味の見聞録

月間アーカイブ:2016年06月
とんかつ
とんかつ
とん太
食べた後、また明日も食べたくなる逸品

 開店前から行列ができる人気店。店内に入ると、とんかつ好きな人たちの静かな熱気が充満している。そんな中、ご主人が一人黙々とかつを揚げている。もうそれだけで嬉しい。いい店である。

 「特ヒレかつ定食」(二千二百六十円)も惹かれるが、この日は「特ロースかつ定食」(二千百六十円)を注文。

 低温からじっくりと揚げられるとんかつの衣は、中粗で淡い狐色。油切れよく軽やかで、サクッとした食感も心地いい。肉の断面を見れば、しっとりと肉汁が滲み出て、中心部をロゼに残した仕事である。

 軽い衣に包まれた肉は、きめ細かく優しい甘みに満ちている。口の中に漂う肉の甘い香りの余韻は、品のある菓子を食べた後のような穏やかさで、これこそが、このとんかつの特長である。

 自家製ウースターソースは、甘みと酸味のバランスがよく、とんかつのうま味を膨らませるキリッとした味わいである。

 添えられたキャベツもみずみずしく、新香は、キャベツと人参、大根、蕪、胡瓜の浅漬けで、とてもおいしい。味噌汁を、しじみ汁、わかめ汁、豚汁の中から選べるのも嬉しい。
食べた後に、また明日も食べに来たくなるとんかつである。

 その他、「白身魚のフライ」(一切れ:三百二十五円)も、魚の甘みをしっとりと残したまま、サックリと揚げられていて上出来である。

東京都豊島区高田3-17-8
電話=03(3989)0296
営業時間=11時半~13時半(LO)、18時~21時(LO) 
定休日=日曜日・月曜日・祝日 
※売切れ次第閉店。土曜日は夜のみ営業
とんかつ
とんかつ
のもと家
お昼に千円で食べられる上質のとんかつ

 浜松町というサラリーマンが多い地域ということもあり、昼夜ともに盛況で、開店前から行列ができている。

 昼は多くの人が、国産豚使用「ロースかつ定食」(千円)を頼まれているが、このとんかつこそが、店の真摯な姿勢をよく表している。肉といい、ご飯・新香・豚汁などの脇役陣といい、実に質が高く、都内で千円で食べられるとんかつの中では群を抜いている。働く人々に、リーズナブルにできうる限りのとんかつを楽しんでもらおうという、ご主人のとんかつに対する誠実な想いや愛を感じる。

 一方、「特選ロースかつ定食」(百二十グラム:千六百五十円/百六十グラム:二千円)は、鹿児島六白黒豚を使用。こちらは、ご飯・新香・小鉢・黒豚の豚汁付き。これもまたお値打ちで、とんかつを食べる醍醐味を十二分に伝えてくれる。

 肉はきめが細やかで、うま味があり、脂は舌の上でトゥルッと溶けて、甘い香りを余韻に残す。

 皿の上に網を引いてとんかつをのせてあるのだが、そうした店のほとんどが下側が蒸れてしまっているのに対し、この店はカリカリである。おそらく揚げてからの休ませ時間がいいのだろう。中粗の衣は、肉に密着して、噛めばカリッカリッと音を立てる。ラードの香ばしさも十分で、肉とのバランスがとてもよく、実にとんかつらしい魅力に富んだ衣である。

 やや柔らかめのご飯や濃すぎないソース、細く切られたみずみずしいキャベツもいい。中でも脇役陣で光っているのが、新香と豚汁である。新香は、柚子大根。とんかつに添える新香に柚子大根を出す店は、それほどないだろう。その爽やかな味わいは、とんかつの味を一旦リフレッシュさせ、再びとんかつに想いを向けさせるのに、最高な相棒となっている。また豚汁は、豚脂の甘い香りと味噌、根菜の香りが溶け合い、心を安らかにさせる穏やかな味わいである。

 とんかつの調味料も、茎わさび、甘いとんかつ醤油、自分で擂る胡麻と、サービス十分。だが、この優れたとんかつには、塩とソースだけで十分である。

東京都港区芝公園2-3-7 玉川ビル2階 
電話=03(6809)1529
営業時間=11時半~14時(LO)、17時半~19時半(LO) 
定休日=日曜日・祝日 
※売切れ次第閉店。土曜日は昼のみ営業
とんかつ
とんかつ
自然坊(じねんぼう)
誠実さに満ちた胸が晴れやかになる定食

 駅から七分ほど歩く閑静な住宅街に、店はぽつねんとある。そうしたロケーションから察するに、これまで地元客から深く愛されて営んでこられた店なのだろう。

 座るとおしぼりが出されるが、生地が厚く、肌触りがよく、ほどよく温かく、匂いがない。もうこれだけで、この店がいかにお客さんを迎える心が整っているかがわかる。心地よい食事のスタートである。

 豚肉は、群馬県産のやまと豚のメス豚のみを使用されているという。

 「ロースかつ定食」は、昼:二千五百円、夜:二千九百十円。

 かつを一切れ箸で持ち上げて断面を見ると、しっとりと肉汁で輝き、食欲をそそる。噛めば、肉はきめ細かくしなやかで、歯に吸い付くような食感がある。適度に掃除された脂も、歯触りがしっかりとしていながら、するりと溶けていく。

 綿実油で揚げられた衣は、中粗でサクサクと香ばしく、この豚肉とのバランスがいい。肉の品のある甘さを生かした揚げ具合である。香りよい自家製ソースでいただくのもいいが、このとんかつは、そのままか、塩だけで、十分にご飯を呼ぶ力がある。

 添えられたキャベツは、みずみずしくて甘い。大根、胡瓜、小茄子の糠漬け、さくらんぼ漬けの新香陣も丁寧な味わい。おいしく炊かれたご飯、なめこと三つ葉の赤出汁も香り高く、すべてが誠実さに満ちた、胸が晴れやかになるとんかつ定食である。

 また、デザートのアイスクリームをくずきりに替えてもらったのだが、黒蜜の按配、くずきりの清涼感も素晴らしく、隅々まで行き届いた仕事の的確さが光っている。

 その他、「牡蠣フライ」は一個:五百九十円と高価だが、大ぶりで、衣の中に海のエキスをたっぷりと湛えながら、口の中に転がり込んでくる。冬にはぜひ試されたい。

東京都大田区久が原4-19-24 
電話=03(5700)5330
営業時間=12時~15時(L.O.)、17時~21時(L.O.) 
定休日=水曜日
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