味のパトロール<読者情報>

吉岡理絵子さん 銘酒居酒屋「赤鬼」店員

少しおめかし。ほっとただいま。
どちらも包み込む懐深い居酒屋

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 昨今、美味しいお店はたくさんあります。この技術はすごい、この創意は斬新だ、おおうまい!と唸るお店はたくさんあります。そんなお店に予約と気合を入れて行くのではなく、かといって定食屋のように毎日寄るわけでもない、そのちょうど間にいる頼もしいお店。それが「こうぜん」です。

 役者やミュージシャンにはよく知られた、下北沢では老舗の居酒屋「ザジ」。その弟分として、五年前にザジの場所にオープン(ザジは同じビルの二階で営業中です)。居抜きで使われているので什器はこなれ、木のカウンターやテーブルは使い込まれて艶々、暗めの灯りとともに温かい雰囲気をつくります。

 いつ行っても旨い、酒も肴も旨い。でも旨すぎない。「つきぢ田村」の三代目も書いておられましたが、旨いものにさらに旨いものを重ねると過剰になる。そういう気負いがないここは、いい意味での抜け感がとても居心地良いのです。

 きちんとセレクトし、旬も定番も押さえた日本酒。ここで「宗玄」、「羽根屋」、「文佳人」、「碧天」などの銘酒に出会いました。

 丁寧につくられ、奇をてらわないけれどどこかにオリジナルがピカッとひそむ、アテの品々。あれば必ず頼むふろふき玉ねぎは、玉ねぎの甘さとあえてピリッと辛めにした肉味噌のマッチングが絶妙。クレソンのサラダ、トマトのおから、自家製チーズ豆腐、鶏ときのこの煮込み。厳選されたお刺身、加減よい酢のもの。そして珍味の数々。地味は滋味になりかわり、ちょいちょい箸を出してはキュッと一献、の嬉しさがしみじみ湧いてきます。

 贅肉がなくきっぱりとして、でもどことなくやさしい風情は、お酒と料理だけでなく、大将夫婦やお店の雰囲気にも通底しています。同僚だったころから職人肌、おおらかな落ち着きを見せる大将や、ユーモア溢れるおかみさんと話すのも、大きな幸せのひとつ。出しゃばらない品格が全てにゆきわたり、居酒屋の「居」の字が腹に落ちて馴染む、こんなお店が我が住む街にあったらと思わずにはいられません。

 騒ぐのではなく、寡黙に飲むのでもなく、ほどよい会話を交えながらゆったりと。こんにちはとただいまの真ん中にあるお店。こうぜん、大好きです。ずっとここに在ってほしい。

居酒屋 こうぜん
東京都世田谷区北沢2-33-2 第二周和ビル1階
TEL03(3485)1642

三井洋子さん STY Marketing & Communication 代表

日本を愛する
星付シェフのイタリア料理

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 イタリアが世界に誇るハイジュエリーブランド「ブルガリ」は、百三十年以上の歴史を経て、ラグジュアリーでコンテンポラリーなライフスタイルを提供する目的で、新業態として「ブルガリ ホテル&リゾーツ」を設立しました。二〇〇四年にミラノに初のホテルをオープン以来、世界の色々な国に進出し、二〇〇七年に日本に上陸、「ブルガリ銀座タワー」内に「ブルガリ イル リストランテ」をオープンしました。ミラノのホテルを思わせるようなインテリアで、洗練されていながらも堅苦しくない雰囲気を漂わせたレストランです。

 現在のシェフ、ルカ・ファンティン氏は、ローマの三ツ星レストラン「ラ・ペルゴラ」の副料理長を経て、二〇〇九年に銀座「ブルガリ イル リストランテ」のエクゼクティブシェフに就任し、二〇一一年から一ツ星を保持。また、権威あるイタリア料理のガイドブック『イデンティタ・ゴローゼ二〇一五』より「最優秀シェフ賞」を受賞しています。そして二〇一五年より、店名が自身の名を冠した「ブルガリ イル リストランテ ルカ・ファンティン」となりました。

 ファンティン氏のスタイルの特徴は、第一に四季折々の旬の日本の食材を大切にすること。最上質な素材を求めるために生産者を訪ね、生産者と語り、学んでいるのです。

 メニューは季節からインスパイアされ、研ぎ澄まされたテクニックと素晴らしい創造性で最上質の素材を調理し、トラディショナルなイタリア料理を、見事にコンテンポラリーに表現。美しい色味もプレゼンテーションも、イタリアンバランスのとれた、スタイリッシュな料理として繰り拡げられています。例えば、見た目が鮮やかな冬の「赤ワインソースのラディッキオリゾット」は、日本産のラディッキオとイタリア産の米を使用し、リゾットの繊細な風味とラディッキオの苦味による絶妙なコンビネーションとなっています。ブルガリならではの細部にこだわる精神を受継ぐ見事な創造性により、オーセンティックな料理を革新的に再現しています。

 日本の素材を生かし、五感を刺激する完成度の高い料理を提供する「ブルガリ イル リストランテ ルカ・ファンティン」は、東京において最も洗練されたイタリアン・ファインダイニング・レストランであると思います。

BVLGARI Il Ristorante Luca Fantin
東京都中央区銀座2-7-12 ブルガリ銀座タワー9階
TEL 03(6362)0555

山田希彦さん JULIE SANDLAU ASIA PACIFIC K.K. CEO

肉・魚介・野菜など素材の味を
シンプルに楽しむグリル料理

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 世田谷の閑静な住宅街に佇む「用賀倶楽部」。

 店内に入ってまず目に飛び込んでくるのは全面に開けたオープンキッチン。広めにとられたキッチンスペースもオーダーをテキパキとこなすシェフには程よい空間に思われ、活気のある様子に期待が高まる。

 若い女性スタッフ中心のサービス陣は、笑顔が素敵で歓迎心に満ちたフレンドリーな出迎えが印象的。

 コンクリートの床、古材を張り合わせたようなウッディな壁面と白い壁面の開放的な店内に、アメリカ西海岸を連想してしまうのは自分だけではなさそうだ。聞けば「用賀倶楽部」を運営する出版社の建築デザイン集団「カリフォルニア工務店」が店舗デザインを手がけたといい、大いに納得。

 肝心の料理はというと、グリル&ダイニングという名にふさわしく、素材を活かしたシンプルな調理法『焼く』ことにこだわっている。

 牛豚鶏をはじめラムや鴨などの肉料理、生でも食べられるという新鮮な魚介を、シンプルかつ豪快にグリルした料理が次々にテーブルに提供される様は活気がある店内に華を添える。

 何気ないサラダやちょっとしたおつまみもこだわりやセンスを感じさせる。レタスやアボカド、トマトにブロッコリー、厚切りベーコンを細かく刻んだチョップドシーザーサラダ。秋田名産いぶりがっこを利かせたポテトサラダが食欲をそそる。

 秀逸なメニューが揃う中、必ず注文するのは厚さ二センチあるだろう、一ポンド(四百五十グラム)リブロースステーキだ。USDA(アメリカ農務省)チョイスのリブをレアで焼き上げアツアツの鉄板で提供する、店の名物料理だ。

 華奢な腕で一生懸命運んでくる女性スタッフの姿が見えると、テンションは否応なく上がってくる。特製のおろし玉ねぎのソースを肉のエッジにかけ、肉からこぼれたそれが鉄板の上で弾ける音と匂いで食欲は最高潮に達する。

 ジューシーな肉質、赤身特有の肉本来の旨味は何度食しても飽きない。女性シェフの肉を知り尽くした技術を物語っている逸品だ。

 開放的な空間、笑顔あふれるスタッフにカジュアルだが確かな料理。

 天然酵母のベーカリーを併設した「用賀倶楽部」はこの街になくてはならない食のスポットだ。家族や友人、大切な人を誘ってぜひ足を運んでみることをお勧めする。

グリル&ダイニング 用賀倶楽部
東京都世田谷区玉川台2-17-16 世田谷マイスターハウス1階
TEL 03(3708)8301