味の見聞録

月間アーカイブ:2017年02月
鴨南蛮
そば
並木藪蕎麦
これを食べないと冬じゃない
老舗蕎麦屋の逸品

 ご存じ、老舗の蕎麦屋。この店の「鴨南蛮」千九百円を食べないと、冬が来た感じがしないというファンは多い。

 運ばれれば、黒に近い、こっくりと濃いつゆに、鴨の脂が浮かんで、てらりと光る。

 分厚い鴨肉を齧れば鴨のエキスが流れ出て、舌を伝わり体の奥底へと向かっていく。この「肉を食らっている」と実感させる鴨肉の厚さがいい。

 今度は、一緒に入れられた鴨の団子を齧る。団子は鉄分に富んで、その野性味が体に火をつける。濃いつゆと鴨肉とのバランスが見事にとれた鴨南蛮といえよう。

 細い蕎麦は、ツルルと唇を震わせ、口の中をしなやかに過ぎていく。合間に、短冊の葱を食べて読点を付け、再び鴨肉を齧る。そんな食べ方が正しい鴨南蛮である。

 また、小さな脂身が一つ入っていて、こいつを「えいっ」と力を入れて噛みしめれば、くにゃりと脂が裂け、のちに溶けて、寒風に冷え切った心身を抱きしめる。

 最後は蕎麦猪口と蕎麦湯をもらい、脂が溶け込んだつゆを少し入れて、蕎麦湯で伸ばして飲む。その瞬間が、またたまらない。

●並木藪蕎麦 

東京都台東区雷門2-11-9 
電話=03(3841)1340
営業時間=11時~19時半(19時LO) 
定休日=木曜日
鴨南蛮
そば
サヴール・ド・ソバ カンセイ
蕎麦とフレンチ風蕎麦前を
ワインと楽しむ蕎麦ビストロ

 フランス料理店「GINZA kansei」の坂田幹靖シェフによる、蕎麦と季節の素材を使った蕎麦前、ワインを楽しむ蕎麦ビストロ。「鴨南蛮」は千五百円。

 まず何より蕎麦がいい。坂田シェフが惚れ込んだという群馬県赤城・深山産の石臼挽き十割細打ち蕎麦は、温められてもしなやかなコシがあり、歯の間でねちっと粘って、ほのかな甘みを感じさせる。

 鴨は、スペイン産のマグレ鴨。噛めば血の味が漂って、鴨肉を食らう醍醐味があり、全体がロゼ色に染まったキュイッソン(加熱)もブレがない。この辺りは、フレンチのエッセンスを感じさせる点である。他の具は、葱の小口切りと三つ葉。

 つゆは鰹節の香り高く、こっくりと醤油味が濃い黒色に近いつゆだが、後味のキレよく、ついつい飲み過ぎてしまう。

 最後は、蕎麦湯と湯呑みをもらい、湯呑みに蕎麦湯とつゆを注いで飲めば、さらに幸せ感が加速する。

 世界各国のワインが広く揃うので、この「鴨南蛮」の「台抜き(蕎麦抜き)」を頼んで、赤ワインの相手にするのもいいだろう。

東京都中央区銀座7-12-1 銀座TYビル1階 
電話=03(6264)3319
営業時間=11時半~20時(19時半LO) 
定休日=日曜日・祝日
鴨南蛮
そば
手打そば 菊谷
毎日石臼挽きして打つ
都内でも屈指の上質の蕎麦

 都内でも屈指の上質の蕎麦を出されるお店。「鴨南蛮」は二千円。

 鴨の薄切りが十枚ほどと鴨団子が二つと、鴨の魅力がたっぷりと込められた鴨南蛮である。鉄分を充分に感じさせる鴨肉と、ふんわりと優しい食感にまとめた団子との組み合わせがいい。交互に食べながら進む楽しさがある。鴨は茨城県にて無農薬の飼料を与えて放し飼いしているチェリバレー種の合鴨で、モモ肉を使用しているという。他の具は、刻み葱と短冊葱に柚子片。

 温められた二八蕎麦は、実にたおやかな食感で、勢いよく手繰れば、蕎麦自体の甘い香りが引き立つ。汁は旨味が深く上品な味わいで、鴨肉の薄さや蕎麦の香り、団子の食感とのバランスが美しくとれている。

 なお、毎日石臼挽きして打つ蕎麦は、数種あり、ぜひ「?き蕎麦」(二種千二百五十円、三種千六百円)も試してほしい。産地、挽き方、つなぎ割合、寝かせなどを変えた、数種の蕎麦を食べ比べるのも一興。

東京都豊島区巣鴨4-14-15 
電話=03(3918)3462
営業時間=11時半~14時半(LO)、17時半~20時(LO) 
定休日=月曜日(祝日と4のつく日は翌日に振替)
鴨南蛮
そば
手打ちそばと酒 蕎ふるやま
滋味が滲み出る厚切り鴨肉と
存在感ある蕎麦

 住宅街でご夫婦で営まれている、手打ち蕎麦と酒のお店。「鴨なんばん」は千五百円。

 見事に一面ロゼ色に火が入れられた厚切りの鴨肉が五枚、短冊葱と刻み葱、三つ葉と柚子片という構成である。

 鴨肉を噛めば滋味がじっとりと滲み出て、その勢いで蕎麦を手繰る。その繰り返しが何とも楽しくなる鴨南蛮である。

 短冊葱は鴨脂で炒められているのだろう。鴨脂を纏い、くったりとして美味しい。

 石臼挽き細切りの外一蕎麦は、ある日は北海道北早生(きたわせ)蕎麦が使われ、温められても充分な存在感があった。

 その他の品書きでは、「せいろ」七百五十円や、「自家製飛龍頭そば」千二百五十円もおすすめ。酒と肴の揃えもいい。

東京都杉並区成田東4-26-12 
電話=03(5378)0233
営業時間=11時半~21時半(LO)  
定休日=水曜日・木曜日(祝日の場合は営業)
※1月30日~3月3日休業
鴨南蛮
そば
築地 鴨料理 鴨亭
ボリューム満点でお値打ち
鴨肉料理専門店の昼定食

 鴨肉料理専門店。「鴨亭南蛮そば」千八十円は、ランチのみで提供される。

 つゆは、鴨鍋のつゆをやや濃くしたような優しい味わい。おそらく鴨の骨や筋などで取られた出汁を甘めに味付けしたものと思われる。鴨のモモ肉は小さく切って入れてあり、通常の鴨南蛮のロース肉とは違う噛みしめる喜びがある。

 鴨と葱の他、三つ葉、蒲鉾、たぬき、月見にたっぷりの麺と、ボリュームがあるうえ、ご飯に玉子焼き、サラダまで付いてこの値段ゆえに、お値打ち感がある。

東京都中央区築地4-2-11 新橋演舞場別館1階 
電話=03(6264)0504
営業時間=11時半~14時(LO)、18時~22時(LO)
※土曜は夜のみ営業 17時~21時(LO)  
定休日=日曜日・祝日
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