味の見聞録

月間アーカイブ:2016年02月
とんかつ屋のポークソテー
とんかつ
丸五
きめ細かで柔らかく歯応えもある
豚肉を食べる喜びに満ちた逸品

 『ミシュランガイド東京2015』でピブグルマン(星はつかないもののコストパフォーマンスが高い、五千円以下の調査員おすすめの店)を獲得、海外のガイドブックでも紹介されているという、東京を代表するとんかつ屋の名店の一つ。

 ソテーは、「ロースソテー」千八百五十円、「ヒレソテー」二千百円。ご飯・赤出汁・お新香セットは四百五十円。

 艶のある鼈甲色のソースがたっぷりとかけられたソテーは、堂々たる姿。肩ロースに近い部位で、噛めば肉自体にほのかに甘い香りがあって、きめ細やかで柔らかいが、ただ柔らかいだけではなく歯応えもあり、しっかりと歯が肉にめり込んでいく、豚肉を食べる喜びに満ちている。脂もするりと溶けて甘い。

 生姜を少し利かせた甘辛いソースは、味わい深いがくどくないので、肉にたっぷりつけて食べるといいだろう。紫キャベツを少しのせた、付け合わせのキャベツの千切りも、みずみずしくて甘い。

 また、ご飯、赤出汁、お新香ともに都内最上級。食前は煎茶、食後はジャスミン茶を出してくれるサービスもいい。

 昼夜問わず、「肉よせ」、「角煮」、「牛タン味噌漬け」、「豚ばら冷しゃぶ」、「豆腐サラダ」、「大和煮」など、「丸五」の底力を知る特有の肴もあり、それらの肴とともに、そば前ならぬ〝肉前〟で一杯やってから、主役の肉料理を食べる楽しみもある。

東京都千代田区外神田1-8-14 
電話=03(3255)6595
営業時間=11時半~14時(LO)、17時~20時(LO)
定休日=月曜日・第一火曜日・第三火曜日
とんかつ屋のポークソテー
とんかつ
とんかつ すぎ田
ウイスキーとバターと醤油が香り
心を魅了するどこにもない味

 一九七七年創業のとんかつ屋の名店で、現在の店主・佐藤光朗氏は二代目。

 「ソテー」は、ロース二千三百円、ヒレ二千五百円。フライパンで両面焼いたあとオーブンに入れて少し休ませ、全体に熱が回ったらカットしてフライパンに戻し、ウイスキーを入れてフランベする。最後に、バターと醤油で仕上げられる。

 二口大に切られた肉は、表面が膨れて肉汁を保っている様子がわかり、食欲をそそる。それを、絶妙に煮詰められた茶色く輝くソースに絡めるようにして食べると、バターのコクと醤油の旨味が豚肉の甘みに加わって深みを増す。そこにウイスキーが香って、どこにもない味となり、舌を優しく過ぎると、くるんと心を魅了する。「ああっ~」とため息が漏れ、途端に体の力が抜ける。

 肉は肩に近い部位で、繊維がきめ細やかで、そこに歯が入って繊維を断ち切る食感が、「肉を食べているぞ!」という思いを強くさせる。練りたての溶き辛子をつけて食べるのもおすすめ。

 ご飯(三百円)と豚汁(二百円)は別注文。つやつやと輝くふっくらとしたご飯、肉とぶつからないように徹底的に豚の脂を引いて旨味だけを濃縮させた豚汁、自家製のお新香、いずれも最上級である。

東京都台東区寿3-8-3 
電話=03(3844)5529
営業時間=11時半~14時(LO)、17時~20時15分(LO)
定休日=木曜日
とんかつ屋のポークソテー
とんかつ
井泉本店
ソースの甘みと苦味と酸味が
バランス良く豚肉と絡む

 一九三〇年創業。「お箸できれるやわらかいとんかつ」のキャッチフレーズとともに、「かつサンド発祥の店」として知られる名店。また、森繁久彌主演の映画『喜劇 とんかつ一代』(一九六三年・東宝)の舞台にもなった、上野を代表するとんかつ屋の一軒。店内は一階がカウンター席とテーブル席と小部屋、二階が大部屋の座敷。

 「ポークソテー」は千三百円。小麦粉をまぶしてフライパンで焼かれた豚肉は、余分な脂を捨て、バターと赤ワインで風味づけをしてから皿に盛り、デミグラスソースがかけられる。親しみのあるデミグラスソースの甘み、苦味、酸味のバランスが良く、豚肉の甘みと相まって、猛烈にご飯が恋しくなるポークソテーである。肉は薄めながら、食べ応えあり。また、少々下品ながらも、食べ終わったあと残ったソースにご飯を入れて絡めて食べると、これまた美味。

 付け合わせのレタスとトマトのサラダも、ご飯(二百五十円)、とん汁(二百円)いずれも質が高い。

東京都文京区湯島3-40-3 
電話=03(3834)2901
営業時間=[平日]11時半~20時50分[日・祝]11時半~20時半
定休日=水曜日(祝日の場合は営業)
とんかつ屋のポークソテー
とんかつ
とんかつ ゆたか
肉汁豊かなしっとりとした豚肉と
品のある独自のデミグラスソース

 創業七十余年、仕舞(しも)た屋風の粋な店構え。古き良き料理屋の誠実と矜持が漂い、夕刻となって、明かりが灯る頃合いに暖簾を潜るのが、なんとも情緒があって良い。

 凛とした染付丸皿に盛られて供される「ポークソテー」は千五百五十円。常連の中には、とんかつ以外にこれを目当てに訪れる人もいるという。

 噛めば、きめ細かい肉はほのかな甘みがあってしっとりとし、肉汁豊かで、脂も甘い香りを残しながら、すうっと溶けていく。

 そこにかかるは、独自のデミグラスソース。品のある薄味で、割烹の照り焼きのように豚肉の味を静かに支えている。キャベツにもソースを絡めて食べると美味しい。また、辛子や七味を肉につけても、ソースと合わさって別種の美味しさとなる。

 ご飯・みそ汁・お新香(セットで四百五十円)いずれも素晴らしい。また、キビキビとしながら行き届いたサービスも心地いい。

 そのほか、「板わさ」、「まぐろぬた」、「焼き鳥」、「塩辛」、「酢のもの」など、腹が膨らまない程度の、酒飲みのツボを心得た一品料理も充実しているので、これらを肴に肉の前に一杯と洒落てもいいだろう。

東京都台東区浅草1-15-9 
電話=03(3841)7433
営業時間=[平日]11時半~14時(LO)、17時~20時半(LO)[土・日・祝]11時半~14時半(LO)、16時半~20時半(LO)
定休日=木曜日(月一回水・木連休あり)
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