味の見聞録

月間アーカイブ:2017年08月
軽井沢のフランス料理
フランス料理
無彩庵 池田
地元農家の野菜を軸にした
長野の食材への愛に満ちた料理

 西麻布より軽井沢に移転して一躍人気店となった「エルミタージュ・ドゥ・タムラ」の姉妹店としてスタートした「無彩庵」でシェフを八年務めた池田昌章氏が譲り受け、「無彩庵 池田」を独立開業した。

 池田シェフの作る料理は、地の食材への愛が溢れている。「山菜や川魚が好きで、軽井沢で働こうと思いました」と語るように、軽井沢や近隣の食材を使う。

 ある初夏の日の夜のコース(八千七百円)は以下の通り。

 アミューズは、エレガントな玉ねぎの甘みの中で微かにわさびが香り、舌を刺して食欲を刺激する「依田さんの玉ねぎと安曇野わさびのムース」。アクセントとしてのわさびの使い方が実に巧い。

 続いては「ワラビとアサリの出汁のジュレ寄せ カラスミ」。ほろ苦いワラビやアサリのうま味、サフラン風味のマヨネーズのコク、カラスミの塩気など、味の合わせが精妙で、見事に調和している。

 魚の前菜は、これもスペシャリテとなる「飯田・天竜鮎のパテ 鮎出汁と葛 キュウリとエストラゴンビネガー」。肝を練り込んだほろ苦い鮎のパテを、鮎の出汁で溶いた葛で包んでいる。半透明の葛皮から透けて見える茶色のパテが美しく、キュウリのソースにつければ溌剌たる香りが鼻に抜け、清流の中にいる気分になれる。

 肉の前菜は「伊那・宮田村仔猪のパテとブラックチェリー フォアグラと信州地鶏・紅しぐれのプレッセ ルバーブ 白バルサミコ バニラ」。練り肉のうま味に富んだ仔猪のパテと、香りの良いフォアグラに鶏胸肉を挟んでプレスした冷前菜である。白バルサミコを煮詰めてバニラを加えたソースが素晴らしい。

 次がスープ。「東御・工藤さんのキタアカリのポタージュ サマートリュフのグラスパウダー」は、シェフの才が発揮された料理である。ジャガイモ名人の手によるキタアカリを使ったスープは品が良く、丸い甘みが心を和ます。そこにコンソメで煮てから凍らして崩し、パウダー状にしたトリュフを添える。トリュフが溶け、ジャガイモの甘みにじっとりと色香が刺していく感覚がたまらない。

 続いての魚料理「野尻湖産天然ウナギ 依田さんの玉ねぎ 狼桃(トマト)のガスパチョ」も素晴らしい。二キロの天然ウナギを香ばしく焼き上げ、二日間寝かせてなじませ、微かに発酵の刺激が出たガスパチョソースを加えた皿である。ソースがウナギと綺麗になじんでいる。添えた玉ねぎのマリネが、ウナギの脂を一旦切る役目を果たしていて心憎い。

 肉料理は「伊那・宮田村のツキノワグマのアッシパルマンティエ 根曲がり竹 木の芽」である。フランスの国民食ともいえる牛肉とジャガイモのグラタンを、熊肉を使って作ったものである。下には赤ワイン風味のリゾットが敷かれ、熊肉の猛々しさと呼応させている。単純なようで計算が行き届いた皿であった。

 デザートは、生姜の刺激が絶妙に効いた「新生姜のブランマンジェ 黒糖エピスソース アップルマンゴーのソルベ」。そしてプティフールには、甘みの中から現れる塩味が余韻を作る「伊那・大鹿村の塩とショコラのサブレ」が出された。

 昼はプリフィクスで三千三百円から。夜は五千五百円から。地物と食材に敬意を払った料理を食べる喜びがここにはある。

長野県北佐久郡軽井沢町長倉1891-50
電話=0267(44)3930
営業時間=11時~13時半(LO)、17時~20時(LO)
定休日=火曜日(祝日の場合は営業)、冬期休業あり
※表示価格は税込、サービス料別
軽井沢のフランス料理
フランス料理
E.Bu.Ri.Ko
キノコと山野草
天然素材の見事な組み合わせ

 キノコ料理を中心としたフランス料理を供するレストラン。店名の「エブリコ」もキノコの名前。オーナーシェフは、キノコ使いの名人、恵比寿のフランス料理店「マッシュルーム」の山岡昌治シェフに師事した内堀篤氏である。

 ある日のコース(七千八百円)は以下の通り。

 アミューズは「ウルイで巻いて焼いたアナゴ イタドリのピュレ 山葡萄の新芽添え」。苦味、甘み、食感の違いなどが次々と口の中に現れて、食欲を刺激する。

 前菜は「根曲り竹の皮で燻製にした鶏胸肉 山菜のシオデとタチシオデ添え」。砂肝にはコシアブラとそのソース。二種類のシオデの香りや食感の違い、抹茶に似た香りを放つコシアブラソースなど、都会にいては感じられない山々の恵みが身体を浄化してくれる。

 続いてがスペシャリテのキノコ料理である「各種天然キノコのソテー」。なぜかニンニクの香りがするタモギタケ、セップタケのような香りと味がするマッシュルームのポルトヴェーラ、その歯ごたえとうま味に驚くエノキタケ、淡い味わいながら香り高いハタケシメジや舞茸など。いかにそれぞれの茸が持つ香りや食感を活かすかを考え抜いた、特殊な炒め方をしているのだという。添えられた、キュウリの香りがするイワガラミの葉も素敵。

 そしてこれもスペシャリテの一つである「アカヤマドリのスープ」。一口飲んだ瞬間唸って動けなくなるほどうま味が底深い。アカヤマドリという茸を一年冷凍して作ったというスープは「夏に飲むと濃すぎてしまうんです」とシェフが語るほど、めくるめくうま味があって圧倒する。他に例がないほどの滋養なのだろう。

 魚料理は「黒鯛のポワレ タマゴタケのソースと山菜のソース」。もったりとしたうま味を持つソースと山菜の香りが黒鯛と調和する逸品。

 肉料理は「豚のロティとソテー」である。豚肉は、よく動き回った証に肉がきめこまやかで、しっかりとした脂が甘く香る。その滋味を、山菜のミヤマイラクサ、山ウド、トガリアミガサタケなどが盛り上げる。

 最後は「杏子のピュレ デンマークの薬草酒と杏子のブランマンジェ トンカ豆のムース 蜂蜜のジュレ 白樺樹液の泡 オレンジとイチゴのソルベ チュイル 野草の花の砂糖がけ」と、これまた野の香りに満ちた素敵なデザートである。

 昼は二千四百円。夜は五千四百円から。こうした料理を木々に囲まれながら食べられるのは、軽井沢ならではの贅沢である。

長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢1157-6 
電話=0267(42)3033
営業時間=11時半~13時半(LO)、17時半~19時半(LO)  
定休日=水曜日
※表示価格は税・サービス料別
バックナンバー