味の見聞録

月間アーカイブ:2017年05月
札幌の美味(3)
フランス料理
ラ・サンテ
ホワイトアスパラガスと羊肉
シェフのスペシャリテを堪能

 住宅街の一軒家で営まれる、フランス料理店。温かい雰囲気が漂う店内は、実に心地よい。

 当店のスペシャリテでもある、ホワイトアスパラガスと仔羊の料理を味わうには、六月がいい。ある六月初めのコースは以下の通り。

 アミューズは、白い小さなグラスに、蕪の白いムースと、土に見立てた黒千石大豆(くろせんごくだいず)と十勝マッシュルームの粉が敷き詰められ、そこからホワイトアスパラガスの穂先が顔を出している。ホワイトアスパラガスを土の中から掘り出す姿をイメージした料理で、これから続く料理への期待を高める。

 二つ目のアミューズは、安平(あびら)町の八木響子さんが作ったというホワイトアスパラガスのスープ。ほのかな甘みだけでなく、ミネラルの豊かさを感じる苦味も滲んで美味しい。

 続いての「時鮭(ときしらず)のスモーク」は、分厚い切り身のまま燻製にされており、脂が全体にしっとりと回った、きめ細やかな身が、舌の上ではらりと崩れていく。

 そして、スペシャリテ「北海道産ホワイトアスパラガスの塩竈焼き」の登場である。

 クマザサと塩で包まれ、二百三十度で蒸し焼きにされたホワイトアスパラガスは、命の気配をたっぷりと残していた。「生きているよ」。噛み締める度に、アスパラが囁く。シャクシャクと穂先を噛めば、ほのかに甘い香りが漂って、温かい気分となる。コリッコリッと根元を噛めば、大地のほろ苦い養分が口いっぱいに満たされて「ありがとう」と思わず呟くのである。そんな穂先から根元までの、それぞれの味や食感の違いが明確にわかる料理なのだ。

「フランスやドイツのホワイトアスパラガスは、バターで炒めるなど強い調理が向いている。でも、八木さんが作るホワイトアスパラガスは、この調理法が一番です」。髙橋毅シェフはそう言って、優しい目になった。

 シャクシャク、コリッコリッと、命が弾け飛び、我々が生かされている喜びがせり上がる、素晴らしい一皿を是非食べに行かれたい。

 アスパラガスのあとは、これも名物である、特製の炉で焼かれた肉類となる。

 最初は、白樺の木で焼かれた仔羊のスペアリブと背肉にもも肉。続いて桜の木で焼かれた五歳のマトンの肉。最後は豚肉のカツである。

 仔羊は、柔らかな味わいの中に鉄分の猛々しさを感じるもも肉も素晴らしいが、スペアリブの骨ぎわ、コラーゲンの甘みが、なんともたまらない。いけないものを食べてしまったような、幼くも優しい滋味が滲み出る。

 グリーンアスパラガスや紫芋とともに焼かれた、タイムの香り漂うマトンは、まさしく「肉を食らっている」という感動が体を貫く、肉々しい味がある。

 豚肉も身質がきめ細かく、特に脂の部分が締まって、歯が食い込んで甘く溶けていく感触に、うっとりとなるは必至。

 デセールは「グリーンアスパラガスのソルベ」。アスパラガスのアスパラガスたる香りが広がる中で、優しい甘みが溶けていく。続いての「塩プリンとイチゴ、練乳のアイス」には、ほのぼのとした美味しさがあり、まさに髙橋シェフの誠実な仕事が現れている。

北海道札幌市中央区北三条西27丁目2-16
電話=011(612)9003
営業時間=12時~15時(13時半LO)、18時~22時半(21時LO)  
定休日=水曜日、第2・第3木曜日
※要予約。ランチは土曜・日曜・祝日のみの営業
札幌の美味(3)
居酒屋
こなから
季節感と個性に富む料理と酒
食いしん坊のための居酒屋

 市内に数多く居酒屋はあるが、ここが一番だろう。いや、ほかにはない。

 ご主人の小割茂樹さんは、毎朝石狩をはじめ遠くの港まで足を運び、魚を仕入れ料理する。魚好きが頼みたくなる料理がずらりと並び、ある日数えてみたら、四十八種類もあった。どれも季節感と個性に富んでいて、酒飲みと食いしん坊のツボをチクチクと刺激する。

 さらに、酒の揃えもいい。燗のつけ具合もいい。とっても危険な店なのである。だから、「もう札幌の夜は、こなから以外に行けなくなった」という人を、私はたくさん知っている。

「いいものがあるとつい買っちゃう」と、小割さんが遠くまで買い付けに行った魚の「刺身の盛り合わせ」に「アスパラガスとウドの白和え」、「白蕪とキュウリの浅漬け」をもらって、スタートする。

 酒は地元の「二世古」を二種類冷やでいただき、あとは「宗玄」、「るみ子の酒」、「而今(じこん)」を燗にしてもらって食べ進むのも楽しいだろう。

 磯香が口の中でのたうち回る「鮑の岩海苔あんかけ」、焼いた香りが甘い「ホワイトアスパラガスの焼き浸し」、身が緻密で優しく、脂がじっとり回った「時鮭焼き漬け」、胃袋を掴むようなこっくりとしたうま味が溶け込んだ「メヌケの味噌汁」。どれも酒が進んで困っちゃう肴である。

「海老マヨ」は衣にコーンの香りがして、マヨネーズの塩梅がなんともいい。さらに、堂々たる大きさの身がしっとりとして、噛み込めば品のある脂が広がる「ホッケの炭火焼き」で、また笑ってしまうのである。

 名物「イチジクレーズンバター」では、「ウィスキーをください!」と叫び、「行者菜となめこと卵の辛味炒め」で、なめこの役割を褒め称える。

 ほかにも、コラーゲンのうま味と海苔の香りが抱き合う「ゴッコ(ホテイウオ)と岩海苔の小鍋仕立て」。品のいい脂が舌の上で溶ける「ニシンの焼き〆造りの刺身」。大きく分厚いカレイの肉がホロリと甘く崩れる「ババガレイの煮付け」。不思議に三者の味わいが共鳴して思わず笑い出す、名物「牡蠣と柿と牛スジの朴葉味噌焼き」などの冬の料理も捨てがたい。

 店名の「こなから」=「小半ら」は一升の半分の半分、つまり二合半くらいがほどよい酔い具合と言われているのに、まったくもって酒が止まりません。
そして散々食べたあとには、「蟹炒飯」、「ストロングドライカレー」、鯖の新鮮な身のうま味とソースのバランスが精妙な、名物「鯖サンド」が待っている。

 どうです? 困った店でしょう!

北海道札幌市中央区北二条西3 イシガキビル2階 
電話=011(281)1250
営業時間=17時~22時半(土曜 17時~22時)
定休日=日曜日・祝日(その他不定休)
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