしてローストして食べる習慣があるところから、高山シェフはヒントを得たという。

 食べれば、猛々しい肉の滋味が体を巡り、「肉を食らっているぞ!」と叫びたくなる。チーズと肉の熟成香の出合いが何とも艶っぽく、ゆえに、カツレツなのに欲しくなるのは、ご飯より赤ワイン、となる。

 そのほか、黒胡椒とパルミジャーノチーズで作る「スパゲッティ カチョエペペ」(千八百円)、「熟成牛のスパゲッティボロネーゼ」(二千百円)をはじめとした、力強いパスタもおすすめである。

東京都港区西麻布3-17-25 KHK西麻布ビル 
電話=03(6447)4829
営業時間=[月~金]ランチ:11時半~14時(L.O.)、ディナー:18時~21時半(L.O.)[土]ランチ:11時半~14時(L.O.)、ディナー:17時半~21時(L.O.)
定休日=日曜日・月曜日ランチ
※ 表記の価格はすべて税別。
話題の肉料理店
ステーキ
ユーゴ デノワイエ
パリで人気の〝世界一の肉屋〟
東京・恵比寿にオープン

 2015年11月4日に開店したショップ&レストラン。一階が肉の販売と軽食がいただけるターブルドット(イートインスペース)、二階がカジュアルに最高級の肉料理が楽しめるビストロとなっている。二階のビストロは、牛の毛皮を張った椅子と肉の本が多く置かれ、オープンキッチンからは、肉を焼く威勢のいい音が響く。

 本店は、パリ十四区と十六区にある有名な精肉店。ユーゴ・デノワイエ氏は家畜、生産者、環境を尊重し、伝統的なブーシェ(肉職人)という職に敬意を払い、生産者と付き合う。

 集中型肥育とは異なり、広々とした農場で自然放牧された牛を扱い、熟成の素晴らしさと寸分の狂いもなく素早く完璧にカットする技によって、健やかな肉を最善の状態で提供してきた店である。ジョエル・ロブション氏やアラン・デュカス氏をはじめとする星つきレストランを顧客に持ち、『ニューヨークタイムス』で〝世界一のお肉屋さん〟と評された。

 パリでは、ターブルドットを併設しており、恵比寿店でも同様の形となった。

 まず、ユーゴといえばタルタルであろう。
肉種はその日によって替わるが、この日食べたのは茨城の常陸(ひたち)牛。「ユーゴの牛肉タルタル」(二千六百円)は、優しい甘みに溢れており、薬味や調味もその肉の優しさを活かすよう最低限に使われている点が素晴らしい。するりと食べられてしまうので、主菜として(大・三千四百円)注文し、ワインとともに楽しむのもいいだろう。

 そして、ステーキ。一階のショップでも売られているリムーザン牛の「アントレコート(リブロース)」(二千七百五十円)、「バべット(ハラミ、カイノミ)」(千五百五十円)、「サーロインロワイヤル」(二千二百円)、また、もしあれば「コートドブッフ(骨付き牛肩ロース肉)」を頼まれたい。

 パリの店で長く働いたシェフがスキレットで焼く肉は、表面をガリッと香ばしく焼き上げ、中は赤く艶のある肉が覗いている。噛めばリムーザン牛のしなやかな鉄分があって、肉汁がゆっくりと染み出してくる。あとは、二種類の塩や挽きたての香り高い胡椒などをつけて食べ進もう。噛んで噛んで味わいが出てくる肉で、「牧場地から皿の上までが肉職人の仕事である」と考え、飼料の管理から皿の上まで徹底して提供する、ユーゴの精神が味わえるだろう。付け合わせのポムフリット(フレンチフライポテト)も美味しい。

 そのほか、前菜の「三種のビーツのサラダ、新鮮な牛チーズとともに」、デザートの「洋梨のタルト」も素敵。ワインはビオ中心で、お値打ち。

東京都渋谷区恵比寿南3-4-16 
電話=03(6303)0429
営業時間=ランチ:11時半~14時(L.O.)、ディナー:18時~22時半(L.O.)
※一階ティータイム:14時~18時
定休日=月曜日
※表記の価格はすべて税別。
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