味の見聞録

月間アーカイブ:2017年06月
とんかつ最新事情
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のもと家
とんかつを食べる醍醐味を知る
六白黒豚の特選ロースカツ

 ご主人は浅草「豚珍館」で、安くとも質の高いとんかつを出されていたが、都心のお客の顔が見える店で勝負をしたいとの想いで、港区芝公園に移転された。そんなご主人のとんかつに対する真摯な想いが響いたのだろう、開店後しばらくしてサラリーマンたちが押し寄せる店となった。

 実は、この一帯はとんかつ激戦区であり、人気店が何軒かあるのだが、その中で最もおすすめしたいのが、この店なのである。

 使うのは、四本の足先・鼻先・尾の先の計六カ所が白い、鹿児島の六白黒豚(ろっぱくくろぶた)。

 この豚のカツを楽しむなら、まずは「特選ロースかつ定食」(百二十グラム:千七百五十円、百六十グラム:二千百円)をおすすめする。「ロースかつ」よりも肉がきめ細かくて味が濃く、とんかつを食べる醍醐味を十二分に伝えてくれる。

「最近は豚と会話できるようになりました」というご主人は、同じ六白黒豚でも日々違う個体差を見極め、最大限に肉を活かすように揚げる。肉は肉汁に富み、脂はするりと溶けて甘く香る。サクサクと痛快に弾ける中粗の衣も香りよく、肉とのバランスもいい。

 キャベツはみずみずしく、柚子大根の新香、ご飯、豚汁のできも素晴らしい。

 とんかつに合わせる調味料は、茎わさび、とんかつ醤油、ソース、自分で摺るゴマと、サービス満点。どれもそれぞれに楽しめるが、このとんかつを一番おいしく食べるには、やはり塩がいいだろう。

 昼の「ロースかつ定食」(千百円)も実に質が高く、都内でこの値段で食べられるとんかつの中では群を抜いており、いいものをできる限り安く出そうという、ご主人のとんかつへの愛を感じる。

東京都港区芝公園2-3-7 玉川ビル2階 
電話=03(6809)1529
営業時間=11時半~14時(LO)、17時半~20時(LO)  
定休日=日曜日・祝日
※土曜は昼のみの営業
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とんかつひなた
珍しい部位のカツも楽しめる
新たなとんかつの名店誕生

 高田馬場に、今年一月に開店したばかりのとんかつ屋である。

 最初に訪れた時、聞いてみた。「なぜ高田馬場に店を開いたのですか?」 すると店主いわく「『とん太』と『成蔵』という名店があるこの地でやってみたかったんです」。

「上ロースかつ定食」(昼:千六百二十円、夜:千九百四十四円)を一口食べて目を丸くした。なんとも肉がきめ細かい。前歯が肉にゆっくりめり込むと、甘く香り、肉汁がこぼれ出る。柔らかすぎなく猛々しい肉を噛む喜びがありながら、どこか品も漂う豚肉である。ぴったりと肉に密着した細かい衣も香ばしく、この肉と調和している。油切れもよく、食後感もいい。

 ソースは、酸味が程よいさらりとしたウスターソース系と、甘みのある濃厚なソースの二種類が用意されているが、こうしたカツに出会うと、断然塩である。塩は二種類、うま味の強い塩と、やや淡く粒子が細い塩が用意されている。

「上リブロースかつ定食」(二千七百円)もおすすめ。リブロースは、背脂だけでなく、肉の中にも一層脂が入っている。脂と肉は火の通り方が違うため、ロースより揚げることが難しいと聞く。より突っ込んで揚げながら、衣を剥がさない見極めが必要である。それをご主人は見事に揚げ切っていた。食べれば肉のうま味と脂の甘い香りが交差して、そこにパン粉の香ばしさや食感が加わる。豚肉の良さを活かし切ったとんかつは、何もかけずともそのままで十二分に幸せになれる。

 キャベツは甘み十分、白菜・蕪・胡瓜の新香も上等。味噌汁ではなく、チャーシューのスープが付く。

 さらにこの店では、ランプ(腿の柔らかい部分)、シキンボウ(内腿の芯の肉)、トントロ(頬から首の部位)のカツが楽しめるのである。

 肉汁をしっとり含んだランプは甘く香り、しっかりと揚げたトントロは、衣の濃い香りと、薄い肉に刺し込んだ脂の甘い香りが交差して、なんともうまい。今後は、イチボなども揚げていく予定だという。

 この肉の各部位を食べ比べ、最後にミニソースかつ丼で終えるコースもあり、とんかつ好きならぜひ挑戦してもらいたい。

東京都新宿区高田馬場2-13-9 鈴木ビル1階
電話=03(6380)2424
営業時間=11時~20時半(LO)
定休日=日曜日
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あき山
気さくなご夫婦が営まれる
下町の人情味溢れるとんかつ屋

 いかにも下町らしい、気さくで話し好きの女将さんとご主人という年配のご夫婦二人で営まれるとんかつ屋である。

 訪れた時にいらっしゃった二組のお客は、どちらも初めての来店のようだったが、最後は女将さんと楽しく世間話をし、「また来ます」と言って帰られた。こうした人情味溢れる店が少なくなった東京で、希少な店である。

「ロースかつ膳」(千九百四十四円)のカツは、衣をやや焦げ茶色に仕上げた高温系の揚げ方だが、細かい衣がぴったりと肉に寄り添っている。水っぽくない質のいい肉を使っていることと、揚げ切るタイミングの見極めが優れていることの証である。衣はカリリと香ばしく、一切れを歯で半分に千切っても、まったくはがれるそぶりすら見せない。見事である。

 噛めば甘い香りが広がり、じっとりと肉汁が滲み出す。脂身部分の溶け具合も軽く、緻密な肉質との対比が楽しい。

 ソースはかなり甘めであるが、芥子とともにつければ肉に合う。青海苔と葱の味噌汁は、青海苔の香りと甘い麦味噌の香りが抱き合って、とんかつの間の手としては最高である。

 通常、かつ膳に添えられる新香は胡瓜と大根だが、とんかつの前に「上新香」を単品で頼み、肴にして一杯やっていると、「こちらに変えました」と、女将さんがフルーツトマトのマリネを小鉢に盛って出してくれた。こうした気働きの細やかさにも、下町ならではの人情味が滲んでいて、またすぐさま訪れたくなるのである。

東京都台東区浅草2-12-6 
電話=03(3847)8441
営業時間=11時半~15時、17時半~20時半 
定休日=月曜日(祝日の場合は翌火曜日)
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