味の見聞録

月間アーカイブ:2017年03月
札幌の美味
イタリア料理
リストランテ 薫
独自の発想で料理を作り出す
イタリアン界の注目シェフ

 札幌駅から約二十分電車に乗り野幌駅に到着、そこから車で七分ほどの住宅街にぽつねんと佇む隠れ家イタリアン。長谷川稔シェフの店である。

 極めて個性的な料理が次々と出される、夜のおまかせコースは、七千五百円(前日までに要予約)、一万二千円・一万五千円(共に一週間前までに要予約)の三コース。ある日の一万五千円のコースは全七皿。

 一皿目。水中で捕らえて神経絞めした「スジアラのスープと焼き」は、スープのうま味が綺麗で、一切の淀みがない。骨に塩をし、酒をふり、洗って軽く焼いた昆布で昆布締めにし、その骨でだしを取ったのだという。

 次は「牡蠣」である。厚岸(あっけし)の牡蠣と仙鳳(せんぽう)趾(し)の牡蠣を、軽く酒蒸しして余分な水分を抜く。その後、椎茸と鰹節のだしを吸い込ませ、上から藁火で炙り、下から炭火で焼いたものである。海水が抜けエキスだけが残った牡蠣に異なるうま味を相乗させ、藁の香りをつけ、炭火で味を膨らませる。一口目はさりげないのだが、素晴らしい余韻が恐ろしいほど長く続く。

 続いて金目鯛の料理。金目鯛を白板昆布で挟み、一分間蒸しては一分間休ませる。これを二十回続ける。しかる後、皮を鱗ごとパリッと焼くのだが、食感が悪くなるので鱗を立たせたくない、身には微塵も熱を加えたくない。そこで、氷を巻いたアルミ箔を身にかぶせ、手で持ってフライパンで焼く。鍋から一センチ離した空中で持ち続けて、相当腕や手が熱いが、我慢して焼き上げるのである。

 そうして椎茸と鰹節のジュレを添えて供された金目鯛は、焼かれているというのに、まだ命のみずみずしさを残している。金目鯛の純粋なうま味が深められているのだが、淀みや雑味はなく、清廉な味わいに満ちている。熱いのをこらえて焼かれた皮は、薄く薄くパリンと香ばしく、凝縮した皮下の甘みが滲んでいた。

 次は、「五十九度の塩水で加熱したタチ(鱈の白子)と柚子風味のタリアッテレ」。このパスタも味にキレがあり、美味。

 続いてなんと「ヒグマのカツ」。噛めば微かな燻製香を伴いながら、肉が砕けていく。熟成されているのに臭みを感じさせず、淀みなきたくましい滋味が、噛むごとに溢れてくる。脂は、凛々しい甘みを広げながら消えていく。

 「熟成させても、命のことを考えるとトリミングをしたくないんです」。というシェフは、肉に余分な圧をかけないよう、塩水に浮かべて熟成させる。そして生まれた香りを弱めるため、軽く燻製にしてからカツにし、酢漬けの黒胡椒をまぶした。

 次は「鹿の赤ワイン煮」。想像する赤ワイン煮ではない。赤ワインに漬けたまま六十八度で二時間加熱した料理である。鹿肉の素直な香りに満たされたステーキといった風情で、そこに赤ワインの香りがほんのりと溶け込んでいる。

 「新わかめのパスタ」は、真蛸と紫蘇のだしで茹でたパスタに、数の子と新わかめを添えてある。パスタと具を馴染ませるのではなく、わかめを大きく切り、数の子とともに添えて、あえてパスタとの食感の対比を楽しませるのである。

 どうです、面白いでしょ!? ほぼ独学ながら、他にはない発想で料理を作り出す、しばらく目が離せないシェフである。

北海道江別市野幌寿町24-6 
電話=011(375)6062
営業時間=12時~14時半(14時LO)、18時~(完全予約制) 
定休日=火曜日・第1月曜日
※上記価格に消費税・サービス料合わせて10%別途
札幌の美味
フランス料理
ル・ミュゼ
シェフズキッチン特別室で
優雅な時間を過ごす

 円山公園の外れに建つレストラン。店名のとおり、店内には多くの絵画が飾られている。

 ディナーは、一万六千二百円のコースと、二階にあるシェフズキッチン特別室「idea(イデア)」(完全予約制)でいただく二万千六百円の二コース。一階のダイニングでいただくのもいいが、四人以上を集めてぜひ「イデア」でいただくことをお勧めしたい。二階ながら、設えられた坪庭を望みながら、目前で調理してくれる石井誠シェフのフランス料理をいただける。優雅な時間を過ごすことができよう。

 特別な十五皿コース、ある日はフグづくしが供された。

 まずはアミューズで、百合根のムースと塩、白トリュフオイルの取り合わせ。氷を割って食べる仕掛けのアワビの水貝。食感がエレガントな厚岸の牡蠣に、牡蠣のコンソメ、「竹鶴」の泡、昆布のムースを添えた一皿。半生の加熱が色っぽいホタテに、柚子とふきのとう味噌の泡を添えて。

 そして、フグづくし。

 まず増毛(ましけ)の地酒「純米吟醸國稀(こくまれ)」に炎をつけ、そこに七輪で炙ったばかりのフグひれを沈め、トリュフを削り落とす。半分ほど飲んだら鮭節とフグのコンソメを注いで混ぜ、さらにトリュフをかける。黄金色のうま味が舌を通り過ぎる中、トリュフの香りが鼻孔にへばりつき、陶然となるは必至。

 「てっさ」は、キャビアの塩気とトマトジュレの酸味とうま味と合わせ、フグの煮こごり、フロマージュ・ド・テット風には、酸味を利かせたラヴィゴットソースを添える。とうとうみには、ハーブヴィネガーを注いでいただく。

 お次は「白子のフリット」。白子を焦がしバターと合わせ、皿に盛ったら、またトリュフをふらせる。白子がフワンと溶けゆく中に濃密な精の甘みがあって、鼻息を荒くさせる。

 今度はフグのロティに、先ほどのフグのコンソメをさらに煮詰めたものがかけられる。このコンソメが素晴らしい。フグのうま味だけを極めているのだが、いやらしさが微塵もない。ピュアなうま味がフグを包んで、昇天させるのである。

 フォアグラのフランとごぼうのスープ、白子の取り合わせと続いて、活オマールのウイスキーフランべ、パクチーとオマールスープ添えで締めくくられる。

 そして、レモンのクリーム、レモンのソルベにオリーブオイルヌーボーをスポイトでかけていただくデセールで終宴。

 ランチは三千七百八十円、五千四百円、一万八百円の三種。

北海道札幌市中央区宮の森一条14-3-20 
電話=011(640)6955
営業時間=12時~14時半(13時LO)、18時~22時(20時LO)  
定休日=月曜日
※上記価格に消費税8%・サービス料10%別途
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