味のパトロール<読者情報>

ハイヒールモモコさん お笑い芸人

人タラシお腹アラシ

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 食いしん坊な私は、関西で料理番組をもう約十五年も持たせて頂いている。

 美味しい物を食べたい、紹介したい思いで自分でノルマを決めている。毎週新店舗二軒、そして、必ず一日一回の外食を続けている。新しいところも行きたい、気になる店も話題の店も行きたい。が、馴染みの店も行きたい。口がもう一つ、胃がもう二つあればいいのにと毎日思ってしまう。

 今回、私が紹介したいお店は、大阪の福島にある。
大阪では一番の繁華街、美味しい物が集まっているのは梅田、新地と言われるが、一駅横の福島も今すごい人気だ。

 毎日行列のできるラーメン屋さん、すぐ売り切れるパン屋さん、将棋棋士が一階のレストランから出前を頼む関西将棋会館。沢山の食べ物屋さんの中で私が一番通ってしまうのが、福島駅からなにわ筋を北へ進み、福島六丁目のライオンの交差点の手前を、東へ一本曲がったところにあるイタリアンレストラン「ラ ルッチョラ」である。イタリア語で「蛍」。遅くまで光(電気)をつけて待っていますよ~、とゆう意味らしい。ランチも営業していて、夜は六時から十二時まで。コースからアラカルトまでメニューは豊富だ。毎日変わる手書きのメニューから選んでもいいし、いくらの予算でいろいろ出して、でも二軒目やからワインとチーズでいいわ、などと客のワガママを聞いてくれる。

 鈴木浩治オーナーシェフは、滋賀県出身で、高校を出てヨーロッパに単身乗り込み、帰ってきて関西で何軒か回り、中央卸市場の名門魚屋で魚の修業をして、海鮮を得意とするイタリアンのこの店を二〇〇二年にオープンした。新鮮な季節の魚のカルパッチョ、琵琶湖の本鰻の炭火焼き、手長海老の香草焼き、カラスミのパスタ、濃厚トマトスープに、最後のデザートも楽しみの一つで、六甲「弓削(ゆげ)牧場」の蜂蜜のかかったパンナコッタと、半熟チーズケーキ、ワインを合わせてもらって食べるのが、毎月の楽しみだ。お腹がいっぱいでも、まだ食べたい。お腹がアレても構わない美味しさ。

 また、鈴木氏は関西で、喋りながら料理を紹介する番組も持っているお喋りシェフで、若い女の子グループからお美しい仲良しマダム友達、熟年夫婦、いやいや男性一人でも、シェフと喋りながら料理を楽しむことができる。みんなが大好きになる人タラシだ! 家族とも、親友とも、仕事仲間とも訪れる、一生通いたいお店だ。

ラ ルッチョラ
大阪府大阪市福島区福島6-9-17 レジオン福島1階
TEL 06(6458)0199

中野 裕子さん 日本テレビ放送網(株)

世界中からファンが集う一軒家
レストランの隠れメニュー

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 西麻布の裏通り。明かりが漏れている。

 ガラガラガラガラ。

 懐かしい音を響かせながら引き戸を開けると、着物姿の女将・熊ちゃんが「あら、ゆうさん」と出迎えてくれる。店の方に名前で呼んで貰えるというのは実に嬉しい。

 パリの星付きレストランのシェフから、ニューヨークで活躍するミュージシャン、オーストラリアのチキン屋、そして生産者をはじめ世界中のヴァンナチュール(葡萄の栽培方法だけでなく、ワインの製造過程に至るまで出来るだけ添加物を入れず自然に作られたワイン)好きが夜な夜な集う店、それがここ、和食とワインの店「葡呑」である。

 オーナーシェフの中湊茂さんは魚屋の三代目。その目利きと扱いには定評があり、私が特に惚れるのは、三十分かけて塩揉みし、ほうじ茶でさっと茹でた後二時間寝かせた佐島の蛸。香り高いこの蛸が柔らかいのなんの、口に入れると思わず微笑んでしまう。

 また和食に合うヴァンナチュールの種類の豊富さに来店したワイン生産者の皆さんも驚き、喜び、隣のテーブルの客とシェアしては、何か特別な秘密を共有しているかのようにウィンクしながら杯を重ねる。

 海外からのお客さんにとっては、二階建ての古民家という趣ある建物自体も魅力のひとつ。吹き抜けや屋根裏部屋など、どこを撮っても「インスタ映え」間違いなし。

 そんな葡呑には、実は年に数回だけ、常連さんが特にこぞって集う夜がある。

 通称「熊ちゃんナイト」。女将の熊ちゃんがその場で皮から手作りする餃子がオンメニューするのだ。この餃子、実は麹町のイタリアン「Rossi(ロッシ)」の岡谷文雄シェフ直伝のレシピ。

 回を重ねるごとに改良されていく熊ちゃんの手作り餃子は、その皮からイタリアンの巨匠のセンスが光る。パリッと焼けた皮に野菜多めの甘めの具。お酢の利いた特性タレもたまらない。

 ふらりと店に寄ったら、パリの人気レストランのシェフが具を包んでいた、なんて日も。

 次にあの餃子に出合えるのはいつだろう?

 突然やってくるその祭りを逃すまいと、日々通ってしまうのだ。

葡呑(ぶのん)
東京都港区西麻布4-2-14
TEL 03(3406)2207

川邊 りえこさん 美術家・書道家

“世界で一番の牡蠣”とワイン

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 私の中で〝世界で一番の牡蠣〟が、なんと東京・赤坂でいただけることになりました。

 瀬戸内海に浮かぶ日本最大の無人島、大黒神島。周辺の海域は、生活排水がなく、山の多くの成分を受け取った川の水が流れ込み、牡蠣の栄養となる植物プランクトンが豊富な特別な場所。そこで広島県「かなわ水産」の牡蠣は育ちます。瀬戸内の島と海、そして山の恵みまでも受けるその牡蠣をいただくため、クルーザーに乗り、筏の上でシャンパーニュとともに食した瞬間は衝撃でした。

 紀元前より人類が魅了された牡蠣とワインを探求したくなり、この業態を始めたというオーナーシェフ濱岡靖示氏は、西麻布にレストランをオープンし五年半営業されました。東日本大震災後にかなわ水産の社長と知り合い、直ぐに広島に行って牡蠣を勉強し、東京で唯一この牡蠣を出すことを許されたのです。

 そして西麻布の店を閉店後、三年の休眠期間を経て、二〇一六年、赤坂で「オイスター&ワイン ヴィノーブル 」として営業を再開されました。

 世界の各地に牡蠣はあれど、海を感じ、瀬戸内の風までも感じるミネラルそのものの滋味あふれる、繊細さと力強さをあわせもつ上質の牡蠣からは日本の美意識を感じます。また、いろいろな品種があり、様々な味の違いを楽しめるのです。

 牡蠣のバリエーションのメドレーとカキフライ以外にも、ひとつひとつの素材の味が際立つ自家栽培の野菜サラダ、優しく懐かしいポテトのグラタン、ミートソースパスタなど、濱岡氏選定のメニューは私好みのものばかり。そしてあらかじめ好みの赤身肉をお願いして、その固まり肉を時間をかけてグリルしていただくのが定番。何をオーダーしても存在感のある美味しさで、満ち足りた気持ちになります。

 また、元「エノテカ」の取締役支配人で、シャンパーニュ騎士団シュバリエでもある濱岡氏のワインのストックも素晴らしく、牡蠣の品種ごとのペアリングや、貴腐ワインや赤ワインと厳選した素材による料理とのマリアージュも魅力。窒素充填式サーバーを使って、十三種を超えるグラスワインも気軽に楽しめます。 

 パワーが落ちた時、都会にいながらにして海のエネルギーがもらえる隠れ家であり、味を究めた友人たちと喜びを分かち合える、奥行きのある私のお気に入りレストランです。

オイスター&ワイン ヴィノーブル
東京都港区赤坂2-11-13 コモン赤坂1階
TEL 03(6441)3135