味の見聞録

月間アーカイブ:2016年05月
ファインスパニッシュランチ
スペイン料理
ZURRIOLA(スリオラ)
スペイン伝統料理に敬意を払い、
季節の食材を駆使した刺激的料理

 昨年、麻布十番から銀座に移転。店内はテーブル席と長いカウンター席に分かれる。

 ランチコースは、四千八百円(主菜一皿)と、六千八百円(主菜二皿)の二コース。

 米粉のチップと、オリーブ油を射込んだパンの突き出しに続く一皿目は「白身魚のフリット ロメスコソース」。葉の上に、ロメスコソース(松の実・アーモンド・ニンニク・パプリカ・トマトなどで作るオレンジ色をしたカタルーニャの伝統的ソース)、白身魚のフリット、泡状にした酢橘の果汁が重ねてある。葉で包み込むようにして食べれば、ソースの旨味が白身魚の淡い甘みを持ち上げ、酢橘の酸味が引き締める。

 続いて「ヒメマスと生ハムのモンタディート」。モンタディートとはスペインのミニバケット。軽くトーストした薄いパンの上に、ゼラチンで固めたハーブのソース、スペイン最高峰ホセリート社のハモンイベリコ(イベリコ豚生ハム)、軽く燻製にしたヒメマスが重ねてある。何より、旬のヒメマスのじっとりとした脂の甘い香りが素晴らしい。そこへ生ハムの旨味とハーブの香りが合わさって、笑顔が生まれる。

 次は「桜の葉で香りをつけたキノコとヤリイカの詰め物 アルスアウジョアのソース」。ヤリイカの中に豚喉肉とキノコの炒めたものを詰め、ガリシア地方の牛チーズ「アルスアウジョア」を添えた皿で、上には揚げた桜の葉がのせてある。ヤリイカの甘み、豚喉肉のコラーゲンの旨味、キノコの香りが抱き合い、それぞれの食感の違いが楽しい。それらをバターを思わせるような豊かなチーズのコクが包み込む。

 主菜の「千葉県産花愁(かしゅう)仔豚のコンフィ ちりめんキャベツと大根のなめらかなピュレ」は、カシューナッツを食べて育った仔豚の優しい滋味にうっとりとなる逸品。「仔牛脛肉のピペラーダ煮 ペドロヒメネスの香り」は、仔牛脛肉のコラーゲンの甘みが下に敷かれた野菜煮の甘みと共鳴し、心がほぐれる。スイートシェリーの香りをつけたソース、添えた骨髄も素晴らしい。

 そしておすすめは魚料理、「ナメタカレイの骨付き炭火焼、軽いピルピルソース」。二キロ以上あるナメタカレイを骨付きのまま炭火焼にし、骨を抜いて元の形に戻し、ピルピルソースを添えた料理。食べれば、しなやかな肉の躍動がある。とろんと乳化したソースにまみれ、カレイは自らの甘みをじっとりと舌に広げ、ニンニクの香りと共にカレイの丸い香りが抜けていく。そこへ皮下のコラーゲンがにゅるんと溶ける。なんとも艶かしい料理である。

 デザートは「蜂蜜のメレンゲとローズマリーのアイス ヨーグルトとオリーブ油のソース」。食べれば、コート・ダジュールを歩いているような爽やかで甘い風が吹き抜ける、優美なデザートである。

 最後は、チョコレートやポルボロンなどの小菓子の盛り合わせが供される。

 スペイン伝統料理に敬意を払いながら、季節の食材を駆使した、本多誠一シェフ独自の刺激的な料理を、ぜひ試されたい。料理は基本的に二~三ヶ月で変わっていくが、たとえ二日続けて訪れても全く違う料理を出してくれる。

東京都中央区銀座6-8-7 交詢ビル4階 
電話=03(3289)5331
営業時間=[ランチ]平日:11時半~13時(LO)、土日祝:11時半~13時半(LO)[ディナー]18時~21時(LO) 
定休日=月曜日 
※上記価格に、消費税とサービス料10%別途
ファインスパニッシュランチ
スペイン料理
RESTAURANT SANT PAUA  (サンパウ)
日本の四季の美を見事に捉えた
女性ならではのしなやかな感性

 カタルーニャ地方のサン・ポル・ デ・マル村にある「サンパウ」の日本店。数少ない三つ星女性シェフの一人、カルメ・ルスカイェーダさんは毎年来日し、日本の食材に触れ、新しい料理を生み出すという。

 ランチは、六千円(平日のみ)、九千円、一万六千円の三コース。今回は、春のある日の九千円のコースをご紹介。

 アペリティーボは二種類。カルメさんの手書きイラストによる、可愛らしい説明カードがテーブルに置かれている。一つはクラゲに見立てたアペリティーボ。ターメリックで色付けたゼリーをかぶせ、ナッツ、グリーンペッパー、クラゲの足に見立てたクラゲの千切り、ラルドカンサラダを入れ込んであり、様々な食感や香りが忍んで刺激的。もう一つは、ビーツソースとビーツ角切り、馬肉のタルタルを入れた、ビーツで色付けしたコーン。同じ色合い者同士の相性を、巧みに構成した料理である。

 前菜は「ホタテ レンズ豆 えのき 青パパイヤ」。白醤油で味付けしたレンズ豆のクリームソースに、半生に加熱した帆立貝を合わせた皿。レンズ豆と柔らかい甘みを持ったソースが帆立貝に優しく寄り添う。それだけでなく、穂紫蘇の香りのアクセントや、ごく微塵に切った人参やえのき、青パパイヤの食感、パプリカゼリーの甘みが見事に響き合う心憎い逸品。 

 魚料理は「サワラ カルソッツ ペコロス 人参のピュレ」。低温で調理し、しっとりと仕上げたサワラに、焦げるまで焼いた下仁田葱の芯が添えられる。サワラの甘みに葱の甘みが溶け合い、色気を感じさせる。そして花山椒のアクセントは、共に春を生きる者同士の呼応を感じさせる。

 肉料理は「和牛テール 苺 根セロリのピュレ」。長時間煮込んで骨から外し、再び四角に整形した牛テールと、とちおとめ、根セロリのピュレ、大根を合わせた料理。テールの男性的な味わいに、苺の香りが加わって、可憐さが増す驚きがある。

 続くリフレッシュフルーツは「愛媛のせとかみかんのアイスクリーム セージのソース」。甘いだけではない、胸をつく香りに春の本質を感じさせる。そしてデザートは「桜餅 百合根 ホワイトチョコ」。ビーツで色付けした桃色のペーストを桜餅の皮に見立てた、愛らしい一品。中はホワイトチョコとマカデミアナッツで、桜の花と葉の塩漬けが添えられる。紅玉とキルシュによるソースの酸味の合わせ方も素晴らしい。

 最後は、またカルメさんのイラストカードが添えられた「十種類のプティフール」。どれも小さな驚きと発見、懐かしさと温かさが入り混じる小菓子である。

 四季という日本の美を見事に捉え、そこに女性ならではのしなやかな感性と愛情を加えた料理は、スペイン料理でありながら、我々に日本を伝える。

東京都中央区日本橋1-6-1 コレド日本橋ANNEX 
電話=03(3517)5700
営業時間=[ランチ]平日:11時半~13時半(LO)、土日祝:12時~13時半(LO)[ディナー]18時~21時(LO) 
定休日=月曜日を中心に月6日間・年末年始 
※上記価格に、消費税とサービス料10%別途
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